カラフルゴブリン達の情報
ひとまず私達で情報を纏めると。
「まずは青ゴブリンね」
青いゴブリン、非常に体格が小さいゴブリン。
移動速度が非常に高く、接近攻撃を避けるほど。
でも、攻撃を避けるときに飛び上がる癖がある。
理由は致命傷を与えるためと考えられるわね。
この時に攻撃を叩き込めば撃破が出来る。
この場面以外で攻撃が可能な道具は弓矢や銃。
弓矢を素早く放ち攻撃をすることが出来れば
状況次第ではあるが、撃破出来る可能性は高い。
確実に捉えられると確信出来る道具は銃であり
銃を使って攻撃すれば狙いが合ってさえ居れば
確実に屠る事が出来る。
ドリーズは弾丸を避けるし掴むし
当っても無傷だから効果は無いとは言え
青ゴブリン程度なら弾丸が何処かに当れば
即死は免れないと言える。
「素早い攻撃が可能な銃が必須だよね。
フレイムアローも避けてくるしかなり厄介かも」
「色付きは総じて厄介だけどね」
「でも、対処方法は分かるね、二段構えの攻撃か
弓矢による一斉射撃が効果的だって分かる。
1番は銃だけど……生産量無いし」
「そうね、弾丸も多くないし、私は後10発しか無い。
だから、二段構えの攻撃が無難と言えるわ」
シャナさんは一瞬で見抜くんでしょうね、これ。
バスロミアはもう対策完璧だったりして。
「で、次はこの赤いの」
「えぇ、赤いのは分かりやすいわね」
赤ゴブリンは結構体躯があるから目立つわ。
流石に黒ゴブリンほどに目立つことは無いけどね。
でも、戦ってみた感じだけど相手しか見て無いように思える。
つまりは眼前の相手にしか興味が無いという形。
多分、不意打ちが効果的だと思うわ。
攻撃力はかなり高いし、掴まったらほぼ即死ね。
でも、殴ってくるばかりだから、頭は悪いでしょう。
自らの強みを生かせてないから、比較的弱い部類ね。
弱点も他のゴブリンと大差無いし、フレイムアローでも
十分撃破出来る程度の相手と言えるわ。
「うん、現に赤ゴブリンは不意を突かれたとき以外は
大して脅威とは感じ無かったけど、門に近付かれたら」
「えぇ、多分一発で門が吹き飛ぶわね。
脅威度は低いけど、殲滅優先度は上ね」
「でも、1番危険なのは」
「えぇ、白ゴブリンね」
白ゴブリンは基本的にドラゴンが対処してくれてるけど
巨大な岩の投石など、並の兵士じゃ手も足も出ない。
だけど、恐らく巨岩はジュリアちゃんなら
何とか迎撃出来る程度の大きさだからね。
黒ゴブリンを吹き飛ばした上位魔法であれば
飛んで来た岩を攻撃して対処は出来る筈。
撃破方法は不明、ドリーズがいつも仕留めてるから
急所が何処かにあるのかすら分からない。
「本来、1番危険な相手……ドリーズや
ドラゴンたちが対処してくれてなければ
国は簡単に支配されると言えるくらいには脅威」
「うん、本当にドリーズさんに感謝しないと」
「あいつに言ったら、マグナに感謝しろと言うわね」
「う、うん、そうだね、マグナさん影響力凄いね」
「マグナ様は最強だから当然よ!」
「はいはい、そう興奮しない、
別に今回はマグナの話じゃ無いから
ゴブリンの対策を共有してるだけだから。
で、次は黒ゴブリン」
黒ゴブリンは現状魔法使いか私くらいしか対処方が無い。
恐らくだけど、黒ゴブリンの何処かに弱点があるの。
その弱点を破壊することが出来れば倒せるけど
破壊できないと永遠に再生されて勝ち目が無い。
剣士などの剣主体だと、足止めが限界でしょう。
剣でやるなら、大剣とかじゃ無いと意味ないでしょう。
だから、コアを一緒に破壊できる魔法か
刺さった周囲を爆破して大ダメージを与える
爆弾矢などを用いて対処しないとどうしようも無い。
もしくは危険でも槍を使ってコアを貫くか
