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クラス転移の特典が俺だけ「サキュバス化」だった  作者: 緑茶わいん
第三章

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【番外編】童貞を殺すセーターとレン

 男の目を気にしなくていい、というのは本当に楽だ、と、引っ越してからしみじみと実感する。

 人の視線というのは思った以上にわかりやすい。特に異性からのいやらしい視線はバレバレ。サキュバスの鋭い感覚もあって、時には見られるだけで肌を撫でられているような錯覚さえ覚える。

 昔は自分も「視る側」だったと思うと申し訳なくなる一方、「視られる側」になってみると「これだから男は」という身勝手な思いも生まれてしまう。


 その点、同性だけの空間は楽だ。


 もちろん、異性よりも同性の方が厳しい面もある。

 なにあの格好、的に見られるのは実際かなり堪えるのだが、女子というのはお洒落だったり可愛かったりする格好にはわりと寛容である。

 本人に似合っていて、かつ、異性の気を惹く気がないと判断できる場合においては素直に褒めてくれることが多い。

 わざわざ「女性だけの住宅街」などいうものを作り、なるべく男と会わないようにしているレンの場合、多少露出の多い格好をしていても「それ可愛いね」と好意的に接してくれる。

 レンは翼と尻尾の関係上、どうしても肌を見せる割合が多くなるのでこの対応はとても嬉しい。


 ……ただ、


「これはさすがにどうなんですか……?」


 ある日、馴染みのコスプレショップを訪れたレンは、店主から勧められた衣装を見て眉をひそめた。


「え、駄目? 可愛いと思うんだけど」


 それは「コスプレ」と呼ぶには日常感が強く、かといって「普段着」や「外出着」と呼ぶには煽情的すぎる、なんとも反応に困る代物。

 大まかに言えばニットとかセーターとか呼ばれる品で、特徴としては背中側が大きく開いていること。

 防寒用という意味合いが強いはずの服をこう使うというのはなんとも大胆であり、だからこそお洒落で解放感もある。レンとしてはめちゃくちゃ着心地がいいだろうな、とも思うのだが。


「童貞を殺すセーター、オススメだよ?」

「いや、主に名前(そのへん)が問題なんですってば」


 一時期、オタク文化的なところで広まり知名度が上がった──という歴史(?)がある通り、これはエロ衣装的なイメージが強い。

 もちろんセーターなので普通に着ていても問題はないのだが、後ろが大きく開いている関係上、これだけで着ていると横から胸が見えてしまう可能性もある。というか積極的に見せに行くくらいのノリこそがある意味、本来の使い方だろう。

 楽なのはいいけどエロいのは困るレンとしては気になるところである。

 すると店主は「でもさ」と口を開いて、


「あなたの場合、いやらしく見られるのはどうしようもないじゃない」


 率直かつ的確な指摘がレンの胸に突き刺さった。


「同じ女から見ても羨ましいくらいの体型だし可愛いし、香水もつけてないのにいい匂いがする。着ぐるみでも着ない限りエロいと思う」

「諦めろってことですか……?」

「そうそう。むしろ堂々としてた方がいやらしい目で見られないんじゃない?」


 それは確かに。

 背中が開いているとはいえあったかいのはあったかいはずだし、家の中にいたりそのへんを歩くくらいの用事ならこれくらい楽な方が助かる。


「安くしとくから、買ってみない?」


 提示された金額はこの店の基準どころかこの世界の相場から見てもお得なもの。


「そんなに安くて大丈夫なんですか?」

「大丈夫。材料一種類だし、形決めたら編むだけだからそんなに手間がかからないの」


 服飾系のクラスに就いている者は作業工程を大幅に短縮することができる。

 ある程度の腕さえあれば後は単純作業になるこのセーターは片手間で作ったものらしい。


「あなたがいらないなら若い奥さんのいる男性にでも売るけど」

「それはそれで良いのかもしれませんけど、それならわたしに買わせてください」

「お買い上げありがとうございます」


 意気揚々と買ったはいいけど奥さんに断られ、セーター片手に絶望する旦那さんとかあまり見たくない。セーターとしてもその結末は浮かばれないだろう。

 というわけでレンは代金を払い、セーターを購入。

 試着室を借りてその場で身に着けてみると、


「あ、思ったよりいいですね、これ」

「でしょう?」


 背中がものすごく楽だ。

 素肌にこれだけ着るとエロすぎるので下になにか着る必要はあるものの、それさえ気をつければ冬場の部屋着として優秀である。

 意外と良い買い物をしたかもしれない。店主にお礼を言って家に戻り、仲間たちにも披露してみる。


「へー。うん、可愛い。いいの買ったね」


 相棒的な存在であるフーリは素直に褒めてくれた。ただし、その後で目を細めて、


「でも胸が強調されてすごくえっち」

「それはフーリがエロい目で見てるからじゃ?」

「うん。それはまあ、好きな人がえっちな格好してたらドキドキするよね」

「っ」


 ストレートに言われるとむしろレンの方が照れてしまう。

 慌てて視線を逸らしながらアイリスたちを見て「どうかな?」と尋ねると、


「可愛いと思います! でも、レンさんが羨ましいです。私が着ても似合わないでしょうし……」

「そうかな? こういうのは胸が大きすぎない方が可愛いと思うけど」


 試しに着てみてもらったところ、スレンダーなアイリスが着るとやや大きめサイズになっていやらしさよりも可愛らしさ、お洒落が際立つスタイルになった。

 普段、外に出る時は機能的な服装の多い彼女なので、いかにも部屋着っぽいスタイルは新鮮。プライベートのアイリスを見慣れていない男性陣が見たら一発でノックアウトされてしまうかもしれない。


「えへへ、可愛いですか?」

「すごく可愛いよ。それで街を歩いたらみんなから口説かれそう」

「む。ご主人様。私も着てみてよろしいでしょうか」


 アイリスを褒めていたらメイが自分もと言い出した。

 肌が白く滑らかな彼女にも背中出しスタイルは似合うだろうが、


「メイはメイド服が似合ってると思う」

「ではこの上から着るのはどうでしょう」

「うーん……。メイちゃん、さすがに合わないっていうか、ごわごわしちゃうんじゃないかな」


 メイド服自体が身体にぴったりしたデザインではないため、セーターの生地が伸びてしまいかねない。無理やり着ようとメイが頑張り始めたところでみんなで止めた。


「ふう、危なかった。……それで、シオンはどう思う?」

「わたくしが自分で着るとなるとまず間違いなく躊躇いたしますが、レンさまにはよくお似合いかと。それにとても暖かそうです」

「ありがとう。でも、シオンの毛には暖かさで負けるんじゃないかな」


 試しにセーターを着たままシオンを抱きしめてみる。

 すると、狐の少女は触り心地を確かめるようにセーターへと頬をすり寄せ「暖かいです」と感想を漏らした。

 あまりにも可愛いのでずっとこのままでいたくなる。表情を緩めた他のメンバーもこぞってシオンを撫ではじめ、レンの周りは一気に暖かくなった。

 さすがのセーターも人の温もりには敵わない。

 とはいえこのアイテムはその冬を過ごすのにとても重宝した。

 これでお菓子片手にこたつでごろごろできたら最高だろう。残念ながらこたつは用意できないので、代わりに暖炉の前でのんびりした。気温の低い日や日差しがあまり出ていない日はシオンも火の近くがお気に入りらしく、レンの傍で昼寝をする。

 家事を終えたメイも熱の蓄積ついでにレンにくっついてきて、三人揃って「自分の部屋があるのに」とフーリに呆れられてしまった。

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