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今出来る事を

ミントが作った料理を食べて

いつも通りの笑顔が出来た後


「美味しいわね、ミントさんの料理。

 やっぱり1つの事を極めた人って

 憧れちゃうかも」


ハンカチで口を拭きながら

少し嬉しそうに彼女は呟いた。

彼女の笑顔はやはり無邪気に感じるな。

素直に相手を称賛する意思を感じる。


自分を天才と称していたが

彼女は他者へのリスペクトってのを

忘れないようなタイプってのが分かる。

だから彼女は成長出来るんだろうが。


「うむ、良い事じゃ、他者を認める事は。

 それは非常に難しい事じゃからな。

 やはり主は良い才能の持ち主と言える。


 自らよりも優れた者を貶まず

 その姿を糧とし、成長する。

 その能力は未来へ進む為に必要な能力じゃ。

 決してその精神を失うでないぞ」

「いきなり褒められて、何か驚いたんだけど。

 あなたも結構誰かを褒めるのね」

「当然じゃ、儂は努力する者を貶む事はせぬ

 努力せずに恨み言を言う物や

 何もしておらぬ癖に不平不満を言う物。

 他者に対して不平等などとほざく者

 努力をしようとすらせぬ者は蔑み軽蔑するがのぅ。


 奴らは駄目じゃ、未来すら感じられぬ愚者。

 他者の才能を妬み、自らに能力が無いことを

 不幸や不運だったから等と言い

 他者に対し、不平等だとほざきながら

 自らは何も行動しないような愚者。

 

 努力すら出来ておらぬくせに

 努力をして高みに立った物を貶すのは

 実に愚かとしか言えぬ」


滅茶苦茶辛辣だなぁ、こいつは。


「辛辣ね、あんた。でも努力できない奴は居るわ。

 努力をしたところで成長出来ない人も居る。

 生まれて間もないときに奴隷として売られて

 一生を拘束されて死んでしまう子も居るのよ。

 

 クソみたいな親父に性奴隷みたいに扱われて

 精神がぶっ壊れて救いを求めても

 誰も救ってくれないような境遇の子だって居る。


 努力が出来ないから愚か者って暴論は

 努力が出来る環境に生まれて

 自由に出来てた誰かが言うべきでは無いわ」

「ほぅ、儂相手にそこまで言うとはのぅ」


フェイトが結構容赦なくドリーズの言葉に返す。

フェイトはそんな環境に生まれた女の子を

嫌と思うほどに見てきたんだろうな。

だから、フェイトは男が大っ嫌いなんだろう。


「えぇ、私の譲れない部分よ。

 私はこの目で見てきたのよ、

 理不尽に不幸な目にあって

 自由を全て奪われた女の子達をね。

 だから、私は男が嫌いなのよ。

 ……私は逃げ切れたけどね」


多分だが、フェイトが見てきた女の子は

家族の誰かなんだろうな…


「主の家族か?」

「……私が尊敬するお姉ちゃんの話よ。

 そう、私が逃げ切れたのはお姉ちゃんのお陰。

 お姉ちゃんが自ら進んで、私達の代わりに

 あのクソ親父の捌け口になってくれた。


 だから……私はこうやって成長出来た。

 だけどね、お姉ちゃんは……私が成長して

 助けた時には壊れてたわ。

 性行為の事しか考えられなくなってた。


 だから私は男が大っ嫌いなのよ!

 特にあのクソ親父は嫌いなのよ! 殺したい!」


フェイトが男嫌いな理由はやっぱり親父か。

しかも、その父親のせいで大事な姉が壊されてる。

そりゃまぁ、キレるのは分かる。


……本当にそこまで男が嫌いなのに

良く俺の護衛になってくれたと思うよ。

最初は殺意剥き出しだったのにな。


「その様子じゃと、殺してはおらぬか」

「そうよ、お姉ちゃんのお願いを無駄には出来ない。

 お姉ちゃんは私の幸せを願ってくれた。

 ……だから、殺さないわ、あいつを殺せば

 私は幸せにはきっとなれないから」

「では、その父親は今どうしておる?」

「家で元気よくいつも通りの生活よ。

 だって、法律で禁止されてないし

 あいつは何も違法なことはしてないわ。

 子供を作るのがあいつの仕事なのよ

 例えその相手が娘だろうよね。


 私は絶対に帰りたくないし

 あいつの子供なんて絶対に生みたくない!」


最初にもそんな事を言ってたからな。

やはり親族で子供を残すのは普通の事なのだろう。

そりゃまぁ……人数があまりにも少ねぇからな。


「本当はボコボコにしてやりたいけど

 そんな事をしたら、私が捕まるわ。

 マジで最悪よ、クソ……」


父親を思い出したからなのだろう

彼女は非常に不機嫌そうに呟いた。


「はやり人と言うのは難儀じゃな。

 しかしのぅ、人のオスはそんな者ばかりか?

