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見えてきた1つの夢

あの会議後の10日間が過ぎた。

最終確認をするために

再び騎士達が集まる日だ。

集合時間は今日の午後6時だそう。

時間が若干微妙なのは他国の移動時間だ。

そりゃ、ギリギリまで準備したいだろうしな。


で、俺達はその会議の前に

デイズの鍛冶屋へ向った。


「待ってたよ、フェイト」


やりきったという表情を見せるデイズが

フェイトを歓迎した。

デイズの服は埃まみれであり

思いっきり出てる肌まで埃まみれ。

顔にも埃が残ってるし。

ちょっと前まで作業してたんだな。


「出来たの? 10日で?

 埃まみれだけど」

「あぁ、何とかギリギリね。

 完了したのは30分前だよー」

「ふむ、もしや僅か10日で

 儂の素材を利用したのか?」

「うん、何とか出来たよ」

「ほほぅ」


その言葉を聞いたドリーズが笑顔を見せる。

そして、デイズが持ってきたフェイトの武器。


「今回、ドリーズさんの素材を使って

 補強したのは、フェイトの剣だけだよ。

 流石に短刀とかの他の武器には出来なかった。

 でも、ちゃんと補強は出来てるよ」

「ありがとう!」


まずはフェイトの相棒である弓を渡される。

フェイトは少し嬉しそうに弦を鳴らした。

その後、デイズに案内されて軽く的当てをこなした。


フェイトが放った矢は全てど真ん中だ。

2発は真ん中ではあるが、少しズレてたが

3発目からは全てドンピシャのど真ん中を撃ってた。

何なら、1度撃って刺さった矢に再び当てるという

中々常人離れした事もやったしな。


「うし、こんな感じね、少し矢の速度が上がったわね」

「あぁ、調整したんだ」

「ありがとう、で、これは短刀」

「うん、フェイトはよく投げてるみたいだからね

 だから、先端の切れ味を特に強化しておいたよー」

「よく分かるわね、そんな事」

「私は鍛冶屋だからね、癖は分かるよ-

 さ、投げてみて?」

「えぇ」


流石に投げる練習をしてたからか

フェイトは渡された10本の短刀を

流れるように投げて、的の10点から

1点までを全て流れるように当てた。

かなり短い間に、1から順番に上げて

真ん中に2本同時に投げて見事命中だ。


「ひゅー、さっすがー!」

「ま、練習してたしね」


あの会議の後は剣術の練習ばかりだったが

普段はやっぱり投擲の練習もしてるんだな。

そりゃフェイトだし、妥協はしねぇだろう。

だが、10日の間は時間もあまり無かったから

剣術に集中してたって事だろう。

魔法の練習もやってなかったしな。

出来るか分からない事よりも

確実に為になることに集中したって事か。


「普段よりも深く入ってる」

「まぁねー、フェイトの依頼に集中出来たからさー

 お金がしっかり貰えたから

 シャナさんが持ってきた

 武器量産の依頼を断れたんだー」 

「い、依頼断わったのね……

 てか、シャナさんの依頼断わったの?」

「うん、しっかりとお金貰ってるからね。

 シャナさんもフェイトの事を話したら

 それなら仕方ないって応援してくれたんだよー」

「腕が良いのに、勿体ない。

 てか、あんたは拘りすぎて赤字でしょ?」

「う、うん……」


はぁ、やっぱり職人肌過ぎてやり過ぎるんだな。

だが、それはまぁ、デイズを見てたら分かる。


「で、でもほら! 依頼はあるから!」

「妥協で受入れてる奴でしょ?」

「う、うん……本来、私は拘りたいタイプだけど

 納期期間がある武器の大量製作系の依頼は

 拘れないから、あまり好きじゃないんだけどねー

 でも、生活が掛かってるから仕方なく……」

「拘りすぎは良くないわよ?

