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5.神社への来訪者

「ちょ、ちょっと何してるの!?」


 まさかいきなり跪かれるなんて思いもよらず私は慌てて駆け寄った。その大層なお召し物を掃除しているとはいえ石畳に付けるのは貧乏性な私にはNG過ぎる。


「ああ、そのお声までなんて神々しい……それだけの聖力なら瘴気を祓えるのも納得……」

「何の話!? とりあえず立って!」


 そこまで言って漸く彼女は立ち上がったが、祈るように手を組み頭を下げたまま話し出す。


「何のご用意もせず御身の前に現れた不敬、何卒お許しください。まさかこのような形で現世を救うため顕現なされるなど思いもよらず」

「……待って、頭痛くなりそう」

「な、なんですって!? リベリカ! 女神さまが頭が痛いと仰られて……あ、でも聖遺物なんてもってきてないし、どうすれば……」


 くっ、どうにもこの目の前の美少女の暴走が全くおさまらない。何か色々と勘違いしていることから訂正したいのだが、何をしても変に受け取られてしまいそうで言葉に詰まる。


「姫様、一旦落ち着かれてください」


 その時、リベリカと呼ばれた人がスッと前に出てくる。白銀のプレートメイルに身を包み、ヘルムこそ被っていないが複雑な紋章が描かれたサークレットが輝いている。ポニーテールの紅い髪は美しさもあるが力強さも感じ、いかにも戦う人という印象が思い浮かぶ

 後ろに控えている兵士たちのまとめ役なのだろうか。目の前の少女よりは冷静に落ち着いているようでやっと話が通じそうだと小さく安堵の息をつく。


 そして、彼女がいまだに祈っている少女の横で跪いた。


「ああ、女神様。その御身に鎧のまま姿を現すことお許しください」

「いや、あんたもかーい!」


*****


 そんな古典的な私のツッコミが入ってから、私はとりあえず彼女らを社務所の一室に招いた。

 もちろんここに訪れた兵士さん全員を入れるのは無理なので、いまだ名前も知らない美少女とリベリカさんと言う隊長(?)っぽい人と、二人の兵士さんが選ばれた。

 それ以外の方々は申し訳ないけど境内の方で待つことにしてもらう。日本でも神社とかは観光スポットになっているし少しの間だったら適当に過ごしてくれるだろう。


「ここが女神さまが住んでいらっしゃる社ですか。神聖な気配を強く感じます」

「あとから詳しく話します……」


 案内したのはそこそこの広さの和室。散策していた時にちゃぶ台と座布団が最初から用意してあったので話すにはちょうどいいだろうと選んだ場所だ。


「じゃあ、その……どうぞお座りください」

「お、恐れ入ります……!」


 ちなみに鎧の面々は流石に座れないので少女の後ろに立って控える形になったが、まったく同じ姿勢で直立不動に立つ姿の圧が、圧がすごい……

 間を置くためにお茶でも用意しようかと思ったのだが現状では待たせる方がよくないかと、今回はお茶菓子ともに無しになった。ちなみに以前に話した通りこの社務所にある茶葉やお菓子も例外なくいくらでも補充される。

 既に何度か口にしているがまだ生きているので問題はないのだろうと安全面には目をつむった。甘いもの好きだし。


 閑話休題。さっそく私は本題に入る。初対面の時はついツッコミのせいでため口になってしまっていたが、ちょっと落ち着いた今は流石に敬語だ。


「えっと、まずなんですけど私は神様ではないです」

「え?」


 素っ頓狂な一文字を発したのは少女であり、後ろの直立不動な兵士さん方も少し動揺したのか視線だけは私を見る。


「し、しかしそのお纏いになっている強大な聖力はおよそ人とは思えないのですが……」

「いや、まぁそれには深そうであっさい理由がありまして……」


 ここでどこまで話そうか悩んだ挙句、とりあえずこの世界の神様と出会いやって来たと簡単に説明をする。流石に別世界で普通に生きていた話をしても意味がわからないだろうし、あと瘴気を祓う設置物扱いされていることも話してはいない。まあ空気清浄機なんてこっちの世界にあるかもわからないし。


「そんなわけで大体一月前にこっちに来て、それからは何もせず過ごしてるって感じで」

「そ、そうだったのですね……勘違いとはいえあのように騒いでしまい申し訳ありませんでした……」

「いえいえ」


 ひとまず落ち着いてくれたらしい少女は名乗る。


「挨拶が遅れてしまい失礼いたしました。私はリティア=フィオレンティアと申します」

「さっき姫様って呼ばれてたのは……?」


 そう聞くとリベリカさんが口を開いた。


「横から失礼いたします。リティア様はフィオレンティア王国の第一王女であり、そして聖女様でもあります」

「聖女?」

「聖女様とは聖力を用い瘴気を祓う役目を持つ方を示します。リティア様は母君でもある現フィオレンティア女王様より聖力を引き継ぎ、今まで王国のため瘴気を祓ってまいりました」

「へぇ……あ、すいません。王女様なのに私普通に話しすぎてました」

「とんでもないです! ぜひ、貴女様の好きなようにお話しください!」

「そ、そう……? それなら普通に話すけど」

「ええ! ええ! ぜひ!」


 とても偉い人だったらなおのこと口調を改めようと思ったら全力で拒否された。実際、成人していた身からすると彼女は外見だけはまだ子供に近く、そのままで良いと言う言葉に素直に甘えることにする。

 そんな彼女を観察するように見ていたら思わず目が合い、少し恥ずかしそうに顔を俯かせた。さっきまで大人びた雰囲気だったがそうしていると年相応の女の子っていう感じで可愛らしい。


 そんな姫様は小さく咳払いすると顔を上げた。その顔はさっきまでの少女のそれとは打って変わり深刻そうな表情で、私は思わず背筋を伸ばしていた。

 そんな急に反転した雰囲気の中、彼女は重そうに口を開く。


「ご存知かどうかわかりませんが、元々この山は人が入ったらすぐ死に至ってしまうほどの濃い瘴気に包まれていました」

「……え、うそっ!? 来た時からめっちゃ空気美味しかったけど……」

「本当なのです。事実、私はここの瘴気を抑えきれず、立つことも出来ないほど追い込まれていました」


 そういう彼女の顔はしかし、疲労の色はあまり見えずどちらかというと健康的すぎるほどツヤツヤに見える。

 そんな考えがバレたか彼女は真剣な表情で語り続ける。


「いくら祓っても瘴気はなくならず打つ手は何もない……私は一ヶ月前、死ぬ覚悟を持ちながら皆さんと共に瘴気と戦っていました」


 しかし! と彼女は演説するかの如く力強く区切る。そしてその瞳は私の姿を映しており、それがやたらキラキラと輝いているのは気のせいだろうか。


「まさに力尽きる寸前でした! 突然、その瘴気が跡形もなく霧散し消え失せたのです! そう、この山の頂上に降りた神聖な光と共に」


 そして彼女は語りだす。この「瘴気の山」と呼ばれる恐ろしい場所で起こっていた戦いを。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

面白かった、続きが気になるなど気に入って頂けましたら、ブックマークや評価を頂けるとすごく嬉しいです!

6話目よりは毎日21時前後に更新する予定ですので、楽しんで頂けたら嬉しいです!

ぜひ、感想などよろしくお願いします!

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