もしくは銃を使った弾幕攻撃でコアを破壊するか。
少なくとも黒ゴブリンの少し硬い皮膚を貫き
コアと言える場所を破壊する方法が無いと
いくらでも再生されてしまうわね。
「うん、やっぱりこいつが厄介だよね」
「えぇ、高い再生能力は非常に厄介と言えるわ」
コアと思われる場所を破壊するには
面の攻撃しか無いと言えるからね。
それも、あの結構硬い皮膚を貫通するくらいの
結構な破壊力を持った面による攻撃。
そんな攻撃手段をそう簡単には用意できない。
精々、私の爆弾矢程度しか無いと言えるわ。
……魔法に物を言われてのゴリ押しだったとしても
でも、どうなのかしら、バスロミアとかなら
どう対処するのか……それを考えてみましょう。
「こいつの攻略法を考えないと不味いよね。
フェイトさんの爆弾矢も数が少ないし
魔法もこいつを倒すのに上位魔法クラスを
使わないと駄目だから、消耗が激しすぎる。
ヴォルケーノキャノンクラスはあまり撃てない。
この規模を撃てる魔法使いも私と騎士団長くらい。
シャンデルナ様もご高齢で動けないし」
「シャンデルナさんの娘さんはどうなの?」
「うん……今は居ないんだ」
「どう言う……」
「ずっと前に旅に出たんだって。
私に相応しい男を見つけに行くって言って」
「……シャンデルナさんの他の娘は?」
「シャンデルナ様は1人娘しか居ないの。
シャンデルナ様は恋した男との間に
子供を1人残したらしいんだけどね」
それ以上は作らなかったのね、不幸な。
でも、シャンデルナさんの年齢は90だっけ。
娘が居たとしても、結構な歳になってそうよね。
20に仮に子を残したとしても既に70歳。
魔法の研究ばかりしてたというのを考えると
実際はもうちょっと後だろうけど
どう考えても私達の親世代位でしょうね。
「そう言えば、魔法使いは若い子が多いけど」
「それは前に説明したとおりだね。
20を越えると魔法の体得が困難になるの。
魔法研究が実を結んで一般人へ提供が
出来るようになったのは10年前だから
どう頑張っても、最長は30歳程度なの。
それよりも年上の魔法使いは適性ランクがS以上。
でも、凝り固まった概念が存在しちゃってる影響で
あまり高火力の魔法を使えないって感じだね」
「だから、高火力の魔法を扱えるのは
あなたと騎士団長のリーデルフォンさんだけと」
「えぇ、後はシャンデルナ様ね。
ふふん、まぁ、あたしは天才だから」
……なる程ね、こりゃ確かに火力不足。
あの規模じゃ無いと攻略できないのは明白。
ジュリアちゃんのフレイムアローでも
決定打を与えてなかったわけだしね。
多分、フレイムアローは貫通してない。
背後のゴブリンも焼けてなかったから
貫通できていれば倒せるんでしょうけど。
「じゃあ、フレイムアローみたいな攻撃で
相手を貫通出来るような魔法はある?」
「うーん、連射できる魔法でなら
フレイムアローが最高火力だね。
あたしの適性は火属性魔法と回復魔法。
火属性魔法以外も一応は扱えるとは言え
流石に火力が出せるほどの魔法となると
火属性魔法くらいしか無いの」
「そう……」
ジュリアちゃんのフレイムアロー級の連射能力に
貫通能力があればどうにでもなりそうだけど。
それが望めないってなると困るわね。
「じゃあ、リーデルフォンさんは?」
「うん……騎士団長もあたしのフレイムアローほどに
高い殲滅力を持つ魔法は使えないの。
でも、騎士団長のウォーターキャノンなら」
「それは連射できるの?」
「うん、ヴォルケーノキャノンより消耗は軽い。
でも、騎士団長が得意とするのは防御魔法」
「どの規模?」
「この家を1軒マルッと覆えるくらいの広範囲よ!
