魔法ギルド
何とか争いならねぇで終わった。
一応、俺達は兵士達に案内されて
しばらく過ごす場所へ連れて行かれた。
俺達は護衛だが、
俺が男なのもあり姫様達と同じ屋敷では無く
屋敷のすぐ近くにある少し小さな家へ。
「……ドリーズ」
「なんじゃ?」
「あ、あんた本当に危なかったじゃ無いの!」
家に着いて、兵士達が何処かへ行った後
すぐにフェイトがドリーズを叱りつける。
ドリーズは両耳を塞いで
ちょっとだけ申し訳なさそうな表情をした。
「本当にあんた! キュリウスさんが
かなり温厚で優しかったから
何とか大問題にならなかったけど!
もしもあの人じゃなかったら!」
「そ、そう怒るな、悪かったと思っておる。
わ、儂だって一応は女王じゃし
意見という物があるのじゃ。
まぁ、あれは大人げないと思ったが」
「マグナが止めてなかったらどうなってたか!
あんたを静止できるのはマグナだけなのよ!?
特に機嫌悪そうな状態とか
マグナ以外で止められるかっての!」
まぁ、下手に刺激したら恐いしな。
あまり積極的には行動出来ないだろう。
「それはそうじゃが……ま、まぁ良いでは無いか。
結果、争いになる事も無かったし
あやつも了承してくれたしのぅ」
「マグナのお陰でしょうに。
てか、マグナが意外と知的なの驚いたわ…」
「俺を何だと思ってんだよ」
だが、実際俺もちょっと驚いてると言うね。
あんな場面であんな風に言えるとは思わなかった。
結構無意識だったが、実は俺、頭良いのかもな!
「実際、俺も意外だと思ったぜ、やっぱ意外と
俺って頭良いのかもしれねぇな!」
「あぁもう」
これ以上はあまり言う必要も無いと感じたのか
フェイトはあまり俺の言葉に反応しなかった。
こいつも結構緊張から解放されて
助かったと思ってるんだろうな。
「まぁ、何とか難を逃れたわけだし
とりあえず、俺達は俺達の目的を達成しに行くか」
「目的? 何だっけ……」
「シルフの魔法を鍛えるんだ! さぁ、行こうぜ!」
「あ、そ、そうね、わ、忘れてたわ…色々あって。
でも良いのかしら……と、とりあえずマグナ
リスティア姫様に了承を貰ってからよ?」
「あぁ、そりゃ分かってる」
俺達はひとまずリスティア姫様の屋敷へ移動。
すぐ近くだし、ちょっと歩けばいけるしな。
そして、この話をした結果
リスティア姫様はあっさりと了承。
俺達は全員で魔法を鍛える場所へ向う。
「じゃあ、案内するわね、魔法ギルド」
「何だよそれ、魔法ギルドって」
「魔法を使いたい人が集う場所でね。
一応、無料で開放されてるから
才能を測ったりする事も出来るし
結構有意義だと思うわ。
あ、男の魔法適性も測れるらしいから
あんたも測ってみたら?」
「俺が測ったら、多分測定器が壊れるぜ!
知らねぇけどな!」
「妙な自信を…まぁ、試せば分かるわ
流石に壊れることは無いと思うけどね」
うし、フェイトの案内にしたがって
魔法ギルドとやらにやって来たわけだが
男は何処にも居ないんだな、男も測れるらしいから
何人かはいると思ったんだが…
「意外と男とか居ねぇのな」
「男が魔法に興味あるかっての。
どうせ使えるのにわざわざ調べる必要無いし」
男は基本的に魔法が使えるらしいからな。
俺はサッパリ使わないが。
「てか、ドリーズも来るのね」
「当然じゃ、人の持つ魔法という技術。
儂も興味は十分あるのじゃ」
ドリーズって、かなり好奇心旺盛だしな。
努力家で好奇心旺盛で頭も良いと。
こいつ、本当に魔物なのか疑わしいよな。
魔物の女王ってのは、全員こいつみたいになるのか?
だとすりゃ、人類に勝ち目がねぇのも分かる。
長い時を生きて、努力家で
知識の収集も怠ることが無く
高い身体能力とか、そりゃ強ぇよ。
「ようこそ、魔法ギルドへ」
俺達が魔法ギルドに入ると同時に歓迎される。
受付の何人かは俺の方を見てギョッとしてる。
「あ、やっぱり男ってレアなのか?」
「は、はい、魔法ギルドが設立されて
だ、男性の方が来られたのは初です…」
「え? 90年間男来てないの?」
「い、いえ、10年間です…はい」
「10年? シャンデルナの賢者が90だろ?」
「シャンデルナ様が女性でも魔法が扱える方法を
発見されたのは30年前でして
国がその技術を正式に発展させ
市民に提供できるようになったのは10年前なのです」
「ふーん」
まぁそうか、90って、賢者の年齢だもんな。
そっから技術発見が30年前、60で見つけたのか。
すげーな、20から研究をしたと仮定しても
40年間もの間だ、その方法を研究できたのか。
目標を持って、それを続ける事が出来るのは
マジでスゲー奴しか居ねぇだろうな。
「ほぅ、流石は賢者と言われておるだけはある。
短い時しか生きられぬ人の身でありながら
その生涯全てを魔法に注いだと言う事か。
それも、自らだけが女子で魔法を扱えると言う
愉悦に溺れることも無く
同じ女子にも魔法を分け与えるための技術を
その生涯を賭して見つけ出すとは、実に素晴らしい」
当然だが、ドリーズはその生き様を評価したな。
努力が大好きなこいつが反応するのは当然だ。
「そうよね、私も尊敬するわ。
凄い才能を持って生まれたというのに
その才能を自分の為だけに使うんじゃ無くて
他の人達の為に使ったんだから」
「そうよね! 格好いいわ! 私も見習って
生涯全てをマグナ様に捧げるわ!」
「いや、それとこれとは違うわよ、うん」
生涯全てを捧げて貰うのは、ちょっと重いかな。
自由に生きて貰っても構わないし。
「えぇ、私達もシャンデルナ様を尊敬しております。
さて、今日のご用件は何でしょう?
