25.ミリナちゃんと遊ぼう
ミリナちゃんの私室は子供らしい小物や明るい装飾が目立ち、明るい彼女らしい部屋であった。
「それじゃあ、おままごとしよう!」
「お、おままごとかぁ……」
散策から帰ってきた私達を出迎えたのはギレン王であった。報告を聞いていたとは言え心配していたようで元気なミリナを見てホッとしていたものの、瘴気が新たに発生したことに対して危機感を覚えているようで、すぐに会議を開くとのことだった。
「説明は私だけで大丈夫なのでナコさんは休んでいてください」
「いいの?」
リティアの提案はありがたいものだったが彼女一人に任せてしまっても大丈夫か心配そうに尋ねると、彼女はこういうのは慣れているのでと言う。
「説明の場にはお父様以外の方々をいらっしゃるでしょうし、ナコさんとしては立場的にも少し複雑ですから」
「うーん、それならお言葉に甘えようかな。なんでもかんでも任せてごめんね?」
「いえいえ。これぐらいお気になさらないでください」
すると横に立っていたミリナちゃんが飛び跳ねてアピールしてくる。
「じゃあナコねーさまはねーさまが戻ってくるまで私と遊ぼう!」
「そうだね。せっかくだし遊ぼうか」
「わーい!」
いいんですか? とリティアは尋ねてくるがもちろんと頷く。そもそも帰る時遊ぶ約束をしていたしそれを反故にするのはよくない。そんなわけで誘われるまま彼女の部屋にやってきたのだが。
(おままごとをこの年になってからやることになるとは……)
異世界だからといって子供の遊びはそんなに日本と変わらないようだ。絵本や人形から知育用のちょっと複雑そうなパズルの玩具などが部屋には置いてあった。
時刻はちょうど15時くらい、ミリナちゃんに提案されるがままおままごとをすることになったわけだが。
「じゃあ、ナコねーさまはおかーさまね!」
「まじか。じゃあミリナちゃんは?」
「ナコねーさまのこども!」
「まじかぁ……」
てっきり普通に姉妹かと思ったら想定外の役を与えられて困惑する。そりゃミリナちゃんみたいな元気で明るい子供なら大歓迎だけど、こういうのってどうしたらいいのか正直わからない。とりあえず……
「じゃあ、リティアはお父さんにしよっか」
「うん! ねーさまはおとーさま!」
たぶん後々やってくるであろうリティアの役割を決めておく。おままごとは要はシミュレーションだ。つまり今回は家庭を想定して立ち回ればいいのだが一般庶民の私と王族のミリナちゃん、果たしてちゃんと噛み合うのか。
「おかーさま! 今日はピクニックの日だね!」
「お、あ、そうなんだ。えーっと、そうだね楽しみだねぇ」
唐突な展開に面食らいながらなんとか合わせる。どうやら今日は家族みんなでのピクニックらしい。部屋の中で移動して外を想定した場所に座る。
「それじゃ、お弁当でも広げようか?」
とりあえず話を繋げようとそう振ってみたのだが、対するミリナちゃんはキョトンとした瞳をこちらに向ける。
「お弁当? ってなに?」
「え、ピクニックのご飯ってどうしてるの?」
「お城の人が一緒に来てその場で作ってくれるよ!」
「……王族パワー」
庶民と王族の差がここにあった。確かにこのお城の庭園ならシェフが料理をしたっておかしくはないけども。
「おかーさま! ステーキをどうぞ!」
「ピクニックでステーキ……い、いただきます」
玩具で表現されたステーキを美味しく頂きながらミリナちゃんとたくさん話をする。その中で瘴気騒動が起きる前はたくさん家族と遊んでいたことやリティアと一緒に昼寝するのが好きなこと、お城を走り回って花瓶を割りとても怒られたこと。とにかく元気なミリナの話は子供特有のエネルギッシュに溢れていて飽きがこない。
私のこともある程度伏せながら話をしてしばらくピクニックを楽しんでいるとミリナちゃんは大きなあくびをする。
「お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃった」
もちろん本当に食べているわけではないが今日は色々とあったし疲れも溜まっているのだろう。あんなことがあってから遊ぶのは中々度胸があると思っていたが、どうしても疲労は誤魔化せない。
「良かったら膝枕しようか?」
「うん……」
子供は素直だ。ミリナちゃんは電池が切れるように私の膝にぽふっと頭を乗せるとすぐに静かな寝息が聞こえてきた。膝から感じる温かい体温が心地よい。
急に静まり返った部屋でゆったりと過ごし始めてしばらくしてから、部屋の扉が控えめにノックされる。しかし、ミリナちゃんが寝ているので大きな声で返事が出来ず困っているとゆっくりと扉が開いた。
「……やっぱり寝てしまいましたか」
「あー、お父さんお帰りなさい」
「え? え?」
やってきたのは予想通りお父さん役リティアであり母である私の言葉に困惑していた。それがちょっとおかしくて小さく笑いながら説明する。
「なるほど……そういうことでしたか。すみません、ミリナの遊びに付き合ってもらって」
「ううん、ぜんぜん。何だかんだ楽しんでたし」
「それならよかったです」
リティアは私の横に腰を下ろすとミリナちゃんを優しく撫でる。その感触が心地いいのか彼女は幸せそうな表情でちょっと身じろいだ。
「報告は大丈夫だったの?」
「……ええ、ひとまずは何とか」
そういうリティアの表情はいつも通りに見えるがどこか瞳には元気がないようで、なんだか少し影が差しているように見えた。
「何かあったの?」
「いえ、そういうわけでは。ちょっと疲れてしまっただけで」
「…………ほんとうに?」
「ほ、本当ですよ」
しかしリティアの目は明らかに泳いでいる。短い付き合いだが彼女が嘘に慣れないことは何となくわかっていたから、そのままじーっとにらみつけると観念したようにため息をついた。
「すみません、実は少々問題が起こりまして……」
「どうしたの?」
「もしかしたら今回の瘴気騒動、自然に発生したものではなく人為的な可能性があるのです」
「え?」
神様は勝手に発生するといっていたのに人為的? と首を傾げる。しかし問題はその後だった。
「そしてもう一つ、こちらの方が問題と言うか……今回の瘴気騒動についてナコさんに任せるべきではないかと言い出した方々がいまして」
「……え、私に?」
つい素で返してしまう。リティアは申し訳なさそうにしながら報告の場で起こったことを話し始めた。
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