激闘後の雑談
ゴブリンアーミーの攻略完了。
よく分かんない女王の話を聞いて
疑問みたいなのがまぁ生まれた訳だが
正直、俺には大して関係無かった。
でもまぁ、魔王ってのはちょっとワクワクしたが。
「ゴブリンの掃討が無事完了。
全く厄介ごとがあったが、何とかなったな」
戦闘が終わった後に、俺達は被害報告やら
結果報告をする為に一番近くにあった
ラングレーに全員が集合して会議を始めた。
集合までにはそこそこの時間が掛かって
暇だったドリーズは何かを書いていた。
まぁ、何を書いてるかは分からなかったが
多分必要なこと何だろう。
しかし、会議室って言うのは円卓が普通なのか?
大きな部屋に多分大理石の机が用意されて
その机はバスロミアと同じ様に円形だった。
バスロミアの机も大理石だったしな。
まぁ、木製の机よりは威厳あるな。
これが木製だったら、何かショボいだろう。
そりゃ、滅茶苦茶磨き上げられた木なら
威厳はあるんだろうが、やっぱりこう言う
艶々の石の方が雰囲気でるんだろう。
部屋もそうだしな、鏡みたいに綺麗に掃除されてる
石造りの床、これはバスロミアも同じだったし。
木よりも石の方が加工しやすかったのかも知れねぇ。
「そうだな、これもマグナ殿のお陰か」
「大体ドリーズだと思うがな」
「相も変わらず、必要無い場面で
お主は謙遜をするのぅ」
実際、あまり必要な場面では無いよな。
ドリーズが戦ってくれてる理由は
俺だってのは周知の事実だろうしな。
「まぁな、不要な謙遜なのはそうだろう。
俺のお陰で何とかなったのはそうだが
ドラゴンの援軍があったのはドリーズのお陰だ。
やっぱり強い戦力ってのは大事だな」
「1人では限界があるからのぅ。
強き部下が複数居るのは重要じゃ」
「出来れば、それ以上戦力はーって言って言いたいけど
まぁうん、あまり変わらないか」
「そうだな、既に戦力段違いだし」
「バスロミアが戦力過剰過ぎますわ」
「争うわけでは無い、戦力は多いに越したことはないだろう」
「正確には、争えるわけ無いってのが正しいですね」
バスロミアの戦力が過剰すぎるのは間違いないからな。
俺が居る国が過剰戦力になる訳だから
何処だろうと、俺が所属した国がトップだ。
「あり得ない事を考えるのはこの際良いだろう。
今は勝利を祝い、今後の事を考えよう」
「うむ、大事な事じゃ。
勝って兜の緒を締めよ
という言葉が主らにはあるのじゃろう?
今はその状況じゃ」
「えぇ、理解してます。
これから起こるであろうアンデットの宴。
我々はまだ、これに対処しなければなりません」
そう、ゴブリンアーミーはただの練習だったからな。
本命は今の所これ、アンデットの宴だ。
そりゃ、俺達がいればどうにでもなるのだろうが
俺達だけで全ての人間を救えるはずも無い。
俺は1人だからな、分身出来るなら良いが
そんな事が出来るなら、今回の戦いも被害はゼロだろう。
「いつ起こるか分かりませんが、
予兆などがあるのであれば
我々に教えていただけませんか?」
「えぇ、可能であればその際に発生するであろう
被害なども、我々に教えていただきたい」
「うむ、良い心掛けじゃ。
無論、情報は惜しみなく与えるつもりじゃ。
儂が主らに協力したのもこれも理由にあるしのぅ」
そう言って、ドリーズが何かを取り出した。
そう、紙だ、紙……落書きみたいな絵が書いてる。
「え? 何これ」
「資料じゃ」
「ドリーズ、お前絵が下手なの?」
「な!? う、上手いと思うのじゃが!?
部下からも上手いと言われておったのじゃが!?」
「てか、何で資料なんて用意したのよ」
「ジュリアが用意しておった資料というのを見て
複数人に情報を与えるには
やはりこう言う方が分かりやすいかと思ってのぅ」
「それなら、まず字の勉強と練習をしなさいよ
イラストを使うなら絵の練習もしなさいよ」
「なな! 下手か!? 下手か儂の絵!」
「ん、下手。字も下手、汚い。
多分、字はにーにより汚い」
「なが!」
色々と能力高くても弱点あるよなぁ。
まぁ、絵は小学生低学年レベルだし
文字の方も滅茶苦茶読みにくいからな、ドリーズの資料。
実際、俺も字はかなり下手でよくシルフとかフェイトに
もっと綺麗に書けとか言われてたが
それより下手だからなぁ。
後、1枚しか用意してないし……
「そもそもだ、資料を用意するなら
最低限人数分用意して欲しいんだが……」
「人数分用意されても、多分理解出来ないよこれ」
「ま、まぁ見た目は幼いわけですし
無理をさせるのも……
い、いえ! 理解しようとすれば
最低限理解は出来ますわ!