 少なくとも、マグナのようなオスもおろう」

「おぉ! 俺は優しいぜ!」

「……マジであんただけは異常と感じるわ。

 まぁ、私があのクソ親父位しか

 男を知らないだけかも知れないけど」

「少なくとも、

 あたしのクソ兄貴と父さんもそんなのよ」

「私もね~」

「ふむ、やはりマグナが珍しいのじゃな」

「まぁ、話を聞いたらそうだろうなって」


大体話を聞いたらそう言うのばっかりだからな。

とは言え、俺の父さんはそんな事無かったが。

ずっと母さんだけを大事にしてたしな。

それが少数って事なんだろうけどな。


「しかし、フェイトが言いたい事は分かったのじゃ。

 実際、努力できぬ環境に生まれた物はおる。

 努力できぬ者全てが愚かというのは誤りか」

「そうよ、努力したくても努力できない人は居る。

 だけど、私は努力できる環境に生まれた。

 なら、努力をするだけの話よ」

「うむ、それが主の力の根源じゃろう

 それで良い、理由があるならば努力できよう」

「えぇ、私は必ず魔法を極めてみせるわ」


フェイトが覚悟を決めたように拳を握った。

本気でマスターしてやるって覚悟を感じるな。

折角比較的恵まれた環境に生まれたのだから

努力を惜しまない、それがフェイトの行動原理か。


「じゃあ! 早速魔法の練習ね!

 ふふふ、フェイトさんの為に

 適性ランクがCの女の子でも魔法が使える

 そんな方法を考えたのよ!」


ジュリアが嬉々として紙を取り出そうとしたが


「あれ!? 何処だっけ!?」

「あ、あっと、それって……」


その反応を見たフェイトが申し訳なさそうに

ジュリアの部屋にあったあの紙を取り出した。


「あ! そ、それ!? どうしてあなたが!?

 へ、部屋に入ったの!? あ、そうよね

 考えてみればあたし、机で眠気に負けた気がしたのに

 いつの間にかベットで寝てたし、運んでくれたの?」

「そうね、私が運んだわ、風邪引いたら困るし」

「そ、そう、でもよくあたしが机で寝てたって

 あ、朝ご飯が出来たって教えてくれようとしてた?」

「いや、あなた起きたのお昼だし、そうじゃ無いわ」

「ん?」

「実は今朝」


今日、何があったかをフェイトが伝えようとしたとき

玄関がノックされた。


「お? 誰だ?」


ひとまず1番近くに居た俺が玄関を開ける。

そこには結構豪華な鎧を着けた兵士が立ってた。


「あ、どちら様?」

「私はシャンデルナ共和国、魔法騎士団団長

 リーデルフォン・バンリーズと申します」


魔法騎士団ってあるんだ。


「き、騎士団長!? 何で!?

 あ、あたしがここに居る理由は

 お姉ちゃん達が伝えてると思ったけど!?

 も、もしかして聞いてなかった!?

 いや、聞いてないなら何でここに!?

 もしかして、な、納得しなかったの!?」

「いや、別に君を怒りに来たわけじゃ無いんだ。

 怒りたい気持ちは無いとは言えないが」

「え!? な、何かしたっけ!?」

「正確には何もしてなかったからと言うか」

「何もしてないのに怒られるってどう言う!?」

「ふむ、聞かされてないのかい?

 今日、シャンデルナが襲撃されたんだ」

「はぁ!? き、聞いてないんですけど!?」


そりゃまぁ、起きてすぐだからな。

丁度伝えようとしたら来た訳だし。


「そこは怒らないでやってくれよ

 あん時も言ったような気もするが

 ジュリアを寝かせたままにしたのは俺の判断だ。

 あいつに否があるわけじゃねぇさ」

「えぇ、理解しております。

 あなた達が自らの実力を考え

 ジュリアを起す必要も無いと

 そう判断しただけだと言うことは。

 事実、あなた達のお陰で被害は有りませんでしたしね」


あまり怒ってる様子はねぇな。

まぁそりゃ、俺達の実力を知ってて

俺達に対してどうこうは言わないとは思うが。


「ふむ、その様子じゃと、

 恨み言を言いに来たわけでは無いのじゃな?」

「勿論ですよ、あなた方に恨み言など

 そんな事をするはずもありません。

 今回、我々が来た理由は今後の事を相談するためです。

 領主様にお会いになっていただきたく

 ご訪問に参った次第です」


ふーん、領主に会って欲しいから来たのか。

何か話したいことでもあるのか?


「ふーん、だが、そう言うのは俺達よりも

 リスティア姫に相談して欲しいんだ」

「はい、リスティア姫には既にお話しをしております。

 その帰りにお伺いしたと言う訳です」

「そりゃそうか、でもわざわざ伝える程か?」

「はい、あなた方にも必ず来ていただきたく」

「重要な話っぽいわね、マグナ、どうするの?」

「重要な話ならそりゃ行くさ」

「それは良かった、リスティア姫の準備が整い次第

 共に来ていただければと思います」

「あぁ、分かった。

 そうだ、誰に来て欲しいとかあるか?

 全員来て欲しいとか、一部来て欲しいとか。

 あ、絶対に来て欲しい奴だけだぞ?」

「マグナ様とドリーズ様とシルフ様には

 来ていただきたいそうです」

「そうか、分かった、じゃあ俺達3人は行くか。

 フェイトは魔法の訓練をしておいてくれ」

「で、でもマグナ、あんたら3人とか礼儀とか」

「大丈夫だって、リスティア姫も居るしな」

「……それもそうね、じゃあ、分かったわ。

 私はジュリアちゃんに鍛えて貰う」

「そうね、フェイトさんはあたしが鍛えるわ!

 あ、そうだ騎士団長、あ、あたしは行かなくても」

「あぁ、君は来なくても大丈夫だ

 君は君に出来ることをしておいて。

 魔法を欲する人が居るなら教えを説くのが

 君の出来る事だからね」

「分かった!」


じゃ、軽く準備をして待機しておくかな。

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