フェイト達の戦い
急いでゴブリンの迎撃に参加する。
数が多いわね、まずは弓矢で牽制するわ。
どうやら、シャンデルなの基本戦術は
初動魔法で数を減らしての攻撃みたいだしね。
だから、最初は後衛として立ち回る。
「ジュリア、今回は来たのね!」
「そりゃ来るよ! ぜ、前回は」
「それは良いから、お願い!」
「任せて! あたしの魔法を見せてやる!」
ジュリアちゃんが両手に炎を纏わせた。
そして、大きく左手を振う。
「あたしの魔法は炎の魔法!
纏めて焼き払ってやる!
フレイムウィップ!」
ジュリアちゃんが両手を振うと同時に
目の前を焼き払うように炎の鞭が現われ
眼前のゴブリン達を焼き払った。
「そしてこうだ!」
今度は右手を振り上げ縦方向に焼き払う。
同時に振り上げられた手の軌道に炎が残る。
何故か残ったその炎を左手で掴む。
「フレイムアロー!」
炎を纏わせた右手を左手と合わせる。
何故か残っていた炎の形が変化し
名前通り、弓の様に変化した。
そのまま、弓矢を放つように弦の様な炎を引き
右手を離すと同時に数百本の炎の矢が放たれ
ゴブリン達を焼き払う様に展開された。
流石の私もここまで一斉に矢は放てないわ。
これが魔法か……本当に羨ましい。
「流石、じゃあいつも通り!」
ジュリアちゃんのお姉さん達が地面に手を付く。
同時にゴブリン達を縛るように蔦が地面から伸び
何百体のゴブリンを縛り上げる。
その蔦がジュリアちゃんが放った矢に当ると
一斉に燃え広がり、数百体のゴブリンが焼けた。
「ナイス! 流石姉さん達!」
「不味い!」
だけど、その攻撃をかいくぐって
3体ブルーゴブリン達が
ジュリアちゃんに向って突撃して来た。
ジュリアちゃんが放った何百発の炎の矢も
ブルーゴブリン達は全て回避し接近してる。
ある意味必然、あの炎の矢は流石に矢ほど速く無い。
「嘘!」
3体のブルーゴブリンがジュリアちゃんに攻撃するために
一斉に飛び上がった。
「侮るな!」
だけど、私は矢を3本束ね、同時に放つ。
飛び上がったことで行動を制限されてる状態で
飛んで来た矢に対処出来るはずも無く
私が放った矢は3体のブルーゴブリンの眉間を撃ち抜いた。
「ふぇ、フェイトさ」
「前向いて!」
更に抜けてきた2体のブルーゴブリンを撃ち抜いた。
私だって多少は戦えるのよ、侮らないで!
「私はマグナ達みたいに強くないから
確実にあんたを守れるって保証は無いわ!
出来れば自分の身は自分で守って!」
「う、うん!」
私の言葉の後、ジュリアちゃんは攻撃を続けた。
だけど、今度は黒いゴブリンが出てくる。
「回復してるの!?」
ジュリアちゃんの炎の矢を受けてもあの黒いゴブリンは
大して怯むこと無く近づいてきてる。
マグナやドリーズは一撃でぶっ飛ばしてたけど
本来ならあんな速度で回復する相手だったって訳!?
「だったら!」
フレイムアローでは決定打を与えられないと判断したのか
ジュリアちゃんがフレイムアローを止めて
再び両手に炎を纏われて両手を合せる。
「ボルケーノキャノン!」
ジュリアちゃんが魔法名を叫ぶと同時に
両手の炎を爆発的に肥大化して
両手を弾くような動きをすると同時に
一瞬で黒ゴブリンをぶち抜く規模の火炎が放たれた。
その火炎は黒ゴブリンを撃ち抜き焼き払う。
「はぁ、はぁ、はぁ、さ、流石にしんどい…」
恐らく上位魔法以上なんだってのが分かる。
魔力の消耗が激しいからか、ジュリアちゃんが
少しだけ辛そうに呼吸をしてる。
「でも、これで!」
「いや、また来た!」
黒いゴブリンがまた姿を見せた!
1体や2体じゃ無い、この数はあまりにも!
どうやって攻略する訳!? あの黒いの!
「ど、どうするの!? あの黒いのどうやって!」
現状、私が把握してるあの黒い奴の倒し方は
マグナやドリーズみたいに一瞬でバラすか
シルフちゃんはジュリアちゃんみたいに
圧倒的な火力で焼き払うのどちらかだけ……
でも、倒し方がきっとあるはず……
いや、あいつは再生してるのよ、再生。
……再生できないほどの損傷を与える?
「クソ、攻略法は分からないけど!
ただ1つ可能性があるのは!」
再生できないほどの損傷を与える事!
私は急いで特殊な矢を取り出した。
「喰らいなさい!」
3本の矢を黒ゴブリンに向って同時に放つ。
黒ゴブリンに矢は全て刺さったけど倒れない。
まぁ、それは分かってた事よ、本命は!
「攻撃方法は魔法以外にもあるのよ!」
糸を引くと同時に私が黒ゴブリンに突き刺した矢が
一斉に爆発し、黒ゴブリンを吹き飛ばした。
「な、何その矢!」
「爆弾を付けた矢よ、あまり数は無いけどね! 高いし!」
私が旅で買った爆弾を付属した矢だ。
矢尻の中に火薬が入ってて
矢を放ったときに糸みたいなのが付いてる。
その糸を引っ張れば矢尻の中にある火薬が起爆して
相手を吹っ飛ばせるって言う便利な矢。
射程距離は短いけど効果は絶大!