これはすごい才能なの! まさに防御の極致!
シャンデルナ様も称賛するほどなの!
適性ランクはX! シャンデルナ様クラス!
騎士団長に選抜されるだけはあるわ!」
「それは凄いわね」
でも、いまいち実感が湧かないような……
シルフちゃんでも出来そうな気がするけど。
「でも多分、シルフちゃんほどじゃないんだよね。
シルフちゃんは特属性の適性がZだからね。
多分、城くらいはマルッと覆えそう」
「多分そうよね……底知れないし、あの子」
本当にあの黒ゴブリン対策もシルフちゃんが居れば
全部一撃で終わらせそう……いや、終わらせてたわね。
一瞬でゴブリンの8割以上を焼き払ってたし
いや、9割? ドリーズの見解だとそうだったわね。
当然、その中には黒ゴブリンも居たでしょうけど。
……本当に考えれば考えるほどに
あの3人のレベルが違うと実感できる。
「……」
「……」
ジュリアちゃんも同じ事を思ったのだろう。
私と同じ様にちょっと暗い表情を見せた。
同時に私は少しだけ自分が情け無くなる。
この期に及んで、マグナ達が居れば何て
ちょっとだけ甘い考えが出て来てしまったから。
「どうしたの? 話し合いは?」
「い、いや、ちょっと情け無くなって」
「う、うん……甘えてるって、実感できて」
「マグナ様が居れば全部終わっちゃうもんね!
でも、今は居ないのよねぇ、うぅ!
私も戦えたらいいのにぃー!」
「あなたもそう思うの?」
「勿論よ! 皆が頑張ってるのに
私は料理を作る事しか出来ないからね。
でも私は頑張るわ! マグナ様に喜んで貰う為に!
そして、私の料理を美味しいと言って食べてくれる
そんな人達の為に出来ることをするのよ!
私が出来ることは美味しい料理を作る事!
は! 私が兵士さん達に美味しい料理を振る舞えば!
きっと喜んでくれるに違いないわ!
そうと決れば料理を作らないと!」
「人数多いから! それに、そう言うのは騎士団長に」
「じゃあ、お話ししに行きましょう!」
「……そうだね」
でも、ミントが色々と考えてるのを見ると
あまり暗いことを考えるべきじゃ無いと思う。
出来ることを頑張れば良いのよ、私達は。
「でも、それは対策を考えてからよ。
黒ゴブリンの対策を」
「どうするの?」
「こう言うときはシャナさんならどう考えるか
それを考えれば妙案も出るってもんよ。
マグナ達の思考じゃ、絶対再現不可だけど
シャナさんの思考なら私達にも出来る筈」
「フェイトさんはそのシャナさんを凄い評価してるね。
そりゃ、あたしも名前は知ってるけど」
「シャナさんは最強の兵士よ、でも決して
マグナ達の様に強い肉体があるわけじゃ無い。
ただ極めただけの人よ、
だからシャナさんが閃く作戦なら、
きっと私達でも再現が出来るの」
シャナさんは凄いけど、ただ肉体が凄いわけじゃ無い。
生まれ持って強かった訳では無く。
ただ自らを徹底的に鍛え上げたからこそ強いんだ。
だから、私達もきっとあの領域に辿り着ける。
私が強くなってきた理由にはそれもある。
シャナさんの様に強くなりたいと言う憧れ。
「じゃあ、シャナさんならどんな作戦を?」
「そうねぇ……」
きっとバスロミアもゴブリンアーミーの被害はある。
最初に襲撃をされた際は多分対策を練るのは苦労する。
でも、兵士達の練度を考慮すれば完璧な対処になるわ。
城壁からの攻撃や前衛部隊の防衛。
……あ、そう言えばシャンデルナって。
「そう言えばシャンデルナって弓兵少なくない!?」
「うん、魔法で決着が着くからね。
仮に魔法の先制攻撃が終わった後に
戦いが始まるってなったら味方が近いから
弓兵なんて確実に仲間を撃つことになるし
弓兵の殲滅力なんて魔法の前じゃ無力だしね」
「なんで弓兵が居ないの?」
「矢なんて消耗品を使って財政に負担を掛けるより
消耗しても回復する魔法を使った方が良いじゃん」
「それよ!」
「え?」
「今回、私達が苦戦した理由!」
そう! 弓兵が居なかったのが最大の理由だ!
