表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/105

魔法の才能

受付の人に案内された奥地。

そこには水晶玉があった。

何人かの女の子が水晶玉を触って

少しして、がっくりして出て行く。


「水晶玉?」

「えぇ、水晶玉ね、あれは適性を測る水晶玉

 魔法適性があるかどうかを把握する道具よ。

 魔法適性がある場合は光り輝くの」

「光るんだ、なんで?」

「魔法を扱える性質がある魔力かどうか

 それを判断するための水晶です」

「え? 魔力の性質とかあるのか?」

「はい、男性の方が持つ魔力などは

 魔法を扱うのに適した魔力なのです。

 更に特殊な能力まで扱える程に

 個人によって、魔力の性質が違い


 男性は多種多様な特殊能力を得るのですが

 女性は魔法を扱うのに

 適した魔力でないことが多く

 女性の殆どは魔法を使えないのです」

「何でだ?」

「女性は子供を授かる為

 魔力は放つ性質では無く

 受け継ぐ性質、つまり内側に向う性質があるのです。

 内側に向う性質である為、あまり魔法を扱えません。

 

 ただ、過剰な魔力がある場合は

 内側に向っても魔力が溢れ出し

 外側に漏れ出すので、それが理由で魔法が使えます。


 男性の場合は魔力が外側に放たれるため

 その魔力を用いて魔法が扱えるのです」


よく分かんねぇ、だが、分かる事として

男性と女性じゃ魔力の流れ方が違うって事か?

女性は内側、自分の中心に向うのに対して

男性は外側、自分の外に向う魔力の流れなのか?


「ふむふむ、つまり魔力が大きい女子ならば

 魔法を扱えると言う事じゃな」

「はい」

「じゃあ、属性魔法は何なんだ?」

「属性魔法は魔力を無意識に変質させて放つのです。

 なので、適性というのは生まれ持った魔力を

 変質させやすい属性を区分して称してるのです」


女性の場合は受け継ぐ性質だと言ってたな。

つまりだ、魔法の適性とかっていうのは

どっちかというと、女の子に似ると言う事か。


「お話を聞いていれば分かると思いますが

 魔法の才能は女性に依存してます。

 つまりですね、魔法の才能を持つ女性が

 子供を生むと、その子供は魔法を扱えるのです」

「あ、だからあの紙に、お母さんが魔法を使えるかって」

「はい、シルフさんの場合は分からない、でしたね。

 これは仕方ないです、ご両親が魔法を扱えかどうか

 この魔法ギルドに来て無いと分かりませんし」

「ん、そうだね」


変な空気にさせないためなのだろう。

シルフは母さんの事を何も言わなかった。

死んでるからな……俺に聞かなかったのも

俺に嫌な思いをさせたくなかったからだろうな。


「では、こちらの水晶に触れてください。

 あ、お兄様は距離を取っていただければ。

 男性の方が無意識に放出している魔力で

 水晶が反応してしまう可能性もあります」

「そうだな」


とりあえず、シルフから距離を取る。

高い位置にある水晶だが

それは受付の人が低い位置に置いてくれた。


「ん」

「え!?」


シルフが水晶に触れると同時に

水晶が一瞬だけ虹色に光り輝き

内側に亀裂が入り、光りが止んだ。


「……綺麗だったけど眩しい…」

「す、水晶が破損……そ、そんな事が!」

「その、ご、ごめん……な、何もしてないけど…

 な、何か壊れちゃった…」

「い、いえ! 大丈夫です!」

「ふむ、まぁシルフじゃしな、壊れるじゃろう」

「じょ、冗談で言ったのに…

 シルフちゃんで壊れるなんて…」

「しょ、少々お待ちください!」


受付の人は慌ただしく部屋から出ていった。

とりあえずどうしようも無いから

俺達はこの場所で待つことにした。


「うーん、内側がヒビは入って壊れるのね」

「内側に過剰に力が入ったから破損したのじゃろう」

「綺麗だったわね-、虹色だったわー」

「しかしのぅ、これはシルフの適性

 ここの道具で測れるか怪しいのじゃ」

「だな、シルフがどの属性が得意なのか

 それを知りたかったんだが」

「しかし、シルフの才能は実に素晴らしいのじゃ。

 シルフの魔法の才能は継承されるのが確定じゃな。

 シルフが子を生むことになれば、凄い事じゃ」

「……子供、にーに?」

「ん? 何だ?」

「私、子供欲しい」

「お前には早いからな!? こ、子供って言うのは!