フェイト様は前、ここに来られたこともあるので
今日は、そちらの旦那様の魔法適性を」
「旦那じゃ無いから!」
「え!? そうなのですか!? し、失礼しました!
あ、あまりにもお似合いだったので!
凄く仲が良さそうでしたし!」
「大人しくマグナの子を生めば良かろう」
「誰が生むか!」
「うぅ、私もマグナ様の赤ちゃん欲しいわぁ…
マグナ様、全然襲ってくれないの…
毎日勝負様の下着を履いてるのに!」
「そう言う話をここでするな-!」
……ふふ、何故俺はミントに手を出していないのだろう。
正直、向こうもいつでもウェルカムって感じだし
やらせてくれと言えばやらせてくれるだろうが
……もしや、俺はへたれなのでは無かろうか!?
「もうこの話はお終いよお終い!
今日、ここに来たのは適性を測る為!」
「あ、ま、魔法適性ですか?」
「そうよ、こいつと、後この子の適性」
強引に話を戻して、会話を再開させたな。
ま、まぁ、それが本来の目的だしな。
「そうだな、1番の目的は俺の妹
シルフって言うんだけど」
俺はシルフを抱き上げて、受付の人達に見せた。
シルフは受付の人達に向けてピースしてる。
表情は見えねぇが、多分表情は変わってねぇだろう。
てか、シルフピース好きだな、可愛いから良いけど。
「私、適性知りたい」
「て、適性検査ですか、分かりました。
では、まずは軽く問診を行なわせていただきます。
おほん、では、興味がある属性魔法等はありますか?」
「無い、どうせ全部使えるし」
「……え?」
「どれが1番使えるか知りたいだけ。
あ、水属性は意外と使う気がする」
「み、水属性で、ですか」
シルフは結構水属性を主力に使うからな。
とりあえず俺はシルフを抱き上げたまま
カウンターの近くまで運んだ。
シルフはカウンターの近くまで来ると
両手をカウンターに乗せた。
「フェイト、あそこにある
チョイ高い椅子持ってきてくれ」
「わ、分かったわ」
フェイトが少し高めの椅子を持ってきてくれた。
俺はその椅子に座る。
「あんたが座るの!?」
「あぁ、丁度良いだろ?」
シルフは俺の膝に座ってカウンターを見てる。
ただの椅子だとシルフは立たないと行けないが
それだとしんどいだろうからな。
例え多少高い椅子だったとして座高的に無理だ。
だが、俺がこのサイズの椅子に座り
シルフが俺の膝に座れば丁度良いのだ。
「丁度良いのね…よく分かるわね、そんな」
「そりゃな、シルフの事は良く分かってるし」
「ん、ありがとにーに」
シルフが俺の膝に座り、カウンターを見てる。
受付の人は、少しだけ顔を赤くしてた。
「お前らも適当に座っててくれ」
「わ、分かったわ」
うし、じゃあ、問診とやらをして貰う。
「で、何を答えれば良いの?」
「あ、す、済みません、ちょっと待って下さいね」
受付の人が、カウンターに問診票を出す。
簡単な2択、はいといいえが書いてある。
「その、読めますか?」
「……大丈夫、読める」
バスロミアと文字も一緒なんだな。
やっぱり近い国だからかな。
「ふむふむふむふふ」
シルフが楽しそうに色々とチェックを入れてる。
表情はあまり変わってないんだろうが
些細な行動だけで、嬉しそうなのは分かった。
てか、尻尾が滅茶苦茶動いてるからな。
っと、シルフが尻尾を俺の足に絡めたな。
楽しんでるときは、結構こういうことをする。
後ろで見てるだけでも耳がピョコピョコ動き
楽しそうに色々と書いてるのが分かる。
「ん、出来た」
「あ、はい、早いですね。
では、少々お待ちください」
問診票を受け取り、受付の人は奥に下がる
俺の問診票とかは無いのだろうか?
と思ったが、多分これ女性で適性があるか
それを調べるための問診票だったんだろうな。
シルフは一応魔法を使えるというのは伝えたが
形式上はやっておかない取って事でやったのかな。
「にーに」
「ん?」
「何でも無い、ちょっと嬉しくて…」
「嬉しい?」
「ん、久しぶりににーにのお膝に座った。
……嬉しい」
「はは、言ってくれればいつでもやってやるぜ?
遠慮することはねぇ、いくらでも甘えてくれ」
「ん、と」
そんな会話をして、しばらくして
受付の人がやって来て
魔法ギルドの奥へ案内してくれた。




