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出来ない事への挑戦

シルフの決意を改めて聞いた。

だが、まだその日は先の事だ。

まだ世界に異変などは起こっては居ない。

ゴブリンの女王を排除したことにより

国への襲撃は一気に激減したわけだが

まだ油断が出来る状況ではないが。


「うーむ……」


リビングでドリーズが何か絵を描いて様子が見えた。

自分が書いた絵を色々な角度から見てる。


「ドリーズ、何してるんだ?」

「おぉマグナよ! 見よ! どうじゃ!?」


俺が来たのに気付いたドリーズが

自分が書いた絵を得意気に見せてくれた訳だが。

……まぁ、うん、絵は下手なままだな。


「クックック、自信作じゃぞ!」

「絵の練習してたのか?」

「無論じゃ! 馬鹿にされたままでは納得出来ぬ!

 して、どうじゃマグナよ! 上手かろう!」

「あー、はぐらかしても意味ないだろうから

 はぐらかさねぇで言うが……下手だな」

「なぬぅ!?」


ハッキリと言われて結構ショックだったのか

かなり動揺した表情を見せて驚いた。

そして、即座に自分の絵を見て再び頭を抱える。


「ぐぬぬ、まだか、まだ駄目なのか……

 何処じゃ、何処が……う、上手いと思うのじゃが」

「いやなぁ、線がガタガタなのと、絵の塗りが雑というか。

 因みに何の絵を描いたんだ?」

「見ての通り、ドラゴンと城じゃが」

「あーっと、ドラゴンが城を焼き払ってる絵?」

「いや、守っておる絵のつもりなのじゃが……」

「ドラゴンの体当たりで城ぶっ壊して

 炎を吐いて焼き払ってるようにしか見えねぇが」

「そうか!? そう見えるか!?」


焦りながら、再び自分の絵を見るドリーズ。

本人的には傑作なのだろうが

俺達からすれば、まぁうん。子供の落書きとしか。


「うーん……これで良いかな……」

「うーん、中々難しいなぁ」


丁度、ジュリアとデイズが部屋から出て来たな。

デイズは鍛冶部屋から誇りみれで紙を持って出て来て

ジュリアも書斎から紙を持って出て来た。

やっぱりああ言う動作ってのは個人差がでるんだな。

デイズは右手で頭をかきながら紙を見ながら出て来たが

ジュリアは両手で紙を持って出て来てる。


「あ、デイズさん、丁度良いところに」

「およ? どうしたのかな?」

「実は絵の事でアドバイスが欲しくて」

「絵? どうして絵が?」

「実は、前にドリーズさんが資料を出した時に

 絵があった方が分かりやすいのかなって思って

 ちょっと挑戦してみたんです」

「へぇ、確かに絵は分かりやすい部分があるかもね」

「でも、これで良いのかよく分からなくてですね。

 デイズさんは絵とか良く書いてそうなんで話を聞こうと」

「絵というか、設計図だけどね、私の場合はさ」

「でも、近いかなーって思って」

「かもね、因みにどんな感じかな?」

「えっと、こんな感じで」

「おぉ! 儂にも見せるのじゃ!」


絵という単語に興味を惹かれたドリーズが

すぐに2人の方に飛んでいく。


「うわ! ドリーズさん!?」

「見せよ! 上手い絵というのはどう言う物なのじゃ!?」

「え!? あ、いや、まだ上手いかどうかは」

「い、以外だね、絵に興味なんてあったんだ」

「無論じゃ! 馬鹿にされたままでは納得いかぬ!

 儂も絵を上手く書けるように努力せねばならぬ!」

「ドリーズさん、落ち着いて、

 あの時、マグナさんも言ってたけど

 絵は無理に努力しなくても良いんだよ?

