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異質なゴブリン達

周囲を軽く警戒しながら

崩壊した国を歩くことにした。

即座に城へ行くのも良いのだが

ここは軍事国家って奴だ。

兵士の練度は相当あるってのは予想出来る。

だから、兵士達が集合してるであろう

城の方はまだ時間を掛けても大丈夫だと分かる。


だが、不意に投石喰らって

門をぶっ飛ばされたとすりゃ

ゴブリンが侵入して来るまでの間に

市民を避難させるのは困難だろう。

そりゃ、バスロミアでも相当つれぇ。

シャナがいりゃ、シャナが殿を努めて

その間に兵士に避難をさせてって感じで

十分時間は稼げるだろうがな。


「中々の被害ですね」


ゴブリンはあまり街に興味ないって聞くが

意外と色んな建物がボロボロになってる。

いんや、足跡を考えてみると

デカい奴が暴れたってのが正しいんだろうな。


しかし、あいつらはそう言う欲を抱くと思ったが

不思議なことに、死んだ兵士はそのままだった。

うつぶせで倒れてるから、前は見えねぇが

裸にもなっちゃ無いのは分かる。

あくまで鎧が破損してる程度だ。

で、鎧の破損具合いから考えて刃物じゃ無い。

要はデカいゴブリンにやられたって事だろう。


「ふむ、妙じゃな」

「何がだ?」

「見れば分かるじゃろう、亡骸じゃよ。

 お主も多少は理解しておるじゃろうが

 奴らは人のメスだろうとなんだろうと

 構わず襲い、子を孕ませようとする。

 儂らドラゴンの様に子を宿させる相手に対し

 十分な強さを求めることの無い、弱き魔物じゃ。

 そのゴブリンの襲撃があったと言うのに

 国の兵士は殺されておるだけ……明らかに異常」

「そうですね、ゴブリンに襲われた冒険者は多く

 ゴブリンに攫われ、弄ばれた部下も多い。

 ですが、この国の兵士にその痕跡は無い。

 ……これは、確かに異常事態と言える」


ゴブリンの狙いが子孫繁栄って奴なら

兵士を放置して殺すってのは確かにおかしいのか。

勢い余って殺しちまうって可能性はあるだろうが

この兵士はうつぶせで倒れてるわけだしな。

そして、手が前に伸びてる。即死じゃねぇのは分かる。

だが、ゴブリン達は彼女を放置したってわけだ。

倒れてる兵士を起こし、顔を見たが女性で確定だ。


「……」


シャナが彼女が手に持ってたであろう剣を拾う。

そして、彼女の両手を腹辺りに持っていき

鞘に戻した剣を握らせた。


「行きましょう、黙祷などをする余裕は無い。

 明らかに異常なのは明白ですが

 犠牲を出すわけにも行きません」

「兵の犠牲を抑えるのであれば城へ向うべきじゃぞ?」

「兵士というのは、守るべき物の為に戦ってるのです。

 戦う力の無い市民を守る為に剣を握った。

 ならば、私達が行なうべき事は市民の保護。

 彼女達がやりたかったことを、代わりにするべきです」

「儂はよく分からぬぞ、そう言う心意気など。

 弱者は死ぬ、戦えぬ物は滅ぶべきであり

 戦う努力すらせぬ弱者は死して当然なのじゃ。

 戦う事もせず生きてきた雑多な命など

 儂にはなんの価値すら見いだせぬ……と

 マグナに出会う前ならば、言っておったじゃろう。

 いや、未だに本心であることには変わらぬが

 雑多な命にも、多少興味が出たと言うだけの事」


ドリーズが少しだけ笑いながら空を飛んだ。


「空飛ぶのか?」

「ミントと過ごし、少しだけ雑多な命にも興味が出た。

 じゃから、儂が雑多な命を救おうとしよう。

 お主らは城へ行け、可能な限り早くな。

 儂が行ってしまえば、兵に攻撃されかねぬ」

「市民の救出は私が」

「主を抱えて飛ぶのは邪魔じゃからな。

 主はマグナと共に城へ向うのじゃ。

 今回はどうやら本格的に異常事態じゃ。

 ゴブリンの性質にさえ影響が起こるほどじゃ

 此度のゴブリンの女王はかなり特殊なのが分かる。

 

