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情報共有

「では、会議を始めよう」


全員が真剣な表情になったのを見て

ドリーズが口を開いた。


「まずは儂が部下を用いて集めた情報じゃ」

「部下ってのは……やっぱりドラゴンか?」

「うむ、まだ疑うか? 小娘共」

「いや、今更疑いはしねぇよ」


小娘という挑発に対して騎士団長達は

少し反応はしたが、何も言わなかった。

実際、こんな小さい奴に小娘呼ばわりは

やはり騎士達の上に立つ騎士団長には

癪に障るが、ドリーズの強さは筋金入り

それを理解してるからか、何も言わなかった。


「では、話を続けるぞ。

 まずゴブリン共が根城にしておるのは

 ここから南下した地区、そうじゃなぁ

 人間が名付けた名称では、

 死現の森じゃな。

 随分と大層な名を付けたとは思うが

 ま、人間がこの森に迷い込めばほぼ死ぬ。

 そう考えれば、ま、丁度良い名じゃろう」


死現の森は俺はしばらくシルフと過ごした場所だ。

放浪してるときにこの森で過した事がある。

確かに少し強い魔物が多かったな。


「この場所の詳細は知られてないが…」

「え? そうなの? 何でだよ」

「この森に入った奴はほぼ死んでるんだ。

 生き残った奴も逃げ帰ってきた奴ばかりで」

「そうなの? 私はここに行った」

「な!? 死現の森に行ったのか!? お前ら!」

「あぁ、迷って苦労したぜ」

「ど、どうやって抜け出したんだ?

 死現の森は危険な魔物も異常に多い上に

 入れば抜け出せないと言われるくらいには複雑な」

「シンプルだな、飽きて殴って真っ直ぐ歩いた」

「は、はぁ?」


俺達はこの森で迷った時、面倒くさくなって

目の前の森をぶん殴って木々を粉砕しまくり

自分で道を作って脱出したからな。


「……も、もしかして、見えない大蛇が現われ

 死現の森をなぎ倒したという噂は……」

「はぁ? 大蛇? 見えないゴブリンは知ってるが

 見えない蛇は知らねぇな」

「……そうかぁ、ラングレーで話題になった

 怪奇現象の原因この人かぁ」

「しばらく臨戦態勢になってましたわね

 私達ギルフェリーも……」

「何だ、悪い事したな」


いやぁ、あの気まぐれの結果迷惑掛けちまったな。


「しかし、そこに居たって事は……不運ですわ」

「そうだね、運が悪いや……」

「何が?」

「いえ、あなたがその後、西側に進んでたら

 私達ギルフェリー国に来たと言うのに……」

「私達の場合は東だね、うん」

「で、死現の森から北側に歩めば

 バスロミアに向う形になるが

 距離は結構あるかな」

「ほーん、じゃ北に来たって事か」

「適当に歩いてただけだからよく分からねぇな」

「なら、どうやってバスロミアに?」

「フェイトに出会って案内して貰ったんだ」

「そうね、あんたの話を聞いてると

 マジで奇跡だったんだなと思うわ」


実際、かなり確率低いよな、あの状況で出会うの。


「まぁ、あの時はその見えない蛇とやらに

 興味あって現場に向ってたから

 遭遇できたって言うのもあるけど」


へぇ、あの適当な行動で結果出会えたのか。

いやぁ、何が良い結果になるか分からねぇな。


「臆病風に吹かれなければ…」

「失敗したなぁ」

「おいおい、ぼやくな。

 話し合いの最中だろ?

 のんきな話ししてる場合じゃねぇだろ」

「そ、そうだね」


やっぱり俺の話題に逸れやすいのかもな。

まぁ分からないでも無い、俺はスゲーからな!

俺が所属した国は大体安定って奴だ!


「うむ、では話を戻そう。

 儂の部下の話ではマグナがこじ開けた

 その蛇の道とやらを使ってゴブリンがでておる」

「原因あんたじゃないの! マグナぁ!」

「マジで!? やっちまったぁ!」

「悔むなマグナよ、ファインプレーじゃぞ?