マグナに使っても刺さらないから効果無いだろうし
そもそも爆発に当ってもビクともしないでしょうね。
ドリーズにも同じ事で、そもそも刺さらない。
でも、矢が刺さる相手なら効果は抜群よ。
オーガとかの速いやつとかは
刺さっても起爆出来ないから相性悪いけど。
それに滅茶苦茶高いから
あまり使いたくないけどね。
「他にも色々あるけど、有効打はこれ位よね」
私の矢筒には特殊な矢を入れてる場所が5箇所ある。
結構高い矢筒だったけど、本当に便利よ。
爆弾矢の数は100本程度はある。
他にも毒矢、麻痺矢、複合矢、接続矢がある
毒矢はその名の通り毒、麻痺矢も同じく。
複合矢は複数の矢が引っ付いてる矢。
魔法で合わせてるって話を聞いたわ。
シャンデルナの特産品ね。
ぶっささったあと、更に矢が魔法で放たれ
1本で何発も同じ場所へ攻撃が出来る。
接続矢はぶっさした後にもう一方の矢を
地面に撃ち込むと矢が地面に深く刺さり固定して、
相手の動きを固定したり、非常事態の綱になる。
私は場合によっては1本の接続矢の糸を
自分の腰ベルトに付けて
非常時の落下防止に使う事もあるけど
今はそんな手間はやってない。
撃ち方を上手くやれば
繋がってる糸を用いての攻撃が出来るけど
最低でも2本同時打ちの技術がいるから
あまり使われてる方法じゃ無いけどね。
「黒ゴブリンの数は10体は居るけど
3本で1体やれるなら、30本で対処出来る!」
同じ様に黒ゴブリンに爆弾矢を放ち起爆する。
だけど、2度目の相手はそれでは死ななかった。
そんな馬鹿な! 最初と同じ場所に刺したはずなのに!
「さっきの奴は倒れたのにどうして!」
爆破の規模も同じ、肉体の損傷具合も同じなのに
なんで2体目は倒せてないわけ!?
こ、個体差があるの!? 分からないけど攻撃するしか無い!
「再生する前に!」
同じく3本の矢を放ち、起爆した。
今度は黒ゴブリンは吹き飛んだけど
損傷は最初と変わってない。
再生する前に攻撃をしようとしたけど
結局は再生の方が早かったわけだしね。
だから、見た目は最初と変わってないはず。
再生限界があるの? 最初と2回目で違うのは
刺した場所としか言えないけど……
「2度目は倒せた、再生限界があるのかも!?」
「いや、そんな風には見えないけど……まぁ良いや!」
そのままの勢いで黒ゴブリンを射貫いた。
そして分かったこと……個体によって
破壊する場所が違うのね!
「多分何処かに弱点がある! そこを射貫けば!」
とにかく私の担当は黒ゴブリン!
恐らく何処かにあるであろう弱点を
爆弾矢で吹っ飛ばせば倒せる!
「黒ゴブリンはフェイト殿に任せます!
兵達は通常のゴブリンを!」
「了解です!」
私か大規模な魔法を使える魔法使いしか
黒ゴブリンは対処出来ないしね!
他に魔法使いは居るんでしょうけど
私が対処出来る相手に消耗が激しいであろう
魔法使いが対処なんて燃費最悪だろうしね。
魔法使いは殲滅に当って欲しいし。
「たく! 高いんだけどね! まぁやるけど!」
そのまま黒ゴブリンに攻撃を仕掛ける。
色違いは他にも居るけど
私が集中するべき相手は黒いのだ。
「フェイトさん! 青いの!」
「な!」
不味い! 移動速度が速い青いのは兵士でも対処が!
背も低いし、私だって最悪見えないし、もう!
「クソ!」
急いで剣を引き抜いて攻撃したけど避けられた!?
早い! 私の攻撃を避けてくるなんて!
「フェイトさん!」
「ちぃ!」
回避後に仕掛けてきた攻撃を辛うじて回避
同時に銃を引き抜く!
「くたばりなさい! 青いの!」
引き金を引くと同時にデカい音が響き
青ゴブリンを吹っ飛ばすことに成功した。
私の攻撃を避けるのだというなら
避けられない攻撃をするまでよ。
矢も避けられないなら銃は絶対に避けられない!
「凄い! いや、今度は赤いのが!」
「うっそ! がふ!」
駄目だ! 不意に来た赤いゴブリンに反応が遅れた!
私は攻撃を辛うじて防いだけど
攻撃力が、攻撃力が違いすぎる!
かなりの攻撃力で私の剣は吹き飛ぶし
私自身も吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。
「あ、あぐ、うぅ……」
「だ、大丈夫ですか!」
「だ、だいじょう、ケホ! せ、背中、はぐ…」
し、死ぬところだったけど、だ、大丈夫。
さ、流石は獣人種、が、頑丈よね私も…
「急ぎ前線へ! 客人にばかり戦わせるな!」
「はい!」
「救護兵は急いでフェイトさんの治療を!
ジュリア達魔法部隊は後方へ急げ!
ジュリアは急いでフェイトさんの回復を!」
「は、はい! 騎士団長!」
「だ、大丈夫よ、わ、私はまだ戦える!」
背中が痛いけど、手元に落ちてる弓を掴む。
「しかし!」
「回復魔法だけで、じゅ、十分!」
結構しんどいけど、達がある事は出来るわ!
少しフラフラするけど、それだけよ!
とにかく攻撃しないと駄目! 私は戦える!
「私だって……役に立つのよ!」
再び弓矢を構えて攻撃を開始する。
その間にジュリアが私の治療をしてくれた。
まだ、私は戦える!




