次の行動
しばらくの時間が経過した。
ある程度の鍛錬をしたり
ある程度の作戦会議をシルフとしてたが
まぁ、劇的な成長ってのは無かった。
と言っても、状況は動いた訳だがな。
「書状の用意が出来ました!」
リスティア姫が家にやって来て
書状が出来たと言うことを伝えてくれる。
俺達はその書状を受け取った。
「これがヴィステック王国用の書状か?」
「はい、まずはヴィステック王国に届けてください」
「ふむ、その後は別の国という訳か?」
「はい、ですがそちらはまだ準備中です。
ヴィステック王国とシャンデルナ共和国とは
深い付き合いなので書状はすぐに用意できましたが
他の国はそこまで深い付き合いでは無いため
書状を準備するのに苦労してまして」
「細かく想定するのは重要じゃしな。
仕方あるまい、まずは1歩を進めよう。
して、場所は何処じゃ?」
「地図はこちらに」
リスティア姫が俺達に地図を見せてくれた。
ふふ、地図を読まねぇ俺には分からねぇぜ!
だが、ドリーズは地図を見て場所が分かったらしい。
「なる程のぅ、あの国か」
「知ってんのか?」
「うむ、魔物の排除を積極的に行なっておる国じゃ。
兵の質も高いと予想出来る」
「えぇ、ヴィステック王国は軍事国家です。
軍事力に力を入れている国家であり
高い防衛能力を誇ってます」
「戦争とか良くしてるのか?」
「いえ、ヴィステック王国は戦争などは行なわず
積極的に魔物を討伐している国家です。
ドラゴンを迎撃出来たという報告も」
「うむ、シャリーがヴィステック王国へ向ったとき
攻撃を受けたそうじゃ、まぁ、人の国を滅ぼすのは
避けるように命じておったからある程度攻撃をした後
撤収したという報告を受けたのじゃ」
「な、何故ヴィステック王国へ向ったのですか?」
「人に威厳を見せ付けるのは重要な事じゃ。
調子に乗ったり増長すると困るからのぅ。
じゃから、定期的に人類に攻撃をしておる。
特にヴィステック王国は軍事力が高いからのぅ
定期的に戦力を削らねば儂らが困る」
ドリーズは部下を攻撃されたり殺されるのは嫌がるだろう。
だから、定期的に人類を攻撃し、戦力を低下させてたのか。
あまりに強くなり過ぎると部下が被害を受けるからな。
「何故そんな酷い事を」
「酷い事? 何を言っておる、必要な事じゃ。
いつかシルフに言ったが、命の価値は平等では無い。
儂からしてみれば儂の知り合いや部下の命は尊く
それ以外は大した事も無い命なのじゃ。
それは人類じゃろうと、魔物じゃろうと同じ事。
儂からしてみれば、儂の庇護下の外におる人類など
何の価値など無い命でしか無いのじゃ。
じゃから、管理をしておると言うだけの話。
努力をしようとする生命を滅ぼすのは好かぬが
強くなり過ぎては儂らに被害が出るからのぅ」
リスティア姫はドリーズの言葉に少しだけ
怒りの様な物を覚えたのかも知れない。
だが、ドリーズに何かを言うことは無かった。
彼女の機嫌を損ねてしまえば人類に未来は無いし
このバスロミアの未来だって潰れかねない。
だから、自分の意見と食い違ったとしても
彼女を否定する事が出来なかったというわけだ。
「じゃが、儂が自ら足を運ぶというのは
中々有意義な経験となるじゃろうな。
儂にとって、価値の無い命に価値が生まれよう。
そう言う意味でも、今は良い機会かもしれぬな」
今まで、人を評価自体はしていたが
さほど興味を持っていなかったドリーズだが
俺と出会い、一緒に行動をしてる間に
色んな奴らと交流できるのは意外と良いだろう。
興味が無かった人類に興味が出てくるかだ。
興味さえ出てしまえば、無価値な命では無くなる。
そう言う意味でも、割と今はありがたい状況だ。
「では、この国へ向おうとしよう。
儂らの格を味方として
見せ付けるのもまた良かろう」
そう言って、ドリーズがゆっくりと進む。
リスティア姫はそんなドリーズに何も言わない。
で、俺達も一緒にドリーズの後を付いていく。
「あ、そ、そうだ!」
俺達が進んで少しして、リスティア姫が
何かを思い出した様で
すぐに俺達の方に近寄ってきた。
