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バスロミアの兵士達

さて、家に戻ってしばらく経った。

で、再び聞えてきた警鐘だ。

やっぱりかなり仕掛けてきてるって感じだな。

だが、今回はお昼頃の襲撃だな。


「ふむ、また警鐘か」

「ん」


シルフが作ってくれたご飯を食べて

俺達はゆっくりと家から出た。


「おぉ、見事な隊列じゃな」


家から出てバスロミアの兵士達を見た。

彼女達は武器を構え、素早く外へ走っている。

焦ってる様子ではあるが、

全員足並みは揃っており

この事態に対して、即座に前線へと迎えてる。


兵士のうち、1割は避難指示の為に離脱し

兵士達が出撃する経路と市民達の避難経路が

綺麗に別れており、避難でさえ、非常にスムーズだ。


「避難の動きも素早く綺麗であり

 前線へ向う兵達の歩み方も美しく

 お互いに一切邪魔にならないように動いておる。

 うむ、実に実に素晴らしい隊列であり

 実に素晴らしい連携と言えるじゃろう。

 実に見事、軍としての練度は相当上じゃな」


その素晴らしい練度を、ドリーズは称賛し

実に嬉しそうに笑っている。

彼女からしてみれば、これは非常によい動きと。


ドリーズだってドラゴンたちの指揮をして

その際に隊列の訓練もさせてそうだしな。


「それだけ称賛してるって事は

 お前はドラゴンたちの隊列も拘ってるのか?」

「うむ、儂が本格的に動く際、配下達を指揮する。

 その時の隊列も奴らに叩き込んでもおる。

 儂が指揮する場合は10頭を1部隊とし

 それを更に10部隊以上に分離させて行動。


 それぞれの部隊のトップを任命して

 儂はそやつに指示を出し、効率的に焼き払う。

 この後に起こるであろう、アンデッドの宴

 その宴に対抗するための訓練でもある」


アンデッドの宴はドリーズもかなり警戒してるようだ。


「よっぽどヤベぇのか? それ」

「うむ、ドラゴンゾンビが発生するのじゃ。

 そのゾンビを掃討するために儂らも頭を捻る。

 その戦いで死者が出れば、その物も

 同じドラゴンゾンビとなり被害が出る。


 故に、被害を完全に抑えるために

 隊列を考え、安全に仕留める必要がある。

 確実に配下を守り、生き残る為じゃ」


部下のことを思っての行動なんだな。

そこら辺、実にドリーズらしいと感じた。

だから、領主と対話をした時もキレてたんだな。


何もしないで他者に頼ろうとするなと。

ドリーズはアンデッドの宴が起こったときは

俺達に頼る事も考えては居るだろうが

当然、自分に出来る努力は徹底的に行ない

その上で、より安全に確実に乗り越えるために

俺達に協力をして貰おうと考えてるのだろう。


そこが領主と揉めた最大の理由と言える。

あの時、キュリウスは即座に俺達に縋ろうとした。

だから、こいつは嫌悪感を剥き出しにしたのだろう。


きっと自分に出来る努力を徹底した後に

協力して欲しいと願えば、こいつも即座に受けただろう。

それが安全の為に最適であるのであればな。


「分かっておるじゃろうが、儂は他者に頼る。

 じゃが、自らに出来ることを徹底した上で

 他者に頼るのが儂のやり方じゃ。


 無論、他者に頼る事は必要な事じゃ。

 自分達だけで出来ぬ事は当然多い。

 じゃが、努力をした上で頼るのが儂じゃよ。

 すぐに縋ることはせぬし、仮に縋ろうとも

 その後に自らに出来ることを徹底する」

「分かってるよ、お前の事はな」


こいつは決して自分勝手じゃねぇ

自分に出来ることは率先してやるし

自分がやるべき事を押付けることはしない。

だからこそ、こいつはドラゴンの女王なんだ。


女王である自分が出来ることは徹底して行ない

部下達の指示や配下達の行動を把握し

ドラゴンという野生の生き物達に

確かな組織を作った。


その為に奔走しながらも自らを磨き上げて

魔物の中でも最強と言えるだけの力を得て

恐らく全ての魔物の女王の中で最も強い。


女王である自分は誰よりも強くあろうとする。

少なくともドラゴンの中では最強であり続ける。

その為に一切の躊躇無く努力を磨いていき

いつしか魔法に近い領域に辿り着いたと。


こう考えれば考えるほど

こいつは見た目に反して実に大人だと分かる。

たまに駄々をこねることもあるが

