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28.打ち合わせは嫌いです

 打ち合わせや会議とか私は嫌いだった。始まるまでの変な緊張感もそうだし、始まったら始まったでどういう風に話が広がっていくのか見極めないといけないし、それで自分の仕事が増えるような流れになっていくとかなり萎えていた。

 私みたいに仕事が特に好きでもないなら誰しもそうなるとは思うが、今の私の前に広がる光景はまさにそれだ。


「ほぉ、そちらが例の……」

「姫様と同じくまだ子供ではないのか?」

「しかし……あの出で立ちはどこか神聖さを感じるのも頷けますな」


 どう見ても値踏みされている複数の視線に小さな嫌悪感を覚えながらリティアと一緒に与えられた席に座った。会議室と思われる場所にはリティアとギレン王、そして今まで会ったことのない……恐らく貴族とかそういう人達が座っていた。


「彼女が異国の聖女ナコ様です。私にとって大事な恩人であるのでくれぐれも無礼な言動は控えてください」


 リティアの少し警戒したような鋭い声音をここで初めて聞いた。自国の貴族と言えども油断できないと言っていたからそれが表れているのだろう。


(リティアはここにいてくれるだけでもいいと言っていたけど、これは絶対話飛んでくるなぁ)


 そもそもそのために呼ばれているのだから議論に入らないわけにもいかない。だけど出来れば話が飛んでこないことを願っていたが残念なことにその機会はすぐに訪れた。


「早速本題ですが……ナコ様でしたか。今回の調査については貴女にも協力いただける認識でよろしいでしょうか?」


 話しかけてきたのは会議室にいる人の中では比較的若そうな男だった。

 流石に名指しに応えないわけにもいかず、隣で心配そうにしているリティアにはアイコンタクトで大丈夫と伝えて口を開く。


「そうです。リティアとは短い付き合いですが友人として助けたいと思いましたので」


 言ってから様付けしていないことに気づいてハッとしたが聖女という私の肩書きが聞いているのか突っ込まれはしなかった。リティアが横からこそっと補足として彼がセドリックという名前と言うことを教えてくれる。

 事前の説明では国の重鎮の一人で政治から戦まで含めて頭脳的な立ち位置だと教えて貰っていた。彼は私の答えに満足しているのか笑みを浮かべながら続ける。


「ナコ様については旅をしながら瘴気を祓っていると聞きましたが、出身を聞いても?」

「たぶん聞いてもわからないと思います。ここよりもずっと遠い海を越えたような場所にあるので」

「……そうですか。いえ、根掘り葉掘り貴女のことを聞き出そうとしているわけではないのです。ただ、私の役割上貴女のことも今回の件については疑わなくてはならずご容赦ください」

「セドリック卿! 彼女がそんなことをするわけ……!」


 そんな彼に非難の目を向けたのはリティアであった。でも、彼の言う事もわかるので小さく彼女を制した。


「詳細を話せないのは申し訳ないですし、警戒されるのも理解しています。ただリティア含めこの国のことを助けたいのは本心です」

「……わかりました。ひとまず出自について今は置いておくとしてナコ様は瘴気をどれくらい浄化出来るのでしょうか?」

「正直基準というものはわかりませんが、浄化するだけならある程度は問題ないと思います……ただ、戦うことはたぶん無理です」

「なるほど……」


 彼はしばらく考える仕草をしてから後ろに控えていた者に合図をする。合図を受けた者は手に持っていた大きな巻物のようなものを会議室の大きな机に広げた。参加している皆はそこを覗き込むと見取り図のようなものが書かれているようだった。


「あくまでも推測ではありますが、今回の噴水広場の件について怪しい箇所は下水道の一点で考えています。これはフィオレンティア王国の下水道の図面になります。資料を引っ張り出して急造したもので多少粗いのはお許しください」


