護衛の道中
しかし、結構魔物が多いようだな。
護衛を開始してから3日間
かなりの魔物が襲撃してきた。
一応、街道を通ってるはずなのによ。
「ま、魔物……多いですね…」
「だなー」
一緒に歩いてる護衛の兵士がそう呟く。
実際、魔物の数は結構多いと言える。
「シャンデルナは魔物が多いと聞きますが…
ここまで多いのは想定外ですわ…」
馬車の中に居るリスティア姫の言葉だ。
俺はあまり詳しくなかったが
魔物が多い地方なんだな、シャンデルナ。
と言う事は、シャンデルナの兵士は強いのか。
「魔物が多いって事は
シャンデルナは兵士の質が良いのか?」
「そう言う話は良く聞きます。
しかし、シャンデルナでも
シャナ様程に強い兵士は居ないとか」
「そうじゃろうな、シャナは
ドラゴンと1対1で戦って勝てるのじゃろ?
魔法も無しにその域に達せられる者は
そうはおらぬからな、実に見事と言える」
俺達の会話を引き裂くように巨大な岩石が降ってきた。
誰かが投擲したような巨大な岩だな。
「岩!? デカい!」
「おー、魔物か?」
とりあえず、俺はその岩に向って飛び込み
岩をぶん殴って破壊する。
俺が砕いた岩が周囲に飛び散って行くが
割と強めに殴って、馬車には飛ばねぇようにした。
「ん」
僅か飛んでしまった岩の石片が出たが
そこはシルフが防御の魔法で防いでくれた。
これで負傷者はゼロ、馬車も傷1つ付いてねぇ。
「シルフがおるから、
砕く必要が無かったかもしれぬな」
「私の防御魔法……硬さ分からない」
「やはり使う機会はほぼ無かったのか?」
「うん、にーにが強い魔物と戦う時に
使う事はあるけど、攻撃が来たこと無い」
「当然だな、まぁ今回はちょっとそっちに行ったが」
「無理もあるまい、石片まで制御は難しいからのぅ」
シルフの防御魔法がどれ程の硬さなのかは知らない。
興味はあるが、多分俺が殴ったら壊れるしな。
「……」
「問題は、誰が投げてきたかだが」
そんな会話と同時に、再び巨大な岩が降ってきた。
「ふむ、どうやら本気で狙ってきておる様じゃな」
「まぐれで2回はねぇだろうしよ」
今回も同じ様に巨大な岩を粉砕。
飛び散った破片を再びシルフが防いだ。
「ではマグナ、行ってくるのじゃ。
この辺りはもう部下達も手は出さぬはず。
儂の方で始末しておこう」
「ん、分かった」
「儂が帰るまで、何度か岩が降ってくるじゃろう。
迎撃は変わらずお主の方でやっておいてくれ」
「おぅ、任せな」
会話の後、ドリーズは翼を大きく広げ飛び上がる。
上空から周囲をきょろきょろと見てた。
少しして、再び巨大な岩が飛んで来たが
どうやら、狙いは上空のドリーズらしい。
「ふむ、あそこか」
岩をあっさりと避けて、即座に何処かに降下した。
ドリーズめがけて飛んでいった岩は
俺達の近くには落下したが
直撃する軌道では無かったから放置だ。
「どんな魔物だろう」
「岩を投げるくらいだし巨人的な?」
ドリーズが移動して、今度は大量の小さいのが来た。
「ゴブリン!? この量は!
それに、あの青い個体は! 強化個体じゃ!」
「ゴブリン……青いの久しぶりに見た」
「全方位からの攻撃か、まぁ纏めて潰すかな。
っし、俺は一応、全体攻撃とかは出来なくてな。
いや、やろうと思えば出来るんだが、問題として
周囲巻き込むからな、シルフ1人だけなら
俺が背負ってる間に纏めて吹っ飛ばせば良いが
今は馬車もある。悪いが木っ端微塵にするぜ」
地面を蹴り、ゴブリンを1匹ぶん殴る。
そのまま派手に移動しながらゴブリンを殴る。
ゴブリンを引っ捕まえて、纏めながら走りって
周囲に展開するゴブリンを巻き込んで
青いゴブリンに纏めた小さい奴らを全力でぶん投げ
即座に間合いを詰めて頭を吹っ飛ばして決着。
「まぁ、魔物は消えるからまだマシだが。
消えねぇ奴だったら血まみれだったかもな」
頭が吹っ飛んだ青いゴブリンがぶっ倒れ
完全に消滅するところを見た。
「い、一瞬……」
「あ、う、後ろ!」
「赤いのも久々に見た」
赤いゴブリンもいるんだな、久々に見たぜ。
前にもあったな、ゴブリンの群れが湧いてきたの。
そん時はシルフを背負って全部吹き飛ばしたが。
「ふむ、どうやらゴブリン共の群れらしい」
小さな言葉が聞えると同時に背後から
爆音みたいなデカい音が響き
周囲に土とかが飛び散る。
後ろを見ると、ドリーズの姿があった。
その手には、白いゴブリンの頭がある。
「ゴブリンの生首を持ってるとか趣味悪いな」
「くく、討ち取ったという証じゃよ。
ま、所詮はホワイトゴブリンの首じゃ。
大して称賛されるような功績では無いがのぅ」
そこまで行った後に、手に持ってるゴブリンの頭を