戦場での弓兵は地上の部隊くらいしかいなかったし
その数も妙に少ないなと、そう感じたのよ!
違和感はあまり感じ無かったけど明確にそれだ!
「弓兵を早急に用意するように進言して!」
「ど、どうして?」
「私の活躍を見て弓兵の重要性は分かったでしょ?
それに城壁の上からの矢なら黒ゴブリンを殺せる!」
「なんでそう思うの? フェイトさんの弓矢でも
別に黒ゴブリンを殺せなかったじゃ無い。
爆弾矢って例外はあったけど、そんなの量産出来ない。
複合矢も効果薄いだろうしさ」
「城壁の上からなら破壊力は十分得られるはずよ!
矢尻の重量を重くすることで威力も増すはず!
次の襲撃に対する対策はこれしか無いわ!
多分、シャナさんも同じ事を考えるはずよ!」
シャナさんは弓兵を重要視してるからね。
そりゃ、遠距離から高火力の攻撃を撃てる矢は
何処でも重要視するはずよ、このシャンデルナ以外なら。
実際、シャンデルナは魔法が強力過ぎるが故に
魔法だけで決着が着いてしまってる。
それ故に消耗品である矢を重要視してなかった。
でも、黒ゴブリンみたいな奴が相手であれば
消耗が激しい魔法を使うしか無くなり
最終的に息切れを起す。それが前回の襲撃だった。
でも、弓兵が居れば話は別と言えるわ。
黒ゴブリンの攻撃は弓兵に任せて
魔法使いは雑魚の殲滅をメインに戦って貰う。
そうすれば大分安定した戦いが出来る筈よ!
「城壁の弓兵による攻撃で黒ゴブリンを攻撃し
なんとか黒ゴブリンのコアを破壊して撃破。
魔法使い達は広範囲の殲滅をメインとして立ち回る。
城壁の上からの矢なら破壊力は十分望める。
上に打ち上げて、更に落下の力を強化すれば
より確実に攻撃出来るはずよ!」
「矢は直接狙う物って思ってたけど」
「曲射って技術よ、え? シャンデルナはやらないの?」
「うん、あたしが知ってる中ではやってないかなぁ」
やっぱり魔法がメインだったからかしら。
でも、多分昔はやってたはずだしあるにはあるでしょう。
「そうなの、じゃあ復活させましょう。
そうすれば大分デカいはず。
ミントの料理もその時一緒に伝えに行きましょう」
「そうね!」
「うん、進言してみるね、他はあるかな?」
「黄色ゴブリンとか? でも、あれは弱いからね。
デカいだけだしどうとでも対処出来るわ」
「そうだね、フレイムアローでも倒せるし
そこは重要じゃ無いか……じゃあ、待って。
すぐに資料を纏めるから!」
「うん、お願いね」
そして、ジュリアちゃんは資料を纏めて
リーデルフォンさんに渡した。
結果、私達の案で対策をすることになる。
同時に私に新しい仕事が来た。
弓兵の訓練だ、それが私の役目になった。




