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弱者達の戦い方

シャナの号令と共に始まった

兵士達とゴブリンの戦い。

兵士達は全力で眼前のゴブリンを斬り伏せる。


「相手はゴブリン! あまり力を込め過ぎるな! 

 攻撃を当てればほぼ死ぬ!」


小さい体のゴブリンだからな。

剣で何処か攻撃されたら傷はデケェだろう。


「了解です!」

「弓兵は後方に向って射続けろ!」

「はい!」


城壁の上で指示を出してる指揮官の声だ。

弓兵達はその指示通りに奥の方を射ていた。

この高さで仲間の近くを狙撃は難しいだろう。


「分かってるな! お前達の腕では

 仲間の近くを攻撃すれば必ず巻き込む!

 フェイトさん位の腕があれば話は別だが

 お前達にはまだその腕は無い!

 安全策を取るんだ!」

「了解です!」


へぇ、フェイトならこの距離だろうとも

正確の仲間の近くに居るゴブリンでも射抜けるのか。

実際、フェイトの弓矢の精度は尋常じゃねぇしな。


「ふむ、奴はこの距離から矢で射抜けるのか。

 そこを極めていけば良いじゃろうに」

「ある程度極めたから剣技を極めてるんだろうよ。

 あいつは自分1人で全部やろうとしてるしな」

「うむ、無謀じゃとも思うがのぅ」

「あぁ、あいつ1人で冒険してたしな」


俺達と出会ったとき、あいつは1人だけだった。

1人でオーガと交戦することになって

勝ち目が無いから逃げてたって状態だしな。


これはまぁ、フェイトとしばらく過ごして

理由は分かるようになって来てた。

あいつはかなり優しいからな。

そして、かなり慎重で疑り深い性格だ。


仲良くなった奴を連れて危険な冒険に赴く。

そんなの、優しく慎重なあいつはやりたがらない。

自分の事は結構度外視してるようにも思えるから

大事な友達を巻き込むくらいなら1人でって感じか。


そう言う理由で誰かとつるむのを嫌がってて

バルキュリー部隊への誘いだって断わってたんだろう。


「1人とはのぅ、まぁあやつらしいと言える」


そんな会話をしてると、今度は色違いが出てくる。

あれは赤いゴブリンだな。


「強化個体! レッドゴブリン!」

「布陣を整えろ!」

「はい!」


展開された布陣は前衛が2人であり

後方に地上の弓兵が8人の部隊。

前衛2人はレッドゴブリンに接近する。

レッドゴブリンはその2人に攻撃を仕掛けた。


「回避!」


前衛の2人は左右に分かれ、

レッドゴブリンの大振りな一撃を避けた。

レッドゴブリンは少しだけ距離が近い

右側の兵士の方に視線を向ける。


その間に後方の弓兵達が一斉に矢を放つ。

レッドゴブリンの死角外の攻撃だったのか

全ての攻撃を受けて、後方に僅かに下がる。


「そこ!」


左方向に展開していた兵士が背後から奇襲。

不意打ちを受けたレッドゴブリンは後方を向く。


「放て!」


レッドゴブリンが後方を向くと同時に

弓兵達が2発目の攻撃を開始。

後方から奇襲を仕掛けてた兵士は

レッドゴブリンを壁として、2発目を避けたが

レッドゴブリンは弓兵の攻撃を受けて倒れて消えた。


「ほぅ、あれが正式な倒し方か」

「うむ、レッドゴブリンは非常に単純じゃ。

 攻撃力は非常に高い為、人間では耐えられぬ。

 じゃから、普通の人間であれば回避を主軸とする。


 攻撃特化じゃから、防御力が無いのもあり

 その間に後方からの攻撃、視野も狭く

 ターゲットにしか目が行かぬから

 あの様に奇襲も容易に刺さるし

 遠距離による攻撃であっさりと排除できる。


 じゃが、獰猛である為前衛は非常に危険であり

 体力自体もあるから、後衛の火力が足りぬ場合

 前衛が崩壊するリスクも高いと言えるじゃろう」

「つまりだ、しっかり信頼関係が出来てなきゃ

 あんな風に綺麗に撃破出来ねぇって事か」

「うむ、実に良い連携じゃ」


魔物に詳しいドリーズの解説で

あの連携がまさに適切だというのが分かった。

即座に布陣を整えてるところからも

非常に戦いなれてると言うのが分かる。


だが、実戦でやったのは恐らくこれが初だろう。

歴史でゴブリンアーミーを知ってたとしても

100年に1度だからな。


資料からそれぞれのゴブリン達が

どう動くかを把握し、シャナの指揮で

非常事態に対処出来るように鍛え続けてたのか


前回の襲撃時に特徴をシャナが把握し

次の襲撃でどう動くかを伝達して

連携の練習をして居たのかのどちらかだろう。


恐らく、後者だと俺は思うけどな。

訓練してたから今度の襲撃時には

撃破を半数にして欲しいと

ドリーズにお願いしに来たんだろうしよ。


「ブルーゴブリンだ! すぐに布陣を整えろ!