 いや、妥協してもかなり評判良いけどさ

 まぁ、私が言えた立場じゃないけど

 多分、私も拘るだろうし」


フェイトも相当拘るタイプだろうしなぁ。


「ならばマグナに庇護して貰い金銭を貰い

 フェイト用に武具を作ればよかろう。

 儂の鱗と爪を加工できるならば

 その技量は本物じゃろうしな。

 じゃがそれはよい、早う見せよ」

「そ、そうだね、じゃあ自信作だよ!」


そう言って、ようやく本命の剣が出て来た。

フェイトがその剣を見て、息を呑んだ。


パッと見た感じ、フェイトが普段使ってた

剣とは何も変わってない。

そりゃ、鞘とかはそのままだし

手持ちも加工はしてないだろうしな。


「フェイト、改めてお礼を言わせて欲しいんだ。

 未熟だった私が初めて作ったこの剣を

 ここまで大事に使ってくれて」

「そりゃ、あなたが作ってくれた剣だもの。

 そんなの大事にするのは当然よ」

「お陰で自信も付いて、こうやって夢も1つ叶えられた。

 そして今、フェイトのお陰でより一層

 私は自分が誇らしくなった。

 さ、引き抜いてみて、今の私に出来る

 最大級の努力の結晶だよ」

「えぇ!」


そして、少しだけ喜びを見せながら

その剣を受け取り、ゆっくりと鞘をから引き抜く。


「こ、これが……」

「うん、今の私の最高傑作。

 まだ私が思う最高の剣には至ってないけど

 今の私が出来る最高の剣だと思うよー」


鏡の様に磨き抜かれた刀身に

僅かに赤い色が残ってる。

これが恐らくドリーズの鱗なのだろう。

爪の部分はこの付近に使ったのか

刀身に使ったのかは分からないが

明らかに切れ味が凄そうってのが分かる。


「か、格好いい……」

「おぉ、じ、実に見事じゃ!

 ここまで儂の鱗を活用するとはのぅ。

 僅か1枚で上手くやった物じゃな!」

「ドラゴンの鱗と爪は加工が難しかったけど

 何とかあの剣に合わせることが出来たよ」

「試しに何かを切ってみても良い?」

「うん、試し切りの案山子はここだよ」

「よし……行くわよ!」


嬉しさの影響か剣が少し震えてるな。

だが、小さく深呼吸すると震えは止まり

フェイトは案山子を斬り付ける。


「お、おぉ!」


あの剣で斬り付けられた案山子が

あっさりと袈裟斬りが入っていき

両断されて形を崩した。

相手が人間でもこうなるのかもしれねぇな。


「ここまであっさりと斬れたのは初めて…」

「へへ、どう?」

「あ、ありがとう! デイズ! 最高の武器よ!」

「いや、さっきも言ったけど

 まだ私が考えた最高の武器じゃないんだ。

 でも、私が考えた最高の武器に

 その剣が必要なのは間違いない。

 私が最高の武器のイメージを固めたら

 その剣をまた強くさせて欲しいんだ」

「ま、まだ最高の武器じゃないの?

 こ、これ以上の切れ味を目指すの?」

「うん! もっと凄い武器を作りたい!

 世界最高の武器を作るのが私の夢だから!

 その夢を、この武器で達成したい!

 私が初めて作って、初めて大事な人に送った

 思い出の武器で!」

「デイズ……」

「大事に使ってくれてありがとう。

 だから、私も覚悟が出来たんだ。

 夢を叶える為の最高の武器を作る覚悟がね!」

「……じゃあ、その時が来たら、お願い! デイズ!

 あなたの考えた最高の武器を! 私に頂戴!」

「うん! 任せて!」


薄らと笑ってることが多い印象を覚えてたデイズだが

今回の笑みは満面の笑みだった。

まさに笑顔の中でも最高レベルの笑顔。

心の底から笑ってるのが分かった。

それはフェイトも同じだった。

とても力強い笑顔を見せている。

信頼の笑みという奴だな。


「ならば、いよいよもって

 マグナの庇護下におった方が良いのではないか?」

「そりゃデイズ次第って奴だ。

 俺は構わねぇが、この子が嫌なら

 俺は決して無理強いはしねぇからな。


 だが、デイズが良いって言うなら

 俺は全力で支援してデイズの夢を応援するぜ」

「え? でも……良いの? お金も貰ってるのに」

「あぁ、前も言ったが金は腐るほどあるからな。

 どうせ、俺は金を腐らすことしか出来ねぇだろう。

 それなら、お前らの夢を叶える為に使う方が良い!