 20歳! そう、せめて20歳位にならないと

 生んだら危ないんだからな!」

「そうなんだ……じゃあ、後12年……」


変な知識がぁ! ドリーズか!? ドリーズが原因か!?


「よ、よせマグナ!

 その視線だけで死んでしまいそうじゃ!

 儂は悪くないと思うのじゃ! 多分!」

「お、お前だろ!? 追い出すぞマジで!」

「すまぬ! 許して欲しいのじゃ! この通り!」


ドリーズが全力で土下座をしてる。

くそう、そんな風に謝罪するなら変な事言うなよな!


「にーに、私が20歳になったら……子供」

「こ、子供ってのはな、兄妹で作ったら駄目なんだ!」

「え? そ、そうなの?」

「そんな小言で何言ってるんだよミント!

 聞えてるからな!? シルフも!」

「ご、ごめんなさい! マグナ様! 

 わ、私のお父さんって

 私のお姉ちゃんや妹達と子供作ってたから!

 何なら、私とも子供作ろうとしてたし!


 それが普通なのかなって思ってて!

 お兄ちゃんは妹と赤ちゃん作るのが

 普通の事なのかなって! 私は嫌だけど!」

「それが普通なら、にーにの子供」

「ミントー! 天然なのは分かるが言うなー!」

「あ-! ご、ごめんなさいマグナ様! 

 許してください許してください! 捨てないでー!」

「捨てねぇよ!?」

「はぁ……変な話題は止めなさいよね」


そんなぐだぐだした会話をしてると扉が開いた。

受付の人と一緒に、魔法使いっぽい帽子を被った子

ピンク色で、色々と可愛らしい装飾をしてる。

身長は結構低い気がするな。


「水晶が壊れるなんて凄い適性ね…

 えっと、そこの男? 実際、男でも

 水晶を魔力で壊すのは困難だけど…

 クソ、男のくせに生意気な…」

「い、いえ、その隣に居る妹さんが」

「大きい帽子……可愛い」

「え? これ? まぁあたしのお気に入りだけど」

「……」


シルフが大きい帽子に反応したな。

実際、あの帽子、城で出会った魔法使いの人よりも

可愛らしい、色々と装飾が付いてるしな。


「……ま、まぁ良いわ」

「ん」


シルフのキラキラ光線に押されたのか

彼女は頬を赤くしながら帽子を脱ぎ

シルフに被せてくれた。


「あ、ありがとう」

「べ、別に、じゃ、邪魔だから」

「えへへ、にーに、可愛い?」

「あぁ、可愛いぞ、シルフ」


シルフが笑顔で帽子を深く被った。


「可愛い……」


そんな姿を見た、あの帽子を被ってた子も

小さく可愛いと呟いた。


「いや、いやいや、今はそれどころじゃ。

 て言うか……何であんなに元気なの?

 クソ兄貴が居るのに? 何でまた。

 いや、あの子が強いからクソ兄貴が居たとしても

 全部ぶちのめしてきたに違いないわね。

 その割に、妙にその兄に懐いてるような気がするけど」

「あんたもクソ兄貴って、やっぱり男は嫌いか?」

「えぇそうよ! ふん、あたしは男が大っ嫌い!

 魔法を覚えてからはぶちのめしたのよ!

 ふん、魔法しか取り柄の無い雑魚め!

 その魔法でも男はあたしに勝てない!

 つまり男は全て雑魚なのよ!」

「むしろ、男が純粋に好きな女性はそういないわ。

 前も言ったけど、大体自分の兄や父親に襲われるし」

「ん、ありがと」


少しして満足したのか、シルフは帽子を返して

俺の背中に抱き付いて這い上がり、

いつもの場所へやって来た。


「甘えん坊だなぁ」

「落ち着くから…」

「……ま、まぁ良いわ! 羨ましくはないし!

 とにかくあなた、シルフで良いのよね」

「ん、シルフ」

「あなたが水晶を破壊したのよね?」

「わ、ワザとじゃ…」

「いえ、壊したことを起こってるわけじゃ無くて

 壊したのが凄いから話を聞いてるだけなの。

 後、なんで兄なんかに懐いてるのかも不明」

「私はにーにが好きだから…理由は無い」

「はは、ありがとなシルフ、俺も好きだぜ」

「くぅ…」


ちょっとだけ悔しそうな表情を見せながら

彼女はシルフに返して貰った帽子を被った。


「納得いかない、な、何よあんた!

 な、なんで妹に好かれてるのよ! おかしいわ!