 場合によっては愛嬌になるし

 あたしとしてもドリーズさんの絵は可愛いと思うし」

「いや! 努力するのじゃ! さぁ見せよ!」

「えっと、こ、こんな感じ」


少し圧倒されながらジュリアはドリーズとデイズに

自分が資料として書いたであろう絵を見せた。

ジュリアの絵はかなりレベルが高いな。

恐らくだが、ドリーズが書いてた絵を

ドリーズが解説した言葉を聞いてアレンジした絵だ。

ドラゴンの絵とドリーズの絵も書かれている。


「な、何と言う……凄いのじゃ」

「え、えっと、ありがとう」

「へぇ、これがドリーズちゃんかな?」

「うん、それがドリーズさんで、後ろに居るのが

 ドリーズさんが指揮するドラゴンで

 こっちはドラゴンゾンビなんだよね。

 一応、ドリーズさんが用意してた絵を少し見た時

 ドリーズさんがちょっとだけ解説してたから

 その解説を思い出しながら書いてみたんだ。

 こうすれば、ドリーズさんも説明しやすいかなーと」

「こ、これが……敵わぬ、儂では敵わぬのじゃ」


ドリーズが素直に負けを認めた。

いやまぁ、絵のレベルが違うからなぁ。


「えっと、得手不得手はあるから……

 あ、因みにデイズさんだったらどう書きますか?」

「うーん、私の場合は武器の設計図だけど

 用途によって違うしなぁとは思うんだ。

 まぁ、そういう感じの絵だったら。ちょっと待ってね」


そう言って、デイズが綺麗な紙とペンを取り出し

軽い流れで絵を描き始めた。


「はい、こんな感じ。そこまで時間は掛けてないから

 そんなに良い物は出来ないけど」


そう言ってジュリアに見せた絵だが

レベルが滅茶苦茶高いのが分かる。

あの短い間でジュリアが書いた紙を見ながら

似たような構図を即座に描き、細かい部分に

これが何で、これが誰でとか、そう言うのを記入してる。


「細かく記入してるけど、これはどうして?」

「私が書くのは設計図が基本だからねぇ

 ここをこうするとか、ここはこうとか

 そう言うのを書いて分かりやすくするんだよねぇ

 そして、この説明を入れても見えにくくならないように

 絵を広く描いて指定した場所だけを細かく書くんだ」

「なる程、説明をするならこっちの方が良いかも?」

「……」


ドリーズはデイズの絵を見て再び固まった。

あの短期間であのレベルの絵だからな。


「でも凄いですね、デイズさん。

 あの短時間でこんなに書き込めるなんて」

「あはは、まぁ設計図は沢山書いてるからねぇ

 こう言うのは得意になるよ。

 今回はジュリアちゃんの絵って言う見本もあったし

 時間は掛からないしね~」


まぁ、考えてみればそうだよな。

デイズは鍛冶屋だ、色々な武器を作る際に必要なのは

やはり設計図なのだろう。こんな風に作りたいという

そう言うイメージを絵にして記録しておかないと

理想のイメージが出て武器を作っても

肝心なときにその時のイメージが

全然出て来ない可能性もある。

だから、設計図に描いて記憶しておくのは大事だろう。


「うぐぐ……どうすれば」

「その、ドリーズさん。絵を上手く描きたいなら

 まずはえっと、文字の練習をするべきかなって」

「文字じゃと?」

「うん、文字を勉強すれば絵心も付くだろうし

 何かを書くときも綺麗に書けるかなって思うの。

 それに、絵とは違って文字はかなり書くことも多いし

 これを練習すれば使える状況は絵より多いと思うの」

「うーむ、確かに字が汚いと言われたしのぅ……」

「それ良いかもな、俺も練習するか」

「実際字を書く機会は絵より多いだろうしねぇ」

「しかしのぅ、奴らには絵を使って指示を出す方が」

「いやいや、字ってのも侮れないと思うぜ?

 まずは線を真っ直ぐ書けるようになるのが大事とか

 何かどっかで聞いたような気もするしよ」

「うーむ、ならばまずは字の練習をするか。

 分かったのじゃ、感謝するぞ」

「うん、頑張ってね、ドリーズさん」


そう言って、ドリーズは字の練習を始める。

俺も字の練習をしようかな。


「サンキューな、2人とも」

「私としてもドリーズさんと話できて良かったよ。

 やっぱり見た目相応な部分もあって可愛いねぇ」

「うーん……凄く強い筈なんだけど……

 何だか、見た目と行動が一致してるときと

 一致してないときの差が凄いよね、ドリーズさん」

「まぁ変わってないけどな、あいつの態度は殆ど。

 今回は出来ない絵を出来るようになる為に

 努力をしたいだからな。

 今は下手だと言われた文字を

 綺麗に書く努力をしたいと言う感じだし」

「そ、そう考えると変わらないね、あはは」

「努力家だねぇ、ドリーズちゃん」


ドリーズにちょこちょこ圧倒されてたジュリアは

少し冷や汗を流しながらの言葉だったが

あまりドリーズを知らないデイズは

微笑ましそうに呟いた。

ミントが居たらデイズみたいな表情だろうな。

フェイトは間違い無くジュリア側……とか思うが

あいつなら、ちょこちょこ文句言いながら

ドリーズが字を綺麗に書く練習に付き合うだろう。


「ふぅ、いい汗かいた……ん? 何してんの?」

「字を綺麗に書く練習をするのじゃ」

「何でまた」

「本来は絵が良いのじゃが、ジュリアからのアドバイスで

 字を綺麗に書くべきと言われたのじゃ」

「絵って、あれでいいんじゃ無いかと思うけどね。

 まぁ良いわ、字を綺麗に書くのは大事な事だしね。

 ……なら丁度良いし、マグナも練習しなさいよ」

「あぁ、そのつもりだ」


さて、俺も練習をしようかな。


「じゃ、まずはこんな風に」


滅茶苦茶自然にフェイトが手本の字を書いてくれた。

やっぱりフェイト、面倒見が良いよなぁ。

その後、シルフとミントも混ざって俺とドリーズは

フェイトに指導されながら字の練習を行なった。

デイズとジュリアもたまに見に来てたが

デイズは鍛冶、ジュリアは資料纏めもある為

やはりたまに来るだけだった。

逆にフェイトはずっと居てくれた。

本当、面倒見が良いよなぁ、フェイト。

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