炎の大魔神
50㎝ほどの炎の人形は盗賊達と戦った。
人形がパンチをすると、盗賊の服に火がつく。
「ほんまやな。これ圧勝やな」
と俺は言った。
「人間万事塞翁が馬」
とケノは呟いた。
「なんの呪文やねん」
と俺は尋ねた。
「おい見てみ、形勢は変わるで」
とケノは言った。
ケノの指さす方向を見ると、盗賊がバケツに水を持ってきた。
「あの炎の人形、絶体絶命やな」
と俺は言った。
ケノは黙ってみている。
「人間万事塞翁が馬や」
とケノは言った。
バケツを持った盗賊は思いっきりこけて、水をこぼした。
「うわ、やってもたな。形勢逆転や思たら、大失敗やで」
と俺は言った。
「やっぱり人間万事塞翁が馬や」
とケノは言った。
「だから何の魔法やねん」
と俺は尋ねた。
ケノは黙っている。
(ぷしゅー)
「なんや、あの人形。バケツを持った盗賊に近づいて、間違って水のあるところに入って小さくなったやんけ」
と俺は言った。
「まさに人間万事塞翁が馬や」
とケノはうなづいた。
(ぎゃふん)
炎の人形がどんどん小さくなっていく。
ふと少女のほうを見ると、涙目になって、服のすそをギュっと握っている。
「やばい。助けんとあかんやろ」
と俺は言った。
「でもそんなこと言っても、お前も俺も戦力にならんで」
とケノは答えた。
そうだ。
ここで戦っても、戦力にはならない。
そうだ。
やっぱりここは神頼みだ。
俺は神様にお願いする。
「神様助けてください」
と俺は言った。
……
もちろん神様は、とある繁華街のキャバクラに来ていた。
「順ちゃん。今日も可愛いね」
と神様は言った。
「神ちゃん。ありがとう」
と順ちゃんは、神様の肩に頭を乗せた。
「あぁ幸せだよ。順ちゃん」
と神様は順ちゃんの手を握る。
「よしよし」
と順ちゃんは神様の頭をなでる。
(ぽわん)
神様の前に、画面が現れる。
「あぁごめん。順ちゃん、お願い事されたわ」
と神様は言った。
「何をお願い事されたの?」
と順ちゃんは尋ねた。
「助けてくださいだって」
と神様は答えた。
「今回はどう助けてあげるの?」
と順ちゃんは尋ねた。
「うーん。どうしようか?
なんか送るもんないかな」
と神様は言った。
「そうやね。お客さんから貰ったクサヤと、ニオイが微妙すぎて誰も使わへん香水があるんけど」
と順ちゃんは答えた。
「それ、貰っていい?」
と神様は尋ねた。
「ええよ。引き取ってもらえるんやったら、みんな喜ぶわ」
と順ちゃんは、黒服にクサヤと香水を持ってこさせた。
「じゃあ。これあいつに送ったろ」
と神様はそう言い、表示される画面の中にクサヤと香水を放り投げた。
……
(どさ)
俺の目の前にクサヤと香水が突然現れた。
これはなんや。
あぁそうか。
神様が送ってくれたんか。
クサヤと香水ってどんな設定やねん。
「うわクサ。クサヤやんけ。
なんでクサヤが出てくんねん」
とケノは鼻をつまみながら叫んだ。
「神様が送ってくれてん」
と俺は答えた。
「神様が送ってきた?あぁあれか……、金髪の中年太りの神様か」
とケノは尋ねた。
「知ってんのか?」
と俺は言った。
「あぁ俺も転生した時に世話になったからな」
とケノは答えた。
「あとで詳しく聞かせてもらうわ」
と俺は言った。
しかし、クサヤと香水でどう盗賊達に勝てというのだろうか。
いやどう考えても無理やろ。
やっぱりあれか。
持ち物と状況の利用か。
だとしたら、ケノを使う?
ケノにクサヤ持たせて、ロープで縛って、武器にするか?
いや……、
意味がわからんな。
クサヤの力って何?
臭いけど、焼いて食ったら美味い?
あの炎の人形で焼く?
ちょっと待てよ。
クサヤは臭いから、魔物除けとか人間除けになるんちゃうか?
これ持ってたら、盗賊とか逃げていかへんか?
でもあれやな。
馬車の人もつらいわね。逃げるわな。ふたたび盗賊と会うわな。
話終わるやん。
解決になれへん。
クサヤを全員で分け合って仲良くなるか?
いや無理やろ。
「なぁなに、ぶつくさ言ってんねん」
とケノは俺の方をじっと見た。
「そんな見つめるなよ。照れるやんけ」
と俺は言った。
「いや。アホか。何を考えてんねん」
とケノは尋ねた。
「このクサヤと香水でどうやって勝とうか考えとってん」
と俺は答えた。
「クサヤと香水で勝つ。あの盗賊にか?そんなことできへんやろ」
とケノは眉をひそめた。
「それがな。前も神様の送ってきたもので勝ってん。お前が助かったんも神様の送ってくれた道具のお陰やねんで」
と俺は言った。
「まぁ、あのまま行ったら、俺消化されとったからな。でもクサヤと香水やろ。その香水どんなニオイするんや」
とケノは尋ねた。
俺は香水の蓋をあけてボタンを押す。
(ぷしゅー)
「うわ。微妙なニオイ」
と俺は言った。
遠くで何かが反応した。
炎の人形だ。
炎の人形がすごい勢いでこちらにやってきた。
「うわ。なんや」
とケノは言った。
炎の人形は香水をスプレーした辺りにたどり着き、突然大きくなった。
(ぼわっ)
「うわ。めっちゃ大きくなったやん」
と俺は腰を抜かす。
「なんやなんや。なんで大きくなったんや」
とケノは言った。
炎の人形は、元いた場所に急いで戻り、盗賊達を蹴散らす。
(ぎゃふん)
盗賊達は逃げ出した。
「ほんまにギャフン言うとったな」
と俺は言った。
「やっぱり人間万事塞翁が馬や」
とケノは呟いた。
遠くから騎士達が手を振ってやってくる。
しかし20mほど離れたところから、動こうとしない。
「遠くから失礼します。なんとお礼を言っていいか」
と騎士は言った。
俺は脳内でシミュレーションを行った。
褒美……、お嬢さん。
人助けをしただけ、そんな物はいらないですよ。
いや。
こいつら騎士やもんな。
どう答えよ。
「偶然勝っただけやから気にせんでええよ」
とケノは手を振った。
その声を聞いて、騎士はお辞儀をして去っていった。
「おいおい。ケノ。ここから俺の見せ場やったのに、なにすんねん」
と俺は叫んだ。
「気にすんなや。どうせあいつらクサヤのニオイで、こっち来られへんかったやろ」
とケノは笑った。
「でもな。俺このシーンをずっとやりたかってん。お嬢さんってくだり」
と俺は言った。
「そんなん。来たのは騎士だけやろ」
とケノは答えた。
「まぁそうやな。でもよう考えたら、このクサヤ持ったまま、移動できへんな」
と俺は言った。
「そうやな。食おか」
とケノは答えた。




