暴食
ついた先は洞窟のような場所。目を対象に設定して暗視の魔法を作り出し、他の八人にも掛ける。
「お、なんか急に見える。魔法?」
「うん」
「あっちの方向にいる。行こう」
洞窟を進むと、辺りに大小様々の球体が壁際に落ちているのに気づく。
「なんだこれ?」
「・・・動物の皮だな。人のもある」
その醜悪さに、誰もが言葉を失う。
「・・・行こう」
進めば進むほど球体は数を増やしていく。その先には今までの通路とは違う、広く大きなドーム状の空間があった。奥は舞台のようになっており、手前に向かって同心円状の段がある。
「あれか?」
「ああ。あれだ」
舞台の上には4mはある豚と、それを取り巻く1m程の豚がいる。
「豚ってことは、あいつはおそらく《暴食》の ―――― 」
そこまで言ったところで子豚の大群が、一挙に襲い掛かってきた。
「クッソ!急すぎるだろ」
火を大剣にまとわせながら章十が言う
「同感。俺は奥の潰すから八人で頑張って」
「俺も行く」
「OK。じゃあ俺と速で行くわ」
「頑張ってね」
二人を見送り、子豚の殲滅に集中する。
数えるのも億劫になるほどの大群。それに対してこちらの戦力は七人。
敵の能力も分らないのにさぁ。
≪えー、テステス。聞こえる?≫
何これ?京矢?
≪そ。えーと、信頼できるとこと通信したら、敵の能力が分かったんだよね。能力は、体を齧られた奴の体組織作り変えて自分のクローンにするらしい。道中のあれはいわば《卵》だ≫
うえ、最悪じゃん。俺がモーニングスターで潰してるこれは内臓とかなのか?
≪そうなるね≫
攻撃能力が特殊だったりは?
≪しない。普通に体当たりとか、捕食とか。あ、クローンにも《産卵》能力あるから≫
は?じゃあこれ懸け?
≪当たり前じゃん≫
・・・やんなきゃよかった。
≪あんまへこんでないね≫
まあ、攻撃力低いならやれるし、俺大分強い自信あるから。
≪頼もしい。見た感じ七人とも実力同じっぽいから全員大丈夫か≫
多分。
≪てかさ。暴食って意外と優しいらしいよ?あ、悪魔基準でね≫
悪魔の優しさとはいったい。
≪なんかね。産卵する相手を一回殺してから産み付けるらしい≫
ん?死んだやつの体から作ったってことは、こいつら不死身じゃね?
そんな考えは一秒と経たずに中断させられる。首だけ切り落とされた子豚が上げる吶喊によって。
背後に戦闘音を聞きながら突撃し、子豚を飛び移って舞台に辿り着き、大豚と対峙する。
突撃中にした通話で吏狗が言ったことで気付いたんだが、確かにそれだとこいつら不死身ってことになるな。いや、でも大丈夫。
「悪いけど、アニメじゃバッシングを一週間は食らうぐらいの速さで行くわ」
いつもローブの内側に隠してある二振りの日本刀。狐童子と虚童子
「ルシファー」
虚童子から黒い影が這い出て、一つに固まる。それは大豚と同じほどの大きさの獅子。
「こいつらならルシファーと相性いいだろ」
傲慢を司る悪魔、ルシファー。その能力は自分より少しでも弱い存在を絶対服従させること。
大豚、暴食を司る悪魔べルゼブブが低く、どこか戸惑いながら唸る。
まあ、確かにこいつは性格上誰かに付き従うことをしないからな。
でも実際に仲間としてこっち側に立っている。それはなぜかというと、半年前に遡る――。