 その道があったから、攻撃を受けたのは

 バスロミア、シャンデルナ、ビスティックの

 三ヶ国だけで済んだのじゃからな。

 正直言うが、ギルフェリーとラングレーに

 ゴブリン共が攻めてきたら確実に滅んでおる」

「それは聞き捨てありませんわ!」

「そうだよ、私達を馬鹿に」

「シャンデルナの被害は数十人。

 バスロミアの被害は0人

 じゃが、ビスティックの被害は数千人」

「……」

「何故か分かるか? うむ、儂らがおったからじゃ。

 バスロミアとシャンデルナの被害が少ないのは

 儂らがその場におり、儂の部下が守護しておったから。

 ビスティックの被害が甚大なのは儂らが遅れたからじゃ」

「……悔しいが、その通りだ」

「軍事国家のビスティック国でこの被害。

 うぬらギルフェリーとラングレーに

 こやつらに対処出来る戦力があるか?

 ビスティック国でさえ、儂らが来なければ滅んでおる」

「……」


ビスティック国が軍事国家なのは分かってるからだろう。

そんな国でさえ、俺達が来なければ滅ぼされてた。

同時に俺達が参戦してた国での被害はほぼ皆無。

この地点で俺達がいなければ滅んでたという説得力がある。


「マグナが道を作って無ければ当然ゴブリン共は

 主らの国に侵攻しておったじゃろう、近いしのぅ。

 じゃが、マグナがこの道を作ったお陰で

 攻撃を受けたのはゴブリン共に対処出来る

 三ヶ国に集中したのじゃ」

「でも、距離的にはギルフェリーとラングレーに

 ゴブリン達が行きそうだけど」

「行くわけ無かろう、死現の森は面倒な迷宮じゃ。

 ゴブリン共も抜け出すのは苦労するじゃろうし 

 非常に広い森じゃから、どの方角から出るかで

 距離はかなり変わるからのぅ」


だが、俺が道作らなかったらゴブリン共が

まだ動かなかった可能性があるって事だよな。


「マグナが少し申し訳なさそうな表情を見せたな。

 道がなければ動くのが遅くなったかもと思うたか?」

「あぁ、申し訳ねぇ気持ちになる」

「いや、むしろ好都合じゃ。この後のアンデッドの宴。

 いつ起こるか分からぬ災禍じゃ。

 ゴブリン共の侵攻が遅れておった場合

 その宴と同時発生となっておった可能性もある。


 それに、此度のゴブリンの女王は非常に頭が良い。

 ここまで姿を隠しておったほどじゃからな。

 マグナが道を作って無ければ侵攻は後とし

 兵力をより多く作っておった可能性もある。

 じゃが、マグナが道を作ったことで早く行動した。


 理由は恐らく、国を支配した後の方が

 戦力を増やすのに都合が良いと判断したからじゃ。

 今までのゴブリンの女王と違い

 手当たり次第に侵攻することも無いじゃろうし

 戦力を十全に揃えて侵攻となるじゃろう。

 

