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挑戦の喜び

今回は副騎士団長同士の同時戦闘。

何かしらの会話があった訳では無いが

さも当たり前の様に他の副騎士団長達は

フェイトを倒すために結託の流れだった。


「一応、同時戦闘……ですよね?」

「まぁ、こうなるよなぁ」


試合が始まると同時に副騎士団長達は

フェイトを除いて同じ場所へ立った。

それだけ、実力差があると言う事だ。

戦場により実戦に近付けるためなのか

色々な剣とか槍が転がっている。

今回のフェイトは剣を構えて居るが

短刀とか仕込んでるんだろうなぁ。


「因みに銃って、当っても大丈夫なんですか?」

「訓練用の模擬弾だから、当っても痛いだけだよ」

「なる程」

「お、お姉様、け、拳銃は苦手で」

「この戦場で長銃は無いでしょ?」

「そ、そうですけどぉ!」


カイスが持って居るのはジーニスと同じ拳銃だが

どうやら得意なのは長銃らしいな。

とは言え、接近戦が多発するであろうこの場で

長銃じゃ無理だろって事で拳銃が渡されてる。


「……前衛は私が熟します」


アースは槍と盾なんだな。

実際、ギルフェリーの騎士達は全員槍と盾だ。

まぁ、騎士団長が槍と盾が得意な訳だし当然か。


「カバーは私が」


アートスが剣を構えている。

シャーリスとは違って動き回るスタイルなのは分かるが

あまり一撃を重く出来ない様な気もするなぁ。


「因みにリンの魔法は水属性と氷属性です。

 適性はジュリア程ではありませんが」

「ジュリアの方が適性あるんだな」

「う、うん、魔法適性はあたし、結構あるから。

 でも、お姉ちゃん達と同じ様に

 あたしは研究者の方が向いてるから」

「戦うのが好きじゃ無いって事だな」

「うん」


つまりだ、純粋な魔法の適性はジュリアの方が上と。

だが、戦いは素人に近い部分があるだろうから

リンと戦うと、リンの方に軍配が上がるんだろうな。


「魔法と銃と槍と剣……よし」


どう立ち回るかを決めたのだろう。

フェイトは少しだけ姿勢を低くして構えた。

その動作を見た副騎士団長達も身構える。


「では、始め!」


シャナのかけ声で試合が開始される。


「えい!」


かけ声と同時に銃声が響き渡る。

フェイトは即座に動いて居たため

その弾丸がフェイトに当ることは無かった。


「そこ!」


接近してきたフェイトに向けて槍が伸びる。

だが、フェイトはその攻撃を避けた。


「く!」


そのまま、アートスがカバーをする為に

フェイトに攻撃を仕掛けたわけだが

フェイトはアースの盾を踏み台にして後方に飛び退く。


「それ!」


空中で1回転しながら、短刀を後衛2人に投げる。

狙いは正確、確実に当る軌道なのが分かるが。


「させない!」


すぐにリンの水の壁が発生した。

フェイトが投げた短刀はその水の壁を貫く。

だが、勢いがかなり削られたことで

短刀は2人には届かなかった。


「くぅ! やっぱり魔法は凄いわね!」

「今なら!」


フェイトの着地を狙い、弾丸が射出される。

だが、それを既に予見してたであろうフェイトは

着地の勢いを殺す事は無く

あえてより低い姿勢になり、弾丸を回避。

そのまま手元に転がってた槍を左手で掴んだ。


「はぁ!」


一気に副騎士団長達の元へ接近。

ある程度近付くと同時に槍をなぎ払う。


「く!」


その攻撃をアースが盾で受け止めた事で

槍はあっさりとへし折れた。

だが、それは予見通りであったのだろう。

フェイトはそのまま剣をアースに伸ばした。


「させるとでも!?」


だが、その攻撃をアートスが受け止めたわけだが。


「それは分かってるわ!」

「な!」


折れた槍を後ろに向けて投げる。

射線の先にはリンが居た。


「しま、あだ!」


フェイトが投げた折れた槍はリンの胸部に当る。

鎧がある部分だな、結構器用に狙った。

鎧が無い場所を本来狙えたという宣言に近い。


「く、この!」


焦りを見せながらも、隙を晒したフェイトに向けて

アースの槍が伸びてくるわけだが。


「っと」

「はぁ!?」


フェイトはその攻撃をさも当たり前の様に避けて見せた。


「な、うぐ!」


そのままの流れで、攻撃を受け止めていたアートスに

膝打ちを入れて、怯ませる。


「そこです!」

「甘いわ!」

「あぐ!」

「あ! 済みませんアートスさん!」


そして、すぐにアートスを蹴り

丁度弾丸を放ったカイスの射線に向けて

アートスを押し出し、ダメージを与える。


「はぁ!」

「うぅ!」


そのまま流れるようにアースに剣を振うが

ギリギリで盾で防がれた。


「ここ、あれ!? 居ない!」


アースが攻撃を防ぎ、一瞬視線が遮られた訳だ。

その一瞬で、フェイトは剣から手を離して

即座にアースの側面へと移動して居た。


「武器は潜めてあるわ」

「は、いだぁ!」


そのまま側面から短刀を取りだしアースを刺した。

とは言え、所詮は摸造刀なので打撃だな。

丁度、鎧が薄いところを指したのだろう。

結構アースが痛そうにしてる。


「な! でも!」

「遅い!」

「きゃ!」


焦りながらも反撃を狙ったカイスだが

右手に小型の短刀を構えていたフェイトが

即座にカイスの方に短刀を投げて

カイスが持つ拳銃に直撃させる。

それにより、カイスが持つ銃は上に向き

フェイトには当らない。