 じ、実はあんたの正体、女なんじゃ無いの!?」

「え!? いや、俺は正真正銘の男だぜ?

 ほら、イケメンだろ? まぁイケメンの

 女の子も居るし、証拠を見せよう。

 ちょっとシルフ、目を隠しててな-

 ふふ、我が名刀を見せて」

「馬鹿やってんな!」

「あだー!」


全力でフェイトにぶん殴られた。


「何考えてるのよ!? アホなの!?」

「そ、そうよ!? アホなの!?」

「儂は見たかったのぅ、マグナの名刀」

「あんたもアホか!」

「ぬぉ!」


フェイトはこう言うネタに過剰反応するな。

まさか、ドリーズまで巻き込まれるとは。


「なな、ま、まま、まぁ、しょ、証明出来たわね

 お、男は雑魚なの、例外なく。

 あ、あっさり殴り倒されてるし!」

「にーに、もう良い?」

「あ、あぁ、もう良いぞ」


シルフは律儀に俺のお願いを聞いてたらしい。

ふふん、やはり可愛いな、俺の妹は。


「そうだフェイト、お前腕大丈夫か?」

「……えぇ、痛いわよ……やり過ぎたぁ

 ほ、骨は折れてないから大丈夫だけど…

 こ、今度から棒でぶん殴ろうかしら…」

「それでも俺は平気だろうが、絵面がヤバいぜ?」

「そ、そうよね…」


フェイトが右腕を痛そうに押さえてるな。

やっぱり全力でやったから痛かったんだろう。


「何であんた、い、痛がってんの?」

「い、痛いから……」

「な、殴ったのに?」

「い、岩を全力で殴れば痛いわ…」

「酷ぇな、岩なんかより堅ぇぞ? 俺」

「し、知ってる…超痛い…」

「まぁその、悪かったな、フェイト

 変な事言っちまって…」

「とりあえず、か、回復してあげるわ」


彼女がフェイトに触れると少しだけ手元が光り

フェイトの痛そうな表情がいつも通りに戻る。


「い、痛みが引いた…これが回復魔法…」

「えぇ、そうよ、あたしの適性は火と回復なの!

 天才なのよ、師匠にも褒められたわ!

 15歳で2種類は凄いのよ!

 特殊能力も開花させればあたしは最強!」


その言葉を聞き、俺は首をかしげるが

まぁ、シルフが天才以上に天才なのだろう。

そう言う訳でひとまずは納得する。


「2属性程度で天才とはのぅ」

「何よ! 魔法使えるだけでも凄いのよ!

 更には複数属性って言うのは天才なの!」

「そうなんだ」


シルフもちょっとだけ不思議そうな表情をしたが

あまり自分を誇示することは無かった。


「あ、あの……ジュリア様…」

「あぁ、そうね、属性適性よね」

「……いや、良い」

「は?」


属性適性とやらの試験があるらしいが

シルフはそれは良いと言った。

理由は何となく分かる、シルフが優しいからだ。


少なくともシルフは複数の属性魔法を扱える。

今、目の前にいる少女は自分を天才と称してるが

シルフは彼女以上の才能があることが確定してる。


そんな彼女がシルフの才能を見れば

嫌な思いをすることは確定だろう。

そう思ったから、シルフは良いと言った。


「なんで? 魔法の適性があるのが確定したのよ?

 属性の適性を調べれば、あなたも」

「んーん、良い、にーにが居るし…」

「駄目よ駄目駄目! 規則なのよこれ!

 魔法適性がある女の子はすっごく珍しいの!

 魔法適性がある女の子は国で重宝されるの!


 凄く色んな事が出来るのよ? お金も貰えるし

 頑張れば頑張るほど、褒賞だって貰える。


 好きな事も出来るし、屋敷や研究する施設も貰える。

 男よりも待遇良いのよ!?

 あなたはお兄さんより偉くなれるの!」


へぇ、男よりも待遇良いんだな。

実際、魔法を使える女の子はレアみたいだしな

この国でも10人しか居ないわけだし

数で言えば、恐らく男よりも少ねぇだろう。

扱いが良いのは当然か。


「にーにより偉くなる必要無い」

「で、でも! でも規則だし…

 これでやらなかったら、あたしが怒られるわ」

「……でも」

「だから、適性を測って」

「わ、分かった…」

「よし、じゃ、行きましょ!」


少し嫌そうにしながらだが、シルフは了承した。

俺達はシルフと一緒に、魔法ギルドの奥へ進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