 前衛は急いで展開!」

「はい!」


今度は前衛が10人で中衛が5人の布陣になった。

後衛である弓兵は1人もその布陣には参加してない。

前衛は中衛を囲み、盾を構えてる。


ブルーゴブリンは通常のゴブリンよりも

身長はあるが、他の色違いと比べれば小さい。


と言うか、一体だけじゃ無いんだな、何体か居る。

奴らは素早く動き、前衛に攻撃を仕掛けてきた。

攻撃を防いだ前衛は反撃を仕掛けたが

ブルーゴブリンはその攻撃を回避する。


「そこ!」

「ぎ!」


だが、ブルーゴブリンが回避した先に

中衛の槍が伸びて、一匹貫いた。

恐らく前衛の攻撃で誘導したんだろうな。


かなり素早く動く相手に対しての対処として

カウンターって言うのは最適解だ。

俺がシャナにやったのも同じカウンターだしな。


「おぉ! 実に見事じゃ! 完璧な布陣!

 素早く動くブルーゴブリンに対抗するために

 前衛で中衛を囲み、前衛へ攻撃した後の

 隙が出来た所を中衛で攻撃とは実に見事!


 くく! やはり人の戦いも見応えがあると言う物!

 弱者である人類が知恵、信頼、勇気により

 肉体的にも数的にも不利な相手に挑む様は

 いつ見ても面白い!


 その中でも此奴らの連携は実に見事!

 完全に相手への対抗策を練っておる!

 これはやはり、シャナの手腕じゃろうな!」


兵士達をここまで磨き上げたのはシャナだろうしな。

カリスマ性、指揮能力、、戦闘能力、知識。

どれを取っても、あいつは隙がねぇ。

更には努力家だってのが最高だよな!

ま、努力家じゃ無けりゃ

あそこまでのカリスマは無かっただろうが。


「よし! ブルーゴブリン撃破!」

「クソ! ブラックゴブリン! 強化個体が多いぞ!」

「冷静に対処せよ! 攻撃型だ!」

「はい!」

「速攻で倒し切れ!」


ブラックゴブリンに対しては前衛の盾が居ないな。

全員が盾を構えず、剣だけを構えてる。

後衛は力強く弓を引き、狙いを定めていた。


「がぁ!」


ブラックゴブリンが動き出し、前衛へ攻撃。


「うぅ!」


素早い動きに対し、何人かの兵士が攻撃を喰らう。

だが、攻撃を受けた兵士は致命傷を避けていた。

その攻撃と同時に弓兵達が攻撃を放つ。

だが、ブラックゴブリンはその攻撃を全て防いだ。


「前衛!」


弓兵の攻撃を防いでる間に前衛が駆け寄り

ブラックゴブリンの足を斬り裂いた。

攻撃を受けた黒ゴブリンは血を吹き出し

一瞬だけバランスを崩したが

即座に体勢を立て直し、出血が止まる。


だが、攻撃の隙を見て、弓兵達の第2陣が即座に矢を放ち

黒ゴブリンの両足に大量の矢が突き刺さった。


「ぐ!」


大量の矢を受けて、流石にバランスを崩したのか

黒ゴブリンは膝を付けた。


「今だ! ここから撃て!」

「はい!」


黒ゴブリンが倒れたのを確認した

城壁に居る兵士達が一斉に矢を放ち

黒ゴブリンへ向けて矢の雨を降らせる。


黒ゴブリンが倒れた瞬間に

前衛や弓兵達は一斉に距離を取ったことで

城壁からの攻撃は仲間には一切当らず

黒ゴブリンだけが矢で串刺しになった。

そして、少しして黒ゴブリンの姿が消える。


「よし! 仕留めた!」

「おぉ、考えたのぅ、実に見事じゃ!

 ブラックゴブリンは高い再生能力を持っておる。

 それを仕留めるには何処かにある

 奴らのコアを貫く必要がある。


 じゃが、硬い肉体もあり、ただ攻撃するだけでは

 何処にあるか特定できぬコアを破壊は困難。

 そこを考慮し、落下の力も含めての一斉射撃とはのぅ


 実に見事、両膝を着かせ的を広げて

 確実に射貫くための準備も完璧じゃ!

 くく! やはり面白い! 傍観というのも良い物じゃ」

「詳しいな」

「当然じゃ、何度も見てきたしのぅ、じゃが」


そして、一瞬見えた巨大な岩。

巨大な岩が出て来た瞬間に飛ばされたであろう場所に

ドラゴンが炎を放ったが、岩の破壊は出来てない。


「恐らく仕留めたと誤解して見落としたのじゃろう。

 まぁ仕方ない事じゃ、数が多いからのぅ」

「あの大岩は!」

「何かあったときは!」


俺は即座に力を込めて拳を振う。

同時に岩は砕かれ、ゴブリンの群れの上に落下。


「ま! 俺に任せろってな!」

「な!?」

「くく! 素晴らしい連携も良いが!

 純粋なパワーというのがやはり一番じゃ!」

「おう! 力が絶対正義だぜ!」

「……あ、あはは」


城壁の兵士達から呆れた様な笑い声が聞える。

唖然としてる兵士達ではあったが

即座に意識を相手に戻し、再び交戦。


最終的に見事な連携でゴブリン達を退けた。

いやぁ、かなり連携が凄かったな。

流石はシャナ率いるバルキュリー部隊だ!

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