キャバクラに通う神様
その頃、神様はとある繁華街のキャバクラに来ていた。
いわゆる高級店の部類ではなく、
利用しやすい庶民感覚の店だった。
「2日ぶり、順ちゃん。チューして」
と神様はキャバ嬢の順ちゃんにチューをせがむ。
「もう神ちゃん。ほっぺにだよ。ちゅっ」
と順ちゃんは、神様のほっぺにキスをした。
「寂しかったよ。順ちゃん」
と神様は順ちゃんの手を握る。
「よしよし」
と順ちゃんは神様の頭をなでる。
(ぽわん)
神様の前に、画面が現れる。
「あぁゴメン。順ちゃん、お願い事されたわ」
と神様は言った。
「何をお願い事されたの?」
と順ちゃんは尋ねた。
「助けてくださいだって」
と神様は答えた。
「どう助けてあげるの?」
と順ちゃんは尋ねた。
「うーん。どうしようか?」
と神様は言った。
「どんな人だったの?」
と順ちゃんは尋ねた。
「なぁムソウ能力が欲しいって言われたんやけど、どういう意味かわかるか?
なんかドラゴンを一発で倒すとか、そんな感じで言うとったんやけど」
と神様は言った。
「ムソウ能力、あぁそれやったら夢想。
現実には起こり得ない事を、期待するあまり、夢の中で見る事だと思うわ。
だってドラゴンを一発で倒すとか、起こり得ないもの」
と順ちゃんは答えた。
「あぁそういう事か
ほな、ちーと能力が欲しいとか言ってたけど、あれはどういう事?」
と神様は尋ねた。
「ちーと?それは聞いた事がない言葉ね。もしかして”ちと”じゃない?」
と順ちゃんは答えた。
「ちと?」
と神様は聞き返した。
「そう”ちと”はちょっとの意味の古い言い方。ちと分けてもらいましたとか……」
と順ちゃんは答えた。
「ちと能力が欲しい。
あぁちょっとだけ能力が欲しいって事か。そういえば高望みはしないのでと言ってたな。ほんま欲のない男やで」
と神様は笑った。
「よかった。神ちゃんの役に立てて」
と順ちゃんは微笑んだ。
「えぇ顔や。女神様みたいやわ。あんまり高望みせーへんなら、なんでもええな。
なんかないかな」
と神様は周りを見渡した。
「順ちゃん。あのロープなんなん」
と神様は尋ねた。
「あれはね。お客さんで緊縛師の人が、別のキャストにあげるわってプレゼントしてん。
でもいらんからって、3か月前からあそこに置きっぱなしやねん」
と順ちゃんは答えた。
「あれ、貰っていい?」
と神様は尋ねた。
「ええよ。引き取ってもらえるんやったら、みんな喜ぶわ」
と順ちゃんは、黒服にロープを持ってこさせた。
「じゃあ。これあいつに送ったろ」
と神様はそういい、表示される画面の中にロープを放り投げた。
……
(どさ)
俺の目の前にロープが突然現れた。
これはなんや。
あぁそうか。
神様が送ってくれたんか。
なんかいいロープに違いない。
しかし、普通のロープにしか見えへんな。
アニメとかで謎アイテムに対して、
よう鑑定とかやっとるな。
それで何のアイテムかわかるねん。
よう考えたら、あれだけでも、チートやな。
あんな能力あったら、質屋で大儲けできんで。
「鑑定スキル持ってますから、偽物ブランドすぐ判別できますよ」
とか言うたら、水商売の姉ちゃんとかから、モテまくりやで。
男にシバかれそうやけどな。
まぁええわ。
俺も真似して、やってみよ。
「鑑定……」
あれ……、
なんもでーへんな。
鑑定スキル的なものはないんかな。
しゃあない。言い方変えてもう一回やってみよ。
今度は語尾を上げよ。
「鑑定↑……」
なんもでーへんな。
逆やな。
語尾を下げよ。
「鑑定↓……」
なんもでーへんな。
あかんわ。あきらめよ。
しかしロープって何するん?
あれ?
なんか良いことわざがあった気がするけど、なんやったやろ。
なぁ考えてみてくれ。
なんやった?
って誰に相談してんねん。
あれ……、なんか声聞こえた気がする。
気のせいか。
……そや、
思い出した。
「神様はツッコめる試練しか与えへん」
ってやつやな。
あれ……、
ちゃうか?
「神様はボケれる試練しか与えへん」
やったかな。
あぁそうや。
「神様は超えれる試練しか与えへん」
やったわ。
だれが言うとったかなぁ。
そうや。
公園で昼間から、カップ酒飲んでるオッサンが言うとったわ。
一応な常連やねん。
毎日うちのたこ焼き食って、カップ酒飲んで、公園でゴロゴロしてんねん。
あのオッサン、仕事なにしてるんやろな。
あかん……、
脱線してもた。
なんや。
そうや……、
ロープを何に使ったら、
この危機を脱出できんねんって事やな。
この横穴の中に、下への通路とかあるんちゃうか?
それやわきっと。
探そ……。
あかん。
ないな。下もなければ、上もない。
なんかえぇなぁ。公平な社会みたいや。
公平やけど、ここおったら自滅やろうけどな。
あれ?なんか俺、深い事言うたんちゃう?
ようわからんけど。
でも神様が送ってくれたって事は、
これで抜け出せるって事やろな。
でもロープでどうやって。
あれ……、
なんで。
急に高校生の頃の学食のおばちゃんの顔が思い浮かんでん、
そういえば、なんか言うとったな。
「全てはもう神様が与えてくれてはる」
とか、
あれ意味わからんかったわ。
「全てって、俺彼女とかおらんぞ。
全てやったら、俺には彼女はいらんって事になるやろ」
って、反抗したよな。
ちょっと待てよ。
「神様は超えれる試練しか与えへん」
「全てはもう神様が与えてくれてはる」
「なんかあったら、俺を呼べ。助けたるから」
これを全部まとめるとや。
やっぱりロープと、あとあれや。自分の荷物と、この場にあるなにかで、なんとかなるってやつや。
ほらアニメとかでも、工夫して乗り越えるやつ。
謎解きやな。
こう見えても、どう見えとるかしらんけど、
推理物は好きやからな。
ロープ。
首絞める感じかな。
あぁーーそうか。
カウボーイみたいに、わっか作って投げて、首を絞めるんやわ。
でも、これやったら、この場にあるものを使うことにならんもんな。
まぁええわ。やってみよ。
(ほら)
あかん壁に当たって、届かへんわ。
どうすんねん。
諦めるのをまって、後ろから投げよかな?
しかし、あのムカデみたいなん。
よう見たら、カワイイ顔してるな。
キバはごっついけど。




