久々の買い物
作戦会議後、俺達はバスロミアの探索をする。
理由はシンプル、フェイトの買い物付き添いだ。
「何で一緒に来るのよ、目立つから嫌なんだけど?」
「良いじゃないの~久しぶりだし!」
「そうじゃそうじゃ、共にある事は珍しかろう?
こう言う経験も、また糧になるのじゃ」
「あぁ、普段何処で買い物してるのかも興味あるしよ」
「ん、買い物手伝う」
「ご、ごめんねフェイトさん
あたしが興味持った結果、皆興味持っちゃって」
「まぁ良いけどね」
ちょっとだけ呆れながら、フェイトが歩きだす。
今回は何を買うつもりなんだろうな。
「で? 今日は何買うんだ?」
「晩ご飯のお買い物かしら」
「そう言うのじゃないわよ、武器」
迷う素振りもなく、フェイトは真っ直ぐ歩いてるな。
つまりは常連の武器屋さんがあるのだろう。
やっぱり鍛冶屋も女の子なのか?
いやぁ、黒い埃で鼻先とか汚れてる女の子が
何かテレ顔で鼻の下辺りを手袋で拭うのは
中々可愛らしいという雰囲気を感じるぜ!
まぁ、実物をまだ見たわけじゃねぇがな、想像だし。
「武器? フェイトさん沢山武器があるのに
更に武器が居るの?」
「そりゃね、私もそりゃ手入れくらいは出来るわ。
武器の消耗とかをチェックしたりしてね。
でも残念な事に、私の技量じゃ消耗するのよ。
そりゃ、私の武器が宝剣とか神剣とか?
そんな滅茶苦茶凄い伝説の武器なら良いわよ?
でもね、そんな物はないのよ、私。
シャナさんじゃないし」
「お? シャナは持ってるのか!?
そんなかっこよさそうな武器を!」
「えぇ、ほぼ使わないけどね」
「ほぅ、珍しい物を持っておるのじゃな」
そんな家宝とか宝具とか?
伝説の武器ってのはやっぱり面白いよな!
男としては胸躍るって奴だぜ!
探索の末に手に入れた最強の剣も良いし
親が代々大事にしてる武器が滅茶苦茶強い武器で
何かの拍子で触ったら光って戦えるのもまた良い。
「……ねぇ、ドリーズ、知ってたりする?
そう言う宝具的な感じの滅茶苦茶凄い武器」
「知っておるぞ、無論じゃろう? 面白いからのぅ」
「ど、何処にあるとか……」
「それを聞いては面白く無かろう?
そう言うのは己の手で探り当ててこそじゃ。
誰かに伝えられて手に取るのでは面白味に欠けよう?」
「あぁ、俺も激しく同意って奴だぜ! 冒険最高だろ!」
「何処かに宝の地図とかあるんじゃないかしら」
「あれば良いんだけどね……」
だが、そう言う宝の地図を見つけるのもまた冒険。
今はそれ所じゃねぇが、やっぱり探したいよな、それ。
「ドリーズさんはそう言うのOKなの?
強い武器で強くなるってのは」
「無論、探索の末に得た戦利品であるならば
儂はその武器に対し、文句は言わぬよ。
そもそも、付属品で強さは大きく変わらぬよ。
そう言う付属品は総じて持ち手の強さを引き出すのみ。
その武器に莫大な能力があることはほぼないのじゃ」
「え? そうなんだ……てか、何処まで知ってんの?」
「儂は暇な時は努力と勉強をしておるからな。
特殊な武器についてはある程度しっておる。
そうじゃな、特殊な武器には宝具と魔具があるのじゃ。
宝具は人の力で生み出された武器であり
武器を作り出した者の魂が宿っておる。
魔具は魔物等が生まれ出でたときに持っていた武器であり
ある意味、その魔物の一部と言える武器じゃ。
ゴブリンなどが持つ武器が良い例じゃな」
あー、そう言えば小さいのは剣持ってたな。
あれがどうなってたか興味は無かったが
言われてみれば消えてたような気もする。
だが、俺が受けたとき、折れてたけどなぁ
「殆どの場合は持ち主の死後、少しして消えるのじゃが
長い時を持ち主と共にあったが故に
強大な力を得て、持ち主が死した後も
魔力に分解されずに残る場合があるのじゃ。
それが魔具、魔物の力を一部振るえる武器であり
この武器で強くなってると勘違いしておる者は
あまり好かぬのぅ」
「種類があるのは知らなかったわね……」
「ふむふむ、魔物は魔力で構成されてて
その魔力が分離した後も残る場合があると。
凄い、ドリーズさんと話をしてると
色々と知らないことが出てくる」
「じゃあよ、ドラゴンの素材とかはどうなるんだ?」
「うむ、その場合は宝具に類すると言えよう。
儂らドラゴンの亡骸は死後残るが
殆どの場合は加工など出来ぬからな。
儂らの素材を加工し、武具に仕立てる技量を持つ
天才などがおるのであれば、文句は言わぬよ。
むしろ、称賛するじゃろう」
「あんたの爪とか貰って試したり……」
「儂の小さな爪をどれ程集める気じゃ。
儂の爪はドラゴン随一なのは当然じゃが
大きさは全然じゃぞ? 見れば分かろう」
「そ、そうよね」
ちょっとだけ自嘲の笑みを浮かべながら
フェイトが頭をかいて、テレた顔を見せた。
「なんじゃ、そんなに強力な武器が欲しいのか? 主は」
「そ、そりゃね、少しでも強くなりたいし。
そう言う宝具って欲しいなーって思ってるのよ。
冒険者してるけど、まだ見付かったことないし」
「甘えるでない、宝具や魔具などの武器は
修練の末に得る事が出来る得物じゃ