 こうなっておればどうなるか想像は容易かろう。

 人類は勝てぬよ、断言できるのじゃ。

 今の不完全な戦力でも苦戦しておる程に

 人類は軟弱で脆弱で貧弱なのじゃ。

 無論、マグナが所属しておる国だけは

 確実に助かるじゃろうがな」


ドリーズの言葉は最初から最後まで本気だと分かる。

絶対的な確信があると分かるから

確かな説得力を感じると言うね。


「ゆえに主らはマグナに感謝するのじゃ。

 マグナの気まぐれで救われたのじゃからな」

「……そうだな、感謝するぜ、マグナさん」

「私からも感謝させていただきますわ」

「私からも、ありがとうね、マグナ君」

「そんな不意に頭下げなくて良いっての

 俺の気まぐれだ、気にするこたねぇ。

 ま、俺の気まぐれで色んな女の子が救われたなら

 そりゃマジで誇らしい気分にゃなるがな」


全員、同じ様にお礼を言ってくれて嬉しいがな。

誰かに感謝されて嫌な気分になる奴は居ねぇだろ。

仮に居ても、そりゃ相当性格悪い天邪鬼だろ。


「うむ、その為、蛇の道は最高のファインプレーじゃ。

 ゴブリン共がその場所から出て来ておると言うことは

 その場所を中心にゴブリン共が増えておると言える。


 儂らドラゴンが巡回しておると考えて

 身を潜めておるからかは知らぬが

 ゴブリンの女王はまだ発見できておらぬが

 この道を中心に索敵できれば見つけやすかろう」

「でも、焼き払ったら終わるんでしょ?」

「主も全て儂らに頼る気か?」

「い、いや、そう言う訳じゃ」


ドリーズに不用意な発言をしたジーニスが

かなり冷や汗を流しながら訂正した。

そんで、冷や汗をかいてるのは

ジーニスだけでなく、シャナを除く

全ての騎士団長達と副団長達。

大して動揺してないのは

俺達とシャナとジュリア位だった。


「冷や汗を流すことは無かろう。

 大して敵意など見せておらぬぞ」

「そ、そうなんだ……威圧感凄かったけど」

「儂はすぐに強者に縋る物を嫌うのじゃ。

 努力をせぬ者は本気で嫌いなのじゃよ。

 安易に縋り、自らは何もしないというのは

 儂の逆鱗に等しき行動。


 その様な真似をするのであれば手は貸さぬ。

 本来なら滅ぼしたい気持ちにすらなるが

 マグナ達もおるし、滅ぼすことはせぬ」

「……そ、そう」


マジでドリーズの逆鱗ってのが分かるな。

成り行きで救う事は多いが

努力できる環境に居る奴が

安易に縋ってくるのは嫌ってるんだろう。


「理解してる。これは本来、

 私達だけで対処しなければならない問題だ。

 ドリーズ殿やマグナ殿の手を煩わせるのは

 騎士として、実に申し訳無い事だとは思う。

 しかしながら、協力をして貰わなければ

 我々は甚大な被害を受けてしまう」

「分かっておる、じゃから協力はする。

 じゃが、1から10の全てを

 儂らに解決させる事は決して許さぬ。

 これは練習、故に1から8は協力してやろう。

 じゃが、それ以上は協力はせぬ」

「殆どだな……」

「これ位手を貸さねば、

 主らは甚大な被害をだすじゃろう?

 アンデッドの宴もある以上

 被害はあまり出すわけにはいかぬ」


ドリーズがかなり協力的な理由はそこだろうな。

アンデッドの宴、ドラゴンからしても

かなり厄介なイベントだからな。


このイベントの為に被害は出来れば出したくない。

だから、結構協力はするが

全て何とかしろと言うなら見捨てるつもりなんだろう。


「アンデッドの宴……このゴブリンアーミーよりも」

「うむ、危険なイベントじゃ。

 ドラゴンゾンビを筆頭に厄介なアンデッドが増える。

 儂らはこのドラゴンゾンビを相手せねばならぬ。


 アンデッドの宴が始まれば

 儂らはこのゴブリンアーミー程に手は貸せぬ。

 むしろ、主らが儂らに手を貸せと言いたくなる程じゃ。

 じゃが、主らには期待はしておらぬ。

 その時が来れば、マグナ達に協力して貰う」

「あぁ、協力は惜しまねぇぜ」

「じゃから、主らは主らで雑魚アンデットを

 被害を出さないように倒す必要があるのじゃ。

 その為にこのゴブリンアーミーは良い練習となる。

 甘えることは決して許さぬぞ」


人類の為って言うのが大きいんだろうな。

ドリーズは本来、人類に手を貸す義理は無い。

だが、特別に協力してくれてるって訳だし。


「じゃから、立ち回りを考えねばならぬ。

 有事の際、うぬらがどう動くかは必要な情報じゃ。

 決行日の決定や攻撃に割く戦力を示し合わせよ。

 どの方向からどれ程の戦力で攻撃をするか。

 当然、ラングレー、ギルフェリーは

 より慎重になる必要がある。


 バスロミア、シャンデルナ、ビスティックは

 合流した後に攻める、主力部隊じゃからな。

 挟撃を掛けるラングレー、ギルフェリーは

 しっかりと話し合い、戦力を決定する必要がある」

「分かってるよ、うん」

「私達の国は死現の森に近い訳ですしね。

 危険な立ち位置だというのは自覚してますわ」

「では、重要な連携の話をしようか」


戦術の決定ってのは大事だからな。

俺達がどう動くかも良く聞いておこう。

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