 儂の部下も殺されてしまうほどにはのぅ。

 じゃから、この国家が軍事国家としても

 今回の襲撃は楽では無いのは想像に硬くない。

 市民救出などのんきな事をしておっては

 最悪の場合は間に合わなくなってしまうかも知れぬ。

 

 じゃから、素早く移動が出来る儂が市民を救い

 確実に相手を屠れるマグナが城へ向う方が良い。

 主はこの国の長を必ず守るために城へ向うべきじゃ」

「……分かりました、ありがとうございます」

「感謝するならマグナとミントにせよ、

 気まぐれな儂を動かすほどには奴は良い女子じゃ。

 では、急げ」

「あぁ、急ぐか」

「はい」


ドリーズのアドバイスにしたがって

俺達は急いで城の方へ向って進んだ。

ドリーズは即座に飛び上がり、周囲を見渡す。

同時に家の一部がドリーズへ飛んでいく。


「ほぅ」


ドリーズは一瞬焦ったような動作をするが

即座に飛んで来た家を砕いた後に

炎を吐いて、その家を空中で焼き消す。


被害が出ないようにわざわざ燃やしたのか。

その後、何処かを向いた後、即座に姿を消す。


「まさか、ホワイトゴブリンまで防壁内に……」

「こりゃ、マジで本格的にヤバいらしいな。

 シルフ、はぐれないようにしっかりと掴まってろよ」

「ん、大丈夫」


今回は今までの襲撃の中で1番らしい。

シャンデルナの2回の襲撃と

バスロミア襲撃。

それらと比べてもここは本気度が違う。


いや、案外同じ規模の襲撃かもしれねぇな。

それらはあくまで俺達がいたから

大した被害が無いように思えただけだ。


シャンデルナの襲撃だって

最初に投石が飛んで来てたからな。

俺達が来なかったら、シャンデルナの門も

あっさり吹っ飛んでた可能性すらある。


2度目の襲撃は全然被害は無かったし

投石もあまり無かったがな。


で、バスロミアの方はドラゴンが守ってる。

本来は吹き飛んでてもゴブリンのヘイトが

邪魔をしてきてたドラゴンに向いて

被害が無かったというだけなんだろう。


それが無けりゃ、バスロミアも同じ様に

門をぶっ飛ばされて制圧されてた可能性もある。

いや、シャナが居るから制圧までには行かないが

被害は甚大だったってのは分かるな。


ここまで戦略的に戦術的に立ち回って来てる。

ゴブリンの運用も中々に順当と言えるな。

白ゴブリンを量産してるのがその最たる例。


そもそも子孫繁栄が狙いなら白ゴブリンなんて

相手を殺すだけのゴブリンは量産しねぇわな。

ドリーズも言ってたが、相当頭が良いんだろう。

本来は脳筋連中なんだろ? ゴブリン達って。

それが、今回は全然違うって言う訳か。


「こりゃ、マジで人類存続の危機だな」

「えぇ、ドリーズ殿が味方に付いてくれて

 本当に助かったとしか言えません。

 当然、あなたのお陰ですけどね」

「俺は変なのに懐かれただけさ。

 ま、あいつに好かれて良かったとは思う。

 一緒に居ると、結構楽しいからな。

 シルフとも仲良くしてくれそうだし」


まぁ、シルフに変な知識が付きそうになってるが……

てか、冷静に考えてみてもだ、今回の襲撃

ゴブリンが普段通りだったらシルフに変な知識が……

うわぁ、今更考えると、非常に危ない選択だったな。

だが、今回の襲撃は全然喜べねぇけど。


未来ある女の子達が死んじまってるんだ

運が良かった、何て思えるはずもねぇがな。


「ま、今は悠長に構えてる暇はねぇがな」

「えぇ、急ぎましょう」


ゴブリンアーミーとアンデッド祭……か。

最高に最悪なタイミングだが、ある意味幸運か?

俺が居るわけだし、ま、先の事は今は良いか。

まずはゴブリンアーミーだな、同盟出来りゃ良いが。

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