持ち主の強さに対する称号のような物。
安易に得たところで意味は無かろう。
特に主の様な性格であれば
どれ程立派な得物を得たところで
強いのは武器であり、自分ではないと思い
劣等感の様な物を感じるじゃろ?」
「そうよね、フェイトちゃん自己肯定感低いし」
「ひ、低い……かしら」
「俺もそう思うな、何か」
だが、フェイトはそれでも折れねぇからな。
自己肯定感はいくらか低いような気がするが
ありゃ、どっちかというと目標が高過ぎて
自分じゃまだまだって理解してるからだしな。
「ま、お前の良いところなのは間違いねぇさ。
腐ることねぇしな、フェイトは。
てか、目標が高過ぎるだけな気もするしよ」
「そうねぇ……まぁ、妥協する気は無いわ。
絶対にいつか、あんたを越えてやるわ」
「勇気と無謀は違うのじゃ、それは諦めよ」
「そこは応援しなさいよ!」
「無理無理、マグナは無理じゃマグナは
精々儂レベルで我慢せい、マグナは無理じゃ。
この儂が言うのじゃ、大人しく受入れよ」
「じ、実際ドリーズさんが無理って言うのは……
そ、そうだよね、うん、何だか分かる…」
まぁうん、ドリーズは向上心の塊だからな。
そのドリーズが諦めろって言うレベルって事は
そりゃ、どう足掻いても無理だって事だろう。
「マグナ様は最強だからいくらフェイトちゃんでも
やっぱり無理よねぇ」
「ん、にーには最強、諦めて?」
「全員から全力で無理と言われてしまった……
いや、そりゃ私も無理だろうなとは思うけど。
せ、せめて善戦できるくらいにはなりたいわ。
ちょっとだけかすり傷程度でも」
「無理じゃろ、それも無理じゃ
主が命を投げ捨てても無理じゃ」
「そこまで言う!? そりゃ武器の方が
あっさりと折れるだろうけど!」
「武器に頼る地点で無理じゃよ? 正直言うのじゃが
この世界で最も鋭利な得物は儂の牙じゃからな」
「その自信は何よ……あんたより強い奴居るかもでしょ」
「くく! その様な者が
シルフ、マグナの他におるのであれば
是非見て見たいのじゃ! あ、そう言えばマグナ」
「ん?」
「爪はどうしておるんじゃ? 伸びよう人じゃし」
「いきなり冷静になるの!? いや確かにさ!
私も何か気になったのはそうだけど!」
そこ気になるんだなぁと思ったな。
いやそうか、そうだよな、気になるよなうん。
俺は全身鋼以上に硬いからな。
その俺の一部であろう爪がどうなるか興味あるか。
「まぁ実際はそんなスゲー事でもねぇぞ?
全力で殴ったらどっか行くだけだから」
「攻撃する度に、あんた爪剥げてるの!?」
「いや、根元からじゃ無くてだな。
ほれ、先端の白いところだけポーンと。
だからほら、俺は爪短いぜ? 白い所飛んでくから」
「わ、分からぬ、儂も爪を飛ばすことはあるが
攻撃時に飛んでいくことはないのじゃ。
攻撃しようと思ったら飛んでいくが」
「え? そ、それもおかしくないかな……」
「爪って飛んでいくのね!」
「飛ぶわけ無いでしょ! 普通は!」
「勘違いするでないぞ? 儂の場合は
鍛錬の末に辿り着いた技術なのじゃ」
「どう言う技術よ!」
「うむ、儂ら竜人種はドラゴンと同じ様に
炎を吐くことが出来るのじゃが
これは体内で魔力を爆発させ続け
体の外に放出することで放っておるのじゃ。
儂の場合はこの炎のエネルギーを爪先に集め
一気に放出することで、爪を射出する形で」
「どうしてそう言う発想になったの!?」
「伸びていく爪が邪魔じゃったからじゃな。
攻撃に使えれば便利じゃなーと思って」
「短絡的ね……」
そんな方法で爪が飛んでたんだな。
じゃあ、爪をぶっ放してるときは
掌が厚くなってる可能性があるのかぁ。
「つ、つまり魔法に近い性質……
も、もしかして火属性魔法使いなら!」
「やる気を出したような表情見せるな!
やるべき事じゃないわよ!? コスパ最悪よ!?」
「即座に爪を生やせるなら良い攻撃じゃな」
「人間はそんな便利じゃないっての!」
本当、フェイトはツッコミ気質だなぁ、よく分かる。
周りが天然でボケてるからフェイト大変そうだ。
……そりゃ、俺もだけどな?
「あー、その元気そうな声はフェイト?
あんた怒鳴る相手、ミント以外に出来たんだ」
「うぇ!? デイズ!? 何でここに!」
「デイズ?」
「うぉ! お、男の人が居る……
ついに身を固める気になったかぁ、おめでとう」
「違うから! 何で皆そう言う態度なのよ!」
「え? そりゃ、男嫌いのフェイトが
男と一緒ってそう言う事でしょ?
あ、一応自己紹介、私はデイズ。
デイズ・ジャックボーン。
フェイトの友達で鍛冶屋をやってるんだ」
「じゃあ、こいつが」
「えぇ、私とミントの……まぁ、友達よ」
「よろしくー」
薄らと笑いながら、彼女はこちらに手を振った。
手にはもこもこ手袋が付いてる。
髪の毛は赤いショートヘアーだな。
服はオーバーオールで、埃だらけの
白いTシャツを着てる形に見える。
鍛冶屋なのにTシャツも半袖程度だ。
だが、手はもこもこの茶色い手袋。
おっぱいは正直、無い。
雰囲気として活発なのが予想出来る。
正直、この子可愛いと俺は思った。




