表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

8.

「仕事が速いって喜んでたぜ」

「業界じゃ結構評判がいいんですよ」

「だが、もうじきおれも神官勢力の一員になれる。こっちに元締めとして権力を維持したままな。それがどれだけでかい存在か、お前、分かるか?」

「なんで、そのオカマがぼくにとって人質になっているのかが、不思議だけど」

「おれも来る可能性は半々かなと思ってた」

 通りから外れた、三方を高い壁に囲まれたガラクタ置き場に自動車が止まり、フィッシュ・マンが運転席から肘を出している。まわりには手下が五人。四人がリヴォルヴァー、ひとりがショットガン。

 殺し屋から見て左の端にキャンディが倒れていた。全裸にされ、体じゅうが殴打で紫に脹らみ、裂けた傷からドロッとした血が流れている。

 キャンディの命と交換だ、と言っていたが、もう死んでいる。フィッシュ・マンは取引をするつもりはなかったのだ。

 殺し屋は両手をジャケットのポケットに突っ込んだ。

「それで? ぼくはそこのオカマと何を交換に差し出せばいいの?」

「キー。もうひとつあったんじゃないかな?」

「それが?」

「神官たちは欲しがってる。くれるよな?」

 手下のひとりが左から近づいていく。殺し屋は左のポケットから取り出した赤いキーをその男の手に渡した。フォン・シュピレフスキーが神官たちに破滅をもたらすと言っていたキー。

 手下からキーを受け取ると、フィッシュ・マンはにんまり笑った。人を見た目で判断してはいけないというが、ある程度の年齢を超えると、その内面が見た目にもろに出てくる。フィッシュ・マンのそれは見るに堪えない。

 そうやって目をそらした先にキャンディの死体が転がっていた。

 運転席に銀の光。シルバー仕上げの大型銃が姿をあらわし、フィッシュ・マンがゲラゲラ笑った。

 銃口がこちらに向くより先に、殺し屋がポケットのなかのドクロのボタンを押した。殺し屋の操作でフィッシュ・マンの自動車の下に潜り込んだZV86遠隔操作爆弾が爆発した。

 バラバラになった手下を蹴飛ばして道からどかせ、ひしゃげた金属のなかで痙攣しているフィッシュ・マンの頭に二発撃ち込んだ。キーは焦げた肉に刺さっていた。

 キャンディはうつ伏せにされていた。右手が固く握りしめられている。肉の厚い指のあいだから緑の砂がこぼれ落ちた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