 セドリック卿は瘴気の件を聞いてからわずか一晩でこれを作成したらしい。一人で作ったわけではないと思うがそれでも行動の早さには驚く。


「下水道への入り口は3箇所、ただ中は狭いうえに入り組んでいるため多くの兵士を入れるのは不可能。なので精鋭を下水道の中央に一番近い箇所より侵入させ、仮に主犯がいた場合に備えて残り二つは入り口を兵士で固める形で封鎖する方針が良いかと」

「うむ。全体の方針としてはそれでよいだろう」


 ギレン王はそれに賛同し続ける。


「問題は人為的なものかそうでないか。仮に瘴気の山から噴出したような強大な災害であった場合は……」

「それこそ国民を総避難させないといけないでしょう。噴水だけではなく各所の水場から瘴気が漏れ出る事態になっては対処は不可能でしょう」


 その発言に場がざわめく。以前に国の前まで迫っていた瘴気を思い出し恐々としているようだ。


「で、あれば! 早急に調査に乗り出さなくては! 私の部隊を出しても良いな? セドリック卿」


 そう言って立ち上がったのは筋骨隆々な大漢であった。確かミッドレーという貴族で確かけっこうな戦い好きと説明を受けていたが、今の様子を見るに間違いないようだ。


「……ミッドレー殿に任せる部分もあると思いますが、瘴気が発生していることを考慮して姫様とナコ様にもお力添えを頂くため、リティア様からは希望はありますか?」

「私達の護衛に関しては親衛隊で問題ないので主戦力は任せます。ただ調査は安全を第一として危険がありそうならすぐ撤退としましょう。また、瘴気が溢れる場合も考えて他の二つの箇所にも聖力を扱える人を配置してください」

「ええ、もちろんです。問題なく配備いたしましょう」


 それから調査に出る部隊やら斥候隊やらで話し合いが続き、少しだけ口論になるような部分もあったが方針に関しては定まっていたのが幸いし思っていたほど怒号が飛び交わなかった。

 それに内心ほっとしているとギレン王が立ち上がって宣誓するように声を響かせる。


「では、下水の調査として本日は斥候隊を出す! 細かい事項については決定後共有するからしっかりと準備しておくように! セドリックはこの後詳細を詰めたいからこの場に残ってくれ」

「かしこまりました」


 そして「解散!」と、諸々が退出していった。私もリティアと一緒に会議室を後にした。めちゃくちゃ荒れた会議ではなかったもののやっぱりプレッシャーのようなものを感じたのか短時間だというのにだいぶ疲れた。


「ナコさん、大丈夫ですか?」

「ちょっと疲れたけど平気。リティアは全然疲れていないみたいだけどすごいね」

「そんなことは……確かに慣れてはいますけど」


 それからリティアと今後のことについて話し合う。斥候隊の最初の調査が終わり次第私達が出ることになるらしく、それまでは待機とのこと。


「下水道については定期的に管理のために検査は行っていたのですが、その周期が長いためもしかしたら本当に瘴気が溜まっている可能性はあります。その……今更ですが本当にナコさんにお手伝い頂いでもいいのでしょうか?」


 リティアは申し訳なさそうな表情で言う。


「本当に今更! 大丈夫大丈夫! さっさと原因を突き止めて解決しよ!」

「……ありがとうございます。本当に」


 リティアはこれから親衛隊の招集からメンバー選出などを行うらしく、邪魔するのも悪いから私は部屋に戻って待機することにする。

 何かこういう待ち時間はあまり好きじゃないんだけどなぁと、緊張を誤魔化すように用意されたお茶やらお菓子を頂いて暢気にしていたら、ちょうど太陽が頂点に上る頃リティアが部屋にやってきた。

 しかし、どうにも様子がおかしかった。


「ナコさん! すみません! すぐ出ることになりましたので準備をお願いします!」


 その慌てようを見て何か問題が起こったのは聞かなくてもわかった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

面白かった、続きが気になるなど気に入って頂けましたら、ブックマークや評価を頂けるとすごく嬉しいです!


明日から仕事が繁忙期に入ってしまうため、10月10日までは2日に1話の更新となります!

そのため次回更新は10/1の21時ごろになります!

よろしくお願いします!

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