「すみません、実はシャナも
連れて行って欲しいのです!」
「シャナ? 良いのか? 国の防衛能力が」
「は、はい、そこは恐ろしい部分ではあるのですが
皆様の旅に付き添えるのはシャナくらいなので」
……そう言えば、誰か交渉する必要あるよな。
ドリーズ、俺、シルフしかいないわけだし。
うん、フェイトを連れてきてたほうが
やっぱり良かったかも知れねぇ。
「そ、そう言えばそうだな……俺達3人じゃ
国のお偉いさんと対話するのは不味いか」
「え、えっとー」
俺の言葉を聞いて、リスティア姫が少しだけ
視線を逸らしながら、冷や汗を少しだけ流してる。
「た、確かにそうじゃな、儂は高圧的じゃし
敬語も使えぬ、それはマグナもそうじゃし
シルフはあまり対話が出来ぬからのぅ」
そうだな、ドリーズに言われて再確認したが
実際、俺達が同盟の使者ってのは不安だろう。
1番移動能力があって、安心感があるのは
当然、俺達である事は間違いねぇだろうが
俺達じゃ、面談があまりにも危険すぎるだろう。
だが、俺達のあの素早い移動に付いてこれるのは
そりゃ、鍛えてる兵士とかしか居ねぇだろう。
しかし、ただの兵士じゃ重要な国同士の面談で
その重荷に耐えられるはずもねぇと考えると
兵士の中で最も実力があるとは言え
国の最高幹部レベルに影響力があって
偉い奴とも物怖じせずに面談でき
冷静に判断が出来る人財ってなると……シャナだな。
「国全体に影響を与えるであろう判断で
冷静に会話を進められるのはシャナ。
リスティア姫は他国の書状を用意する必要もあるしな。
しかしだ、国王はどうしたんだ?」
「お父様はまだ動ける状態ではありません。
お母様はお父様の代わりに国の指揮をしてますし
更に同盟の書状を用意するのはお母様の身が持ちません」
「だから、リスティア姫も一緒には動けないと」
「は、はい……」
仕官とか居るだろうが、
多分同盟の話で今忙しいだろうしな。
リスティア姫も同盟の書状とかで忙しいだろう。
それと多分だ、向こうは軍事国家だからな。
恐らくシャナは向こうでも評価されてるだろう。
そんなシャナを向わせると言う事で
自分達の本気を伝えようとしてるのかも知れない。
まぁ、そこら辺の細かい部分は分からねぇがな。
「分かった、じゃあ、シャナと一緒に行けば良いんだよな
防衛に関しては、シャナの方から聞けば良いと」
「はい、お願いします」
「分かった、じゃあ、何処で合流すれば?」
「はい、門の前で待機してます」
「分かった」
そう言う訳で、俺達はシャナと合流するために
門の前へ向った。
そこにはシャナが帽子とメガネをしてた。
「……シャナ、その格好は何だ?」
「流石はマグナ殿、私の変装を見抜くとは」
「へ、変装じゃと? 何も隠れておらぬぞ?」
「む? そ、そうか? 誰にも声を掛けられなかったから
完璧だと思ってたのですが…」
周りの国民達はシャナを見てるしな。
やっぱこれ、バレてるけど黙ってたんだろう。
「主は意外と天然という部分があるのかもしれぬな。
ま、まぁ良いか、とにかく門から出よう」
「そうですね」
門番達がシャナの方を見て
明らかに反応したが何も言わない。
「名前は」
シャナは偽名なのだろう、シャルと名前を書いた。
……門番は同じ様な反応をして俺達の為に門を開けた。
「よし、完璧でしたね」
「いや、絶対にバレてる……」
ちょっとだけ不安になるんだが
ま、まぁ大丈夫だろう、シャナだし。
ちょっとこう言うのが天然と言うだけであって
しっかりとしないと駄目な部分はするだろう。
「まぁ、この話は良かろう。
今は重要な話じゃ、シャナよ
主が抜けると言う事は襲撃が苦労すると言う事じゃ。
ゴブリンの排除はどうする?」
「今の状態で構いません、兵達の今の練度であれば
問題無く対処出来ます」
「ふむ、ならば今のままで対処させよう。
では、急ぎ向うか」
「はい」
ドリーズが炎を放った後に、ドラゴンがやって来た。
「では、向おうか」
「はい」
俺達はドリーズが呼んだドラゴンの背に乗り
目的の国に移動を始めた。




