悔しい思い
さて、ゴブリン襲撃を撃退して
やっとシャンデルナに到着だしな。
全く苦労したとしか言えねぇな。
ゴブリンアーミーだとか
世界規模のイベントが来るとはね。
全く予想できなかったっての。
「本当に運が良かったのぅ、この国は」
姫様と合流して、この国の城へ向って歩いてる
その道中にドリーズが呟いた。
まぁ、実際運が良かったとは思うが。
俺達が来なきゃ、あれ攻め込まれてただろ。
あの投石はあまり対処出来ねぇし。
「そ、そうね、あの大岩は無理があるし」
まだ少し疲労が残ってるフェイトが答える。
「ふぇ、フェイトちゃん、だ、大丈夫?」
「だ、大丈夫よ、見ての通り怪我1つ無いわ」
「凄いわね、流石フェイトちゃん!」
「……いや、マグナのお陰よ」
結構フェイトは危ないところあったから。
まぁ、当然俺はその全部を迎撃したわけだが。
当然の事をしたまでだ。
女の子を守るのは男の役目だからな。
「マグナのお陰で、私もこの国の兵士も
誰1人として、怪我をしてないわ……
マグナが守ろうとしなかったのは、
ドリーズだけよ」
「当然じゃ、ゴブリン如きの攻撃が
この儂に通るはずも無い」
ドリーズだけは怪我の心配が無かったから
俺は守るような素振りはしてねぇんだよな。
むしろ、守ろうとしたらドリーズに失礼だ。
「……正直、本当に不甲斐ないわ。
私はマグナの護衛なのよ、名目とは言え
私はこいつを守る立場に居るのに
守られて……頼りにもされて無い」
「いや、頼りにしてないって事はねぇぞ?
頼りにしてねぇなら、俺はお前を戦いには」
「私は弱いわ、シルフちゃんほどの殲滅力も無い
ドリーズのような機動力も防御力も無い。
そして、あんたほどに強くない。
情け無い、情け無いのよ、私は……」
「そうぼやくでない、悔いることは無かろう。
主は確かに弱い、それは当然じゃろう。
魔法の才も無く、種族の優位性も無い。
主はただの人であり、特殊な種族では無い。
人の優位性は魔法の有無程度じゃが
主にはその魔法の優位性すら無い。
じゃが、主はそのハンデを背負ってもなお
努力し、戦おうとしておる、十分じゃろ」
「あぁ、お前はよく頑張ってくれてるよ。
ずっと馬車に残って貰ってたのだって
別にお前が邪魔だからって訳じゃねぇ
むしろ、お前を信頼して護衛して貰ってたんだ」
だが、俺達の慰めを聞いての
フェイトの悔しそうな表情は戻らなかった。
これがフェイトだと言う事は分かる。
そして、フェイトの強さはその後だというのも分かる。
フェイトは負けず嫌いだ、絶対に負けたくないと
そう思って必死に努力が出来るのがフェイトだ。
「フェイトちゃん、落ち込むことは無いわよ!
だって、私はフェイトちゃんと一緒に居て
何か、凄く安心したんだから!」
「ミント、それはその……励ましになるの?」
「誰かの隣に居て、その誰かを安心させられるのは
特別な人にしか出来ないに決ってるわ!
だから、フェイトちゃんは特別なのよ!
それに、フェイトちゃんは頑張り屋さんでしょ?
頑張ればフェイトちゃんは
とても凄い子になれるに違いないわ!」
ミントは疑ってるような雰囲気は何処にも無く
満面の笑みでフェイトを励ましていた。
自分が思ってる全ての思いを包み隠さずに伝える。
その思いが伝わったのか、フェイトが僅かに微笑んだ。
これが、ミントの魅力なんだってのが分かるな。
笑顔で励まし、相手を疑わないで全てを伝える。
こう言う励ましが、きっと1番相手に響く。
「……そうね、えぇ、私にはそれしか出来ないわ。
でも、それだけなら誰よりも出来る。
そう疑わないで今までやって来たんだし」
「うん!」
「くく、あの娘も、中々良い魅力を持っておるな」
「当然だ、俺のハーレムの一員だぜ?
