騒がしい朝
2日目の魔法訓練……の、予定だが
どうもきな臭くなって来たというね。
まぁ、昨日から兆候はあったけどさ。
「警鐘!?」
何処からか聞えてきたフェイトの大きな声と
馬鹿うるさい鐘の音で朝っぱらから目を覚ます。
いつも通り、大きなあくびと一緒に
俺はシルフと共にたたき起こされた。
「眠い……」
「今何時だぁ?」
時計を見ると、朝の5時、早朝だな。
少しだけ明るくなり始めた頃か。
まぁ、周囲はデカい壁があるから
綺麗な朝日がーって感じはねぇな。
あ、ドア開いてたんだ、
だからフェイトの声が聞えたのか
「マグナ! のんきに外見てる場合じゃ無いわ!」
「そりゃまぁ、このばかうるせぇ音を聞けばなぁ」
「マグナよ、朝の準備運動をするのじゃぞ?
歯も磨いておいた方が良い。
おぅそうじゃ、ミントよ、朝食を」
「あんたものんびりしてる場合じゃ無いでしょうが!」
フェイトがドリーズの翼を両手で掴み
必死の形相でドリーズに怒鳴った。
「そ、そう騒ぐな、既に騒がしいのに
余計騒がしくなるのじゃ」
「これ襲撃よ襲撃! まだ同盟の話は付いてない!
他国との連携がまだ完成してないってのに
こんな短期間で連続の襲撃って冗談じゃ無い!」
「うむ、儂としても面白う無い。
領主とやらがまだ行動出来ておらぬ。
これでは連携の練習所では無いのぅ」
首を少し動かし、こきこきと骨の音が聞えた。
あー、肩こってたのかぁ? まぁ昨日は
結構勉強してたし、そりゃまぁ、肩もこる。
「にーに、眠い……」
「そりゃまぁ、俺も眠いけど。
フェイトは元気そうだな、いつも何時に?」
「私は普段4時半にはって、そんな事どうでも良い!」
「うむ、早起きじゃなぁ、儂は5時じゃな」
「俺達は8時だ、まだおねむの時間だぜ。
ミントはどうなんだ?」
「それ、今必要な情報なの!?」
「ミントは4時らしいのじゃ、料理の下準備で
かなり早起きじゃと言っておったわ」
「だから何で余裕そうなのよ!」
「そんなの簡単じゃろう? 余裕じゃからじゃ」
大きく背伸びをして、とりあえずジュリアの部屋に。
ジュリアはこの馬鹿でかい鐘の音が響いてる中でも
本に埋もれながらグースカと眠ってた。
「おぉ、本に埋もれておるのぅ」
ジュリアの手元には書きかけのメモ帳もあり
どうやら、今日の資料を作ってたらしい。
今回は魔力量に関して説明をするつもりだったようだ。
「ふーん、魔力量は20までは派手に伸びるのか。
20を越えると、一気に魔法の取得が難しくなると。
良かったなフェイト、まだ4年はあるぜ」
「私は18よ、後2年しか無いわ」
「え!? そうなの!?」
「悪かったわね子供っぽくて! てか!
何度も言うけど余裕が無いっての!
この警鐘聞えてるでしょ!?」
「そりゃ聞えてるぜ、聞えてねぇなら
俺はこんなに猛烈早起きじゃねぇ」
「ん、眠い……でもうるさい……」
「よっぽど疲れてたらジュリアみたいに
まだ眠ってるんだろうがな。
ま、そこまで疲れてなかったって事か」
「ど、どうするの!? マグナ様!
とりあえず簡単な料理は用意しましたぁ!」
「おぉ、良い匂いがすると思ったら」
「ミントも随分と余裕な!」
「私の何処が余裕そうに見えてるのー!?
見てよ! 私、冷や汗ダラダラなのよー!?
ついでに顔も真っ青じゃ無いかしら!」
「そ、そうね、流石に」
「そうよ! 流石に今の私に余裕は無いのよ!?
全身全霊で今の私は焦りまくってるの!
