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クラス転移の特典が俺だけ「サキュバス化」だった  作者: 緑茶わいん
第四章

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エピローグ -帰還した者たちと、さらに挑み続ける者たち-

 ある日突然、とある学校の校庭に千人を超える人間が現れた。

 神隠し事件の新たな一ページとして歴史に刻まれることになったこの出来事は、連続神隠しが始まってから四十年目のことだった。

 人々が現れた場所は三十年目に神隠しが起こった学校の校庭。


 現れたのは神隠しによっていなくなった人々──そして、その子供たちだった。


 彼らは口を揃えて「ファンタジー世界に突然召喚され、そこでダンジョンを攻略させられていた」と証言した。

 現実的に考えてありえるはずのない現象。しかし、他でもない神隠し事件と彼らの出現こそが証言の信ぴょう性を高めていた。

 何よりも、彼らを連れてきた「紫紺の髪のサキュバス」の存在が通常では絶対にありえない。


 彼らの出現は即座に日本中に伝わり、大騒ぎの中でしかるべき措置が取られた。

 事実関係の聞き取りも大々的に行われた。

 なんと、神隠しに遭った者たちは別の世界でずっと生きていた。故郷に帰るための戦いの中で喪われた命も多くあり、同時に新たに生まれた命もあった。

 どうやって帰ってきたのかと言えば、


「魔法を使いました。テレポートを基に改良を重ねた時空転移魔法を付与魔法で装置化して、わたしの供給した魔力でゲートを──って、言ってもわかりませんよね、すみません、つい」


 驚くべきことに、帰還のために尽力した一人であるサキュバスの少女も神隠し被害者の一人であり、元は平凡な男子高校生であったという。

 もはや何がなんだかわからない。

 わからないが、彼女(彼)と引き合わされた家族は当人と話し合いを重ね、間違いなく自分たちの家族であると証言した。

 つまり、異世界では地球の常識ではありえない事態がいくつも起こっていたということだ。


 だとしても、皆こうして無事に──とは言えなくとも──帰ってきたわけで。


 これでもう事件は終わり、もう神隠しも起きないし彼らも日本にいられるのだろう、と思いきや。


「いいえ。神隠し──召喚はまだ止まっていません。ダンジョンもまだクリアされていないんです」


 戻ってきた者も全員ではないと言う。

 帰ることを拒んだ者もいるし、帰ってきた者の中にもまた戻るつもりの者がいる。

 何故か。


「だって、あそこはもう、わたしたちの世界ですから」


 頻繁に帰ってくることはできないとサキュバスの少女──レンは語った。大きな準備が必要になる。大勢が一気に抜けてしまったことで向こうの世界の物流も滞っており、それもなんとかしなければいけないのだと。


「向こうで留守番してくれている娘もいますし」


 異世界にいる間に種族すら変わってしまった者たちの中には人間ではない子供を儲けた者も多くいる。

 異種族の子供が日本で生きていくのはなかなか難しい。馴染める者もいるだろうが、どうしても生きづらい子もいる。そうした者たちのためにも異世界は存続させていくつもりらしい。

 神隠し被害者──転移者の中には長く不在だった者も多い。その家族・友人は思わぬ再会に喜んだものの、実際問題として「突然帰ってきた人間」への対処に困った。

 原因の一つである「金」については彼らが異世界から持ち込んできた金銀・宝石などによって解決されたが、


「世界間で大規模な貿易をするつもりはありませんし、この世界で魔法を便利に使う気もありません。それをすると世界のバランスが崩れてしまいます」


 日本の食材や調味料、植物の種や各種書籍などは購入して持って行くつもりでいるが、その程度。

 戦争に協力するなんてもっての他だし研究対象(モルモット)になる気もない。もしも強要するというのなら抗うために力を振るうつもりだとレンは告げた。

 そして、一か月の間を置いた後、帰還を希望した者たちと共に帰っていった。


「心配はない。レンならばうまくやるだろう」


 最初の転移者の一人であり、不思議な力によって子供に戻ったと主張する八歳の少年(傍らには同じ年齢のやんちゃ坊主もいた)がそう証言した。


「またそのうちこちらに来るはずだ。案外、次に会う時にはダンジョンを攻略しているかもしれんな」


 転移者たちの帰還からしばらくは各種マスコミがしきりにその話題を持ち上げ、出版業界では異世界転移ブームが巻き起こったものの、一年もする頃にはその騒ぎも落ち着き。

 レンの言葉通り継続した神隠しについても「どこに行ってるかわかったんだし、まあなんとかなるでしょ」程度の認識となった。

 実際、帰還を希望した者は一年もせずに送り返されてきたし、そのせいもあって「自分も異世界に行ってみたい」と希望する者まで続出した。

 しかし、レンは基本的に希望者を異世界へと連れて行くことはしなかった。


「右も左もわからない場所で戦っていく覚悟がないなら、ほいほい行くべきじゃないと思います」


 無理やり連れて行かれて戦ってきた者たちと、自分から軽い気持ちで行こうとする者では大きく違う。

 若さとは裏腹に実感のこもったその言葉は人々の心に大きな影響を与えた。異世界転生もののラノベはだいぶ減った。

 異世界に戻った者、残った者がどのような戦いを繰り広げているのか、実際に確認する術はない。

 それでも、彼らの無事を祈らずにはいられない。

 いつか彼らの戦いが終わり、異世界に平穏が訪れることを私は人知れず願っている。


(とある個人ブログの記事より抜粋)



   ◆    ◆    ◆



「……それにしても、七十階が魔王で七十五階が邪神だとは思わなかったよね」

「ねー。しかも邪神倒してもまだ終わらなかったんだから」


 ダンジョンの攻略階層はどんどん進んでいるというのに、街の賑やかさは大きく減ってしまった。

 来た頃に比べると圧倒的に広くなった世界。女だけの住宅街として作ったあそこの周りからも『闇』が消えたし、海もできた。

 豊かになったこの世界に十分な人が溢れるにはまだまだ時間がかかりそうだ。


「本当に百階で終わるかなあ、これ」

「終わるんじゃない? さすがにこれ以上の敵はいないでしょ」


 七十六階から先の階で現れた敵は『闇』。

 世界を覆い尽くす「無」そのものとの戦いは戦闘能力だけではどうにもならない。創造を可能にするだけの想像力こそが攻撃力を敵に届ける手段になる。世界の欠片を使って世界を再生していたのはこのための準備でもあったのか、とようやくわかった。


「なら、もう一息だね」


 世界を狭め続ける『闇』をすべて祓ったその時、もしもの戦いはきっと終わりを告げる。


 あるいは、もしかしたら。


 レンたちの街の外──わだかまる闇も同じもので、なんらかの力によって押しとどめられているのかもしれない。

 ダンジョンを攻略し終えた後に待っているのは「世界を守るための戦い」なのかもしれない。


 だとすれば。


 『闇』が《《レンたちの故郷をも》》蝕む可能性もあるのだろうか。

 だとすれば、これは必然の戦いだったのだろうか。


「やるよ。ここまできたら、最後まで」


 レンの周りには頼もしい仲間たちがいる。

 彼女たちと一緒ならきっと、いや、絶対に大丈夫だ。


 確信から笑みを浮かべて、レンは光の矢を解き放った。

各ヒロインとのいちゃいちゃとか、子供たちの紹介とか、100階の戦いとか、ダンジョンができた理由とかおまけがあるよ!

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