魅力的な子を集めてるんだからな」
「じゃが、まだフェイトとミントと儂しかおらぬ
シルフは妹じゃし、お主は手を出すまい」
「そうだなぁ、もっと増やしたいんだがなぁ。
ま、頑張って魅力的な女の子を探すまでだ。
安住の地はある訳だし、後は好きに探せるしな」
しれっとドリーズが自分をカウントに入れてたが
まぁ、別に強く否定する必要はねぇだろう。
多分、こいつずっと付いてくるだろうしな。
そんで、俺も無理矢理追い出すこともねぇだろう。
「さて、そろそろ城の近くだな」
「そうですね……しかし」
兵士達が少しだけ自分の服に目を向ける。
うん、鎧無いからな、今の状態。
「鎧が無いのが気になるか?」
「はい、バスロミアの代表できたのに
これでは……あの鎧が無いと…」
「……あ、これ」
そう言って、フェイトがマジックバックから
バスロミアの鎧を取り出した。
「え!? こ、これは!?」
「シャナさんから預ってたの、あなた達の鎧。
着替えね、戦いで鎧が損傷した場合
その鎧を着てシャンデルナのトップに会うのは
ちょっと良くないかもって事で預ってたの。
忘れてたわ、ちょっとゴブリンアーミーとか
色々とありすぎて、はぁ、不甲斐ない」
「あ、ありがとうございます!」
フェイトから受け取った鎧を兵士達は装備した。
だが、武器などは装備してねぇな。
まぁ、これから国のトップに会うわけだし
武器なんて持てる訳ねぇか。
「すみません、お待たせしました」
「いえ、問題ありません。では、行きましょう」
「はい!」
兵士達が鎧を着替えたのを確認して
姫様が軽く号令をする。
問題は俺達がどうするからな。
「俺達はどうすっかなぁ、一緒に行くか?」
「はい、一緒に来ていただきたいのです。
護衛として来ていただいてるわけですし
それに、顔を見せてないと問題も起こりかねません」
「そうね、あんたは男だし、領主に会うべきよ」
「領主って?」
領主ってのは、ほぼ王様みたいな感じじゃ?
でも、フェイトの話だとシャンデルナは確か
国王とかはいなかったんじゃ?
「シャンデルナ共和国の現トップは
同盟長と呼ぶそうだけど。
決った後は10年間、その人物がトップに君臨。
最長で30年間で、30年間選ばれ続けた場合は
その人物が自主的に同盟長を止めると宣言するまで
基本的にその人物が同盟長として君臨するルールよ。
で、この状態であれば、
その人物の名称は同盟長から領主に変わるわ。
国王とは違うけど、実質王みたいな形ね。
領主はさっき言ったとおり、基本的には
自主的に領主を引退するまではそのままだけど
例外として、国民の七割が領主を降格するように
投票をした場合、領主はトップから落ちるらしいの。
まぁ、現状そんな事は無いから優秀な人なんでしょう」
はぁ、そう言うルールがあるんだな、知らなかった。
まぁ、そう言うルールで長いこと君臨してるって事は
優秀な人物って事か。
「なる程、じゃあ、今の同盟長とやらは
その30年間同盟長として統治してたって事か」
「えぇ、そうらしいわ。ま、私は話を聞いただけで
細かい部分は知らないんだけどね」
「はい、当代の領主である、キュリウス様は
非常に優秀な領主なのです」
「キュリウスって男か?」
「いえ、女性ですね、
ただ男性として育てられたそうです」
じゃあ女か、でも、年齢的に考えて
結構高齢だろうな、10歳で当選とかはねぇだろうし
早くても15位だろうしな。
そっから30年だし、
どう考えても40代後半から50代だろう。
「なる程、ある程度は分かった。じゃ、行くか。
俺はあまり喋らないでおこう」
「そうね、あんた敬語喋れないしね」
「儂もじゃな、何も言わぬ。
そうじゃ、儂の服装などは大丈夫かのぅ」
ドリーズの服はシルフのお下がりだからな。
まぁ、一応は落ち着いた感じだし多分大丈夫だ。
「あんた、元は何も着てなかったからね…」
「大事な部分は全て鱗で隠しておったから問題は無かろう」
「問題しか無いわよ。まぁ、そうね、着替えもあるし」
そう言って、フェイトが結構硬い服を取り出した。
「そんなのあるんだ」
「えぇ、シャナさんから買っておけと言われてね
多分、城の中に更衣室がある筈よ」
「分かった」
とりあえず、俺達は姫様達と一緒に城へ行き
そこの門番から案内されて更衣室で着替えた。
よし、じゃ、ここのトップに会いに行こうか。