だって! マグナ様に極上の朝食が用意できないのよ!?」
「そこの問題じゃ無いでしょうがぁ!」
実にミントっぽい理由で、少し笑った。
とりあえず焦ってるミントとフェイトを余所に
俺達はミントが用意した簡単な料理に手を付ける。
ふむふむ、珍しくスクランブルエッグだな。
スクランブルエッグとおにぎりか。
台所には色々と準備してあるが
即席で用意したのがこの料理か。
「いただきまーす」
「のんきに食うな!」
「ほれ、お前も食えよ」
「うむ、腹が減っては戦は出来ぬ。
空腹は良くないのじゃ、朝食は特に大事。
本来ならもっと手の込んだ物が食いたいところじゃが
今は仕方あるまい、用意して貰ったのじゃし
文句を言う所は何処にも無いのじゃがな」
「もう!」
俺達が食事に手を付けて、フェイトはミントが用意した
おにぎりだけを手に取り、部屋に走った。
「用意しながら食うつもりかのぅ」
「おっと、意外とうめーな、このスクランブルエッグも。
はは、サンキューミント、簡単な料理でもうめーぜ!」
「良かった! 喜んで貰えて!」
俺達がのんびりと飯を食べてると
玄関の扉が激しい音を立てて開いた。
「マグナ様! 警鐘です! 急いで!」
「ん、おはよー」
「って! 何食べてるんですかー!?
分かってます!? 状況分かってます!?
襲撃ですよ襲撃! 大惨事ですよ!?
国の危機ですよ!? 何でそんなのんきに!」
「腹が減っては戦は出来ぬのじゃ
ほれ、主も食え、にぎりめしだけでも良い。
フェイトもにぎりめしは食っておるし」
「いや、今はそれどころじゃ!」
「遠慮すんなよ」
「遠慮とかの話じゃないんですけど!?」
「っりゃー! マグナー!」
「おー? っと」
2階からフェイトが俺の服を投げてきた。
不意に飛んで来たが、俺はその服をキャッチ。
「飯に埃が入ったら」
「そんな事言ってる場合じゃ無いって言ってるでしょ!?
食べるなら食べるで早く食べなさいよ!」
「でもよー」
うとうとしてるシルフにソーセージを差し出した。
シルフはうとうととしながら俺が差し出した
ソーセージを口にくわえ、うとうととしながら食べた。
「ZZZ……あむあむ……ZZZ」
「寝ながら食うとは、器用な事をするのぅ」
「はは、可愛らしい」
「ほっこりしてる場合じゃ無いって!
早く食べなさいよ!」
「そ、そうですよ! 早くしてくださいよ!」
「へいへい、朝はゆっくりしたいんだがなぁ」
「まぁ、軽い運動にはなろう」
「ZZZ…は! ……美味しい……もぐもぐ」
「シルフ、眠いなら寝てて良いぜ?」
「ん、大丈夫……
私も一緒に居た方がきっとすぐ終わる。
魔法ですぐに終わらせて一緒に寝る」
「だな、うるせぇ中で寝るのは怠いか。
嫌な夢見そうだしな、じゃ、速攻終わらせるか」
「はい! シルフちゃんの外着!」
「じゃ、着せるぜ」
「んー」
シルフが両手を挙げたから
俺はシルフの服を脱がせて外着を着させた。
「当たり前の様に着替えさせるな!」
「だってシルフ眠そうだし」
「あ、あの、いや本当にその……
い、今、か、かなり急いでると言いますか
かなり切羽詰まってると言いますか……
その! そんなに余裕無い状況と言いますか!」
「大丈夫じゃろ、マグナー、
儂の着替えも手伝うのじゃ」
「お前は自分で出来るだろ?」
「出来るが面倒なのじゃぞ!? 特に背中!」
「収納すれば良いじゃん」
「確かに出来るが! 儂を自由にしても良いのじゃぞ!?」
「いや、今はシルフで手一杯だから」
「ぐぬぬぅ!」
「だから急ぎなさいよ馬鹿-!」
「あだー! 俺限定は酷いだろ!?
今はドリーズを叱るべきだろ!」
「良いから急げー! 私1人で行くわよ!?」
「そりゃ困るな、急ぐか」
さっさと俺はシルフの着替えを完了させて
ドリーズは渋々自分で服を着替えた。
俺も軽く着替えてさて、迎撃しに行くかな。