後ろに放り投げた。
投げられた首が転がり、ゆっくりと消滅する。
「ホワイトゴブリン……あぁ、そう言えば居たな。
無駄にでかい奴だろ? 確か」
「知っておるのか、中々レアじゃと言うのに。
ま、ゴブリンの群れ、ゴブリンアーミーとでも呼ぶか
100年に1度生まれるゴブリンの王。
そのゴブリンの王を中心に生まれたゴブリンの群れ。
聞いた話では、ゴブリンアーミーによって滅ぶ国は多い。
まぁ、儂らが襲撃するほどの被害では無かろう。
儂らは国を焼き払うが、奴らは制圧をするだけじゃ。
国が滅ぶと言う被害はどちらも確定と言えるしのぅ」
「そ、その話は確かお父様から聞いたことが…」
ゴブリンアーミーとやらの話かな。
俺は聞いたこと全くねぇんだが。
「1種族の女王が生まれる事は多いのじゃ。
儂もその例じゃからな。
儂の場合は400年以上君臨しておるが
ゴブリンの女王は大体滅んでおる。
理由はシンプルでのぅ、好戦的じゃからじゃ。
人の国を征した後、その国を中心として
積極的に他の所へ攻撃を仕掛けるのじゃ。
その結果、人達が団結して滅ぼしに行く。
その度に人間達にも甚大な被害は出るが
まぁ、儂には関係無い話じゃったから
1度も介入をした事は無いのじゃ」
「そうか、100年に1度ならお前はこれで4回目か」
「いや、5回目じゃな、今回で」
「お前、500年も生きてんの?」
「まだ400年じゃよ、端数は覚えておらぬ」
「じゃあ、実際はもっと歳食ってると」
「うむ、しかし子を作ったことは無いのじゃ。
儂より強い奴がおらぬから当然じゃな。
と言う訳でマグナよ、400年以上生きておる
この儂に、そろそろ子を孕ませて欲しいのじゃ」
「何度も言うが、どれだけお前が長寿だったとしても
流石に容姿幼いお前に欲情はしねぇ」
「本当に頼むのじゃ! この期を逃せば!
儂はもう2度と子を孕めぬでは無いか!
お主ほどの実力者はもう現われぬじゃろ!?」
「そう言われても、俺にだってほら
譲れない一線ってのはあるし」
「頼むー! 400年じゃぞ!? 400年!
子を産みたいのじゃー! 子孫を残したいのじゃー!
儂の代で竜人種が滅ぶぞ!? 滅んでしまうぞ!?」
「そう言われてもだな」
流石に子供相手に欲情はしねぇというか。
ドリーズ相手にそう言う気持ちにはならないというか
罪悪感がスゲーし、そう簡単にはなぁ。
それに、シルフに変な知識が付いても困るし。
「てか、お前が妥協すれば子供は」
「お主に譲れない部分がある様に!
儂にも譲れない部分はある!
せめて儂と互角、理想は儂より遙かに強い人のオス!
妥協案である、儂と互角のオスすら出て来ぬ!
ドラゴンにもおらぬし、当然人にもおらぬ!
じゃが! お主は儂の理想である、
儂より遙かに強い人のオスじゃ!
儂が400年も待った理想のオスなのじゃ!」
かなりの形相でドリーズが飛びついてきた
ドリーズがかなり近い距離で色々と言ってる。
「い、いや、そ、そうは言ってもだな…」
「儂は凄いぞ!? 女王じゃぞ女王! ドラゴンの!
お主が望めば金銀財宝を全て渡せるのじゃ!
人の国を落として、お主の国にすることも出来る!
お主が本気を出せば容易じゃろうが
儂が手を貸せば、より円滑に支配できるのじゃ!
当然、お主が他のメスを孕ませる事に何も言わぬ!
何なら! お主が望んだメスを連れてくる!
じゃから、儂に子を宿すのじゃー!」
「さ、流石に色々と勢いスゲーが
俺はそう言う支配に興味ねーし
金銀財宝が無くても、
シルフと生きてるだけで満足だ。
女の子も自力で回って
気に入った子をハーレムにしたいし…」
そんな会話の間だ、ドリーズの後ろに
今度は黒っぽいゴブリンが見えた。
「黒いのが!」
「邪魔じゃグズが!」
会話の邪魔を少しでもされるのが嫌だったのか
ドリーズが即座に俺から離れて
八つ当たり気味に黒いゴブリンをバラバラにした。
そのまま、再び俺に飛びついてくる。
「頼むのじゃー! 何でもする!
何でもするから、儂にお主の子を産ませてくれー!」
「流石に暴走しすぎだろドリーズ!
い、一応、俺達って護衛だからな!?
姫様もシルフも話し聞いてんだから!
これ以上、その話すんなよ!」
「う、うぐぐ、うぐぐぅ、背が高くなれば…
し、しかし、儂は400年以上、この身長じゃ。
仕方あるまい、力尽くが無理なのは明白。
ならば、マグナが手を出したくなるようにせねば。
儂のろりぼでぃーにメロメロにさせるのじゃ!」
嫌な宣言を聞いた気がするが、これ以上何も言うまい。
てか、下手に色々と言ったら、更に話拗れる。
シルフも居るし、姫様も居るこの状況で
これ以上、ドリーズを暴走させるわけにはいかねぇな。