ま、まぁ、あれは自分の努力だけ

じゃどうしようもねぇしな。

だって、俺の好みだし。


「くく、まぁ今はこの話は良いか。

 眼前の問題を果たそう。

 じゃが、儂らのやるべき事は

 この戦いを即座に終わらせる事では無い」

「あぁ」


城壁の上を俺とドリーズは一緒に見上げた。


「うし、シルフ」

「ん」


俺の意図を察したシルフは俺に強くしがみつく。

シルフが蔦を出してかなりガッチガチに

離れない準備が出来たのを確認した後

足に力を込めて俺は高く飛んだ。


「な!?」


城壁の上で弓矢を構えて居た兵士が驚きながら

俺達の方に振り向き、冷や汗をながす。


「ま、マグナ様!」

「よ、近道したから驚かせたか?」

「あ、あの、ど、何処から……」

「地面から」

「ここ! 地上からかなりありますけど!?

 ドラゴン対策で城壁、非常に高いのですが!?」

「どれ位だ?」

「な、70メートルですが…」

「うむ、それではドラゴンは飛び越えるのじゃ。

 ま、遠距離の攻撃が届けば良いか?

 最も、矢が届いた程度で儂らの鱗は貫けぬが」

「ど、ドリーズさんも!」


その後、ドリーズが羽ばたきながら降りてきた。


「俺はほら、その気になればひとっ飛びで大体行ける。

 まぁ、その場合は地面が抉れるから中々出来ねぇが」

「お主の力であれば容易じゃろうな」

「は、はぁ、さ、流石としか……」

「そして、儂らがここに来た理由は

 この戦いを見物する為じゃ」

「さ、参加はされないのですか?」

「うむ、この程度の相手で儂らが出ては

 主らの為にならぬからな。

 当然、シャナもその事は理解しておろう」


城壁の上から足下の方を見た。

そこでは既に、兵士達が戦うための隊列を組んでた。

意外な事に、シャナは中腹辺りに陣取ってる。

騎士団長ならば前線に立つべきなのだろうが

今回の戦いはシャナからしてみても試練程度。

兵士達が強くなる為に自分は可能な限り参加せず

兵士達に対処させるつもりなのだろう。


「全員! 聞け! 今回の戦いは前回とは違い!

 ドラゴンたちはゴブリンの半数を相手してくれる!

 前回は8割ほどをドラゴンたちが対処してくれたが

 そのままで良いと甘えてはならぬ!」

「は、はい!」

「更に今回の襲撃時にはマグナ殿達が帰還し

 参加してくれると甘えている兵も居るだろう!

 だが! 彼らは今回の戦いには参加しないだろう!」

「……」

「この程度の相手は! 我々だけで対処せねばならない!

 本来であれば! 全てを相手するべき所を

 ドリーズ殿のご厚意で半数を排除してくださった!

 更に甘えることは我々は許されない!


 忘れるな! お前達の役目を! 

 お前達は国を! 家族を守る為に兵を志!

 自らを鍛え上げたのでは無いのか!」

「ッ!?」

「今こそ! その努力を実らせるとき!

 これから起こる災禍に我々の力で打ち勝つためにも!

 この戦いは我らで切り抜ける必要がある!」

「は!」

「鍛錬の日々を思い出せ! 甘えること無く!

 この戦いの中でも努力し! 成長して見せよ!

 実戦に勝る訓練は無い! 今こそ好機!

 この襲撃で! 必ず成長してみせろ!」

「はい!」


シャナの号令により、兵士達から覇気を感じた。

全員が武器を同時に構え、美しくゴブリンに向けた。


「これより! 2度目の防衛戦を始める!

 目の前の敵を全て排除し! バスロミアに平穏を!」

「は!」


シャナの号令が聞えたであろう城壁の兵士達も

一斉に弓矢を構えて敵を見据えた。

俺達は城壁の真ん中に移動し、壁面に足を乗せ

両手を組みながら、その戦いを鑑賞することにした。

この門から先には行かせねぇという

強者の雰囲気を出しながら偉そうにな。


「最悪は俺が阻止してやる!

 お前らは心置きなく成長しろ!」

「はい!」


俺の大声を聞いたであろう兵士達は俺を見上げ

少し笑顔を見せた後、再び前を見据えた。

シャナも同じ様に笑みをこぼし、剣を抜く。


「全軍! 進め!」

「は!」


シャナの号令で兵士達が一斉に走り出した。

奥の方でゴブリンを焼き払ってるドラゴンも見えた。

はは! 偉い奴って感じで実に良い気分だぜ!

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