こ、この絵はまさにアンデッド」
「そ、それは……儂の顔なのじゃが」
「え!? あ、申し訳ありませんわ!
じゃ、じゃあ、この……多分、ドラゴン!
形が崩れてますし、きっとドラゴンのアンデッド!
だってほら! 血も吐いてますわ!」
「それは儂が指揮する部下のつもりで
後、それは炎のつもりで……」
「申し訳ありませんわー!」
「いや、お前が謝ることじゃなくね?」
イリスって、意外と必死にフォローしようとしてくれるな。
なんだ、高飛車お嬢様ってイメージだったけど
案外良い子なのかも知れねぇ。
いやうん、そもそも騎士団長だしな。
慕われてて、なおかつ指揮できる奴が性格悪いわけ無いか。
「その、ドリーズさん、苦手な事は誰にでもあるから。
ほら、私に言ってくれたら資料用意するから」
「うぅ、儂の絵、そんなに下手かのぅ……」
「そもそも、今まで字を学んでたわけでも無いし
ましてや絵を描いたわけじゃ無いんだ」
「書いてたのじゃぞ? 部下にも見せてた事がある。
皆、上手だと言ってくれてたのじゃが……」
「ドラゴン視点なら理解できてたんだよ。
つまりだ、ドラゴン的には満点な絵だったんだ。
でもほら、俺達は人間だからな。
ちょーっとドラゴンの美醜感覚とか?
絵の上手とか下手とかとズレてただけだって。
だからよ、苦手な事をわざわざしなくてもな
ジュリアが居るんだし、任せりゃ良いんだよ」
「そ、そうかのぅ、気を使われておったんじゃ」
「どっちにせよ、部下が指示通りに動いてたんなら
理解してたって事だし、気にしなくても良いだろ?
部下に聞いたって、はいそうですって答える訳ねぇしな。
お前の事慕ってるのに、貶し的な事は言わないだろう。
だから、気にすることはねぇさ」
「しかし、儂的には努力したいというか」
「そんな余裕無いだろ? それにこう言う絵ってのは
愛嬌にもなるだろうから、一概に弱点とは言えねぇ。
部下が何も言ってねぇなら、多分部下も気に入ってる。
こう言うのがスゲー得意な仲間が居るなら
その仲間に頼るってのもまた大事だと思うぜ?」
「そ、そうじゃな、うむ! その通りじゃ!」
ふぅ、少しだけドリーズが立ち直った。
俺も良くあんな言葉が思い付いたな。
実際絵心ってのはそう簡単には付かねぇだろう。
絵心や纏める能力は相当高いジュリアが要るんだし
ジュリアに書いて貰った方が分かりやすいだろう。
ジュリアは理解力もあるから、絶対に分かりやすい
丁寧な資料作ってくれるだろうしな。
「じゃあ、なんだ? 情報共有は後か?」
「いえ、まずは口頭で教えて貰いましょう。
そして、ジュリアに資料を纏めて貰って
その後、正式に資料を通しての情報共有と
立ち回りを考える方が有意義でしょうしね。
全騎士団長が集まるのは手間ですし
この機会を無下にするのもよくありませんしね」
「その通りだな、まずは我々の耳に情報を入れて
後日、立ち回りの話し合いをした方が良い。
情報があると無いとでは、その後の立ち回りが変わる」
「俺もそれで賛成だ、時間は有限だからな」
「だね」
「その通りですわね」
「う、うむ……ではまぁ、一応この紙を」
「いや、そ、それは」
「儂の絵、そんなに下手かのぅ……
かなり上手に書けたと思うのじゃが」
「絵というか、字ね、字。読めないわ」
「後、1枚しか無いから不便だと思う」
「う-」
「ふ、普段と違って可愛い……」
ジュリアが少しだけドリーズのギャップを見て
頬を赤らめて見せた。
ジュリア、可愛いの好きだからなぁ。
そして、頬を赤らめてるのはジュリアだけじゃ無く
イリスも同じだった。
あの子もきっと可愛いのが好きなのだろう。
だが、ドリーズは気付いてる様子はなかった。
自分の絵と睨めっこして、
ちょっと悔しそうな表情を見せる。
結構あの絵に自信があったのかも知れない。
「はぁ、悔んでも仕方ないか、情報を話そう」
「あぁ、そうしてくれるとありがたい」
「ジュリア、頼んだぞ?」
「は! う、うん! 勿論だよマグナさん!」
そう言って、ジュリアがメモ帳を取り出した。
いつも携帯してるんだな、あのメモ帳。
まぁ、研究者だし当然かも知れない。