「これで終りね!」

「きゃう!」


そのまま、一気にカイスに接近して

カイスを全力で投げた。

その結果、勝利はフェイトと言う事になる。


「っし!」


少し嬉しそうに、フェイトはガッツポーズをする。

やはり勝てたのは嬉しかったんだろうな。


「おぉ! 流石じゃな、フェイト!」


副騎士団長とは言え、4人を同時に相手取り

終始相手を翻弄して勝利したフェイト。

だが、やっぱりまだシャナの方が上だな。

多分だが、シャナ相手だった場合、カイスは

一切狙いを定めることも出来ないだろうし。


「こりゃ、かなり強くなったんだな、フェイト」

「流石としか言えませんわね」

「しかし、これが完全に全力を出したフェイトの強さかぁ

 こりゃもう、バスロミアの戦力凄いね」

「余裕そうですね……」

「フェイトの成長には驚かされますけど

 まだ、私の方が勝てると言う確信があります」

「私もですわね、あの素早さは見事ではありますが

 私の守りをまだ突破出来るほどではありませんの」

「ゼロ距離なら不味いかも知れないけど

 そうじゃ無いなら、あたしはまだ狙えるしね」

「あぁ、まだシャナには遠く及ばねぇからな」


騎士団長達って、やっぱりかなり強いんだろうな。

あの多対一の戦いを見ても

まだ自分達の方が勝てるって確信があるみたいだ。

シャナは当然としても、他の3人も自信満々だ。

リーデルフォンはそこまで自信無さそうではあるが

サポートである以上は仕方ないか。


「やっぱり勝てなかった……4対1で戦って

 ここまで圧倒されるなんて」

「ま、即席の連携にしてはよく頑張ったよ」

「えぇ、フェイトが乱戦に強かったという事ですね」

「ゴブリンアーミーで鍛えられましたからね」


やっぱり乱戦が得意なのはそれが大きいんだろうな。

ゴブリンアーミー相手だし。

そもそも、フェイトって1人で冒険者してたから

多対一とかかなり慣れてそうだもんな。


「……お願いがあります」

「何だ? フェイト」

「私と、改めて1対1で戦ってください!」


騎士団長達に向けた言葉だった。

その言葉を受けた騎士団長達は全員笑みを見せる。


「くく、あっはっは! 良いな! 最高だ!」

「えぇ、2番手を決める戦いなんかよりも

 遙かに有意義になりそうですわね!」

「あぁ、楽しみだね! フェイト!」

「はい!」


あー、目的変わったな。

そりゃ、フェイトはこういうことを言うだろう。

強さに憧れを持ってるフェイトだからな。

騎士団長達を前にもう一度戦いたいと言う気持ちが

どうしても出て来てしまったんだろう。

そして、騎士団長達も嬉々として答えた。

理由は分かる。

ここまで向上心の塊であるフェイトを見て

指導者として燃えてきたのだろう。


副騎士団長達はあまり向上心が凄いって言う

そんな雰囲気は無かったからな。

自分達では騎士団長には敵わないという

そんな諦めのような物も感じていた。

何なら、正面から挑もうという雰囲気が無い。


そりゃ、組織としては正しい判断だろう。

トップと同じ方向に強くなる必要は無い。

国を守る為なのだから、違う方向で強くなり

憧れの相手を支えたいと思うのは不思議なことではない。


「俺達に正面から挑もうとするのはお前くらいだ」

「えぇ、アースも私には挑もうとはしませんの」

「同じく、別方向の強さに向ってしまってる」

「でもお前は、正面から俺達と戦いたいとそう言うんだな」

「はい! 尊敬するあなた達に、正面から勝ちたい!」

「最高だ、フェイト!」


だが、自分に挑んでこようとする相手が居る。

そりゃ、頂点に近い分野に到達してる奴らからすれば

この上ない喜びになるんだろうな。


フェイトは騎士団長達を甘くは見て無い。

間違いなくその強さに敬意を示してるし

その上で学びを願ってたわけだからな。

そんな相手に悪意も無く勝ちたいと思ってる。


「……ふふ」


シャナが俺達の方を見て、少しだけ笑った。

そして、シャナもフェイトの方を向く。

フェイトに自分を重ねたのかも知れないな。

シャナも今は挑戦者だ。

俺という武の極みに居る相手に挑むために。

俺も正直、かなり嬉しい。


「どうする? 君達。2番手を決めるのは」

「そんなのは後だ、分かってるだろ? シャナ!

 今は未来を育てる時間だ!」

「えぇ、あなたがまだ越えられない壁を

 見せ付けてあげますわ!」

「喜びなよ、フェイト。

 程よい壁が君の前には5つもあるんだ。

 まずは、その壁を越えて見なよ!」

「はい! 越えます!」


騎士団長達が楽しそうに笑ってる。

だが、リーデルフォンは少し引いてる。

まぁ、リーデルフォンは熱の方向性が違うしな。

でも、楽しそうなのは間違いないだろう。

そして当然、フェイトもリーデルフォンを尊敬してる筈だ。

だから、仲間外れにはならないだろうな。


「いやぁ、面白そうじゃな、これは!

 マグナよ! 儂は今猛烈にワクワクしておる!

 そして、即座にミントとデイズを呼ぶのじゃ!

 こんな最高の余興はそう無いぞ!」

「あぁ、って、もういねぇ」


そして、短い間にドリーズは2人も連れてきた。

2人は少しだけ目を回しているが

フェイトの挑戦を見守ることにしたらしい。

そりゃな、親友がこれから大きな壁に挑むんだ。

それを見守りたいって思うのは当然だよな。

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