 デイズの夢、世界最高の武器も見て見たいしな!」

「……じゃ、じゃあ、その、お願いしても良いかな?」

「あぁ! 任せな!」


デイズは俺の言葉を聞いて、少し嬉しそうに笑いながら

ドリーズの意見を受入れた。


「やったわ! デイズちゃんがハーレムに入ったわ!」

「いや、ハーレムって訳じゃ無いような気もするけど」

「それじゃデイズ、俺の家で自由にしてくれ」

「え? い、家に住まわせてくれるの?」

「あぁ、自由に過ごしてくれても構わねぇ。

 料理はミントが作ってくれるだろう」

「えぇ! 料理は任せて! 私は料理に自信しか無いわ!」

「さて、デイズが過ごすってなるわけだし

 家に鍛冶が出来る場所でも作るかな」

「あんたもノリノリね、滅茶苦茶楽しそうだし」

「あぁ! 熱い友情も見せて貰ったしな!

 あれでテンション上がらねぇ奴は居ねぇよ!

 それじゃ着いて来てくれ、案内する」

「う、うん、お世話になるよ、マグナさん」


デイズが家で過ごしようになって嬉しいな!

可愛いからな、この子も!

いやぁ、フェイトの友達は良い子が多いぜ!


「ほえぇ、デカいなぁ……何人居るの?」

「俺、シルフ、フェイト、

 ドリーズ、ミント、ジュリアの6人だな」

「す、少ないね……男なのに意外だ」

「マグナは気に入った奴しか集めないみたいでね。

 性欲お化けじゃないから、襲われることは無いわ。

 現に私達、誰も襲われてないわけだし」

「私は襲って欲しいんだけど襲ってくれないの!」

「ミントはスルーしてね」

「うん、はは、ミントは相変わらず楽しいねぇ」


3人の会話ややり取りを見てると

本当に仲が良いんだなってのが分かるな。

そりゃ友達だしな、一緒なら楽しいだろ。


「じゃ、遠慮しないでここに来てくれても良いぜ。

 あ、店でも構わないし、好きにしてくれても良い。

 それとこう言う部屋が欲しいって言うのがあれば

 俺に言ってくれれば用意するからな」

「そこまでしてくれるんだ……」

「えぇ、マジで全部してくれるからね。

 訓練場の設備滅茶苦茶充実してるしこの家。

 お願いしたらあっさりと用意してくれるし」

「あぁ、金はあるからな」

「……じゃ、じゃあ、そ、その、マグナさん。

 あ、あたし大きな書斎というか

 本を沢山用意できる部屋がほし……

 い、いや、何言ってるんだろ、あたし

 部外者なのに」

「部外者なんて寂しい事言うなよ!

 一緒にやって来た仲だろ?

 書斎だな! 任せとけ!」

「え!? 良いの!?」

「おう! いくらでも用意してやるぜ!」

「や、やった!」

「じゃ、じゃあ、鍛冶場とか」

「勿論だ! 用意してやるぜ!」

「お、おぉ……い、至れり尽くせりだ…」


女の子がやりたいことを全力で応援するのだ!

そりゃな、金はいくらでもあるからな。

これを無駄にするのは勿体ないって奴だぜ!

どうせ、俺が持っててもマジで宝の持ち腐れだ。

俺の夢は大して金が要らねぇからな。

だから、この金は俺が気に入った女の子の為に使う!


「で、ではマグナ、儂に」

「んー?」

「……いや、な、何でも無いのじゃ」


少しあれな事を言いそうだったが言わなかったな。

流石にこの状況で下手な事は言えねぇと思ったんだろう。


「じゃあ、資料か? 書類か? ちょっと用意するか」

「そうね」

「あ、そうだ、手伝ってくれるか?

 俺はそう言うのも苦手だからなぁ」

「はぁ、格好付けるけどそこは駄目なのね。

 まぁ良いわ、手伝う。どんなのが良いか

 しっかりと話をしてね、

 ジュリアちゃんにも協力して貰って

 5時までには申請書とかを用意するから」

「うん、分かった」

「おぉ……な、何だか驚きだぁ」


そして、5時までに何とか申請書を完成させた。

うし、これで会議に行って、会議が終わった後に

申請しておこう。ふふ、楽しみだぜ!

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