騎士達の訓練
うし、ひとまずミントの料理を食って
1日家でのんびりして。
そう言えば、シャナかリスティア姫に
またどっか行くって伝えた方が良いかもな。
とりあえず、シャナに会いに行くか。
「じゃ、俺はシャナに話をしようか」
「そうね、確かに必要でしょう」
「シルフは確定として、
フェイト、お前は来るか?」
「行くわよ、あんた1人じゃ不安でしょうが無い」
「そ、そりゃまぁ、そうだな、ドリーズは?」
「うむ、儂は少し休むのじゃ、疲れたしのぅ」
シルフとあの規模で戦ってたしな。
流石のドリーズも疲労は蓄積されてたんだろう。
じゃ、フェイトとシルフの3人で行くか。
ミントも前回と同じ理由で行かないだろうしな。
とりあえず、いつも通りの流れでシャナを呼んで貰った。
もうね、ここの兵士達は普通に俺の話を聞いてくれる。
シャナやリスティア姫も普通に受け答えしてくれてるし
やっぱり大事にされてるんだなってのが分かる。
やっぱ男ってのは貴重なんだろうな。
「ふん!」
「うぅ!」
シャナが居ると言う場所に案内して貰ったが。
シャナが兵士達相手に稽古を付けてる最中だった。
「訓練中だったのね、声かけましょうか」
「いや、まだ良いだろ、兵士達を扱いてるところを
改めて見るのも良いだろうし」
「そうね、私としても興味あるし」
シャナは30人の兵士と同時交戦してた。
どうやら、今回は連携の練習らしい。
「お前達! 今は連携の訓練だ、1人1人では無意味!
協力し、私を追い込むように立ち回れ!
遠慮する必要は無い、これは訓練だぞ!」
「は、はい!」
「さぁ、来い! 連携において重要なのは役割だ!
誰が私の注意を惹きつけ攻撃を受けるか!
誰が私の隙を突き、攻撃を叩き込むかを考えよ!
後方からの支援も躊躇わず行なえ!
弓兵の役割は、相手の妨害だと言う事を忘れるな!」
「りょ、了解です!」
シャナの注意を惹く役割は10人らしい。
装備的に弓兵は15人、奇襲は5人って所か。
兵士達は陣形を整えて、僅かに左右に広がった。
「さぁ、こい!」
「行きます!」
前衛の5人がシャナに駆け寄り、シャナへ仕掛ける。
シャナは前衛の攻撃を当たり前の様に避けてる。
後方からの攻撃だって、当たり前の様に捌き
全く動揺してる様子はなかった。
「はぁ!」
2陣の前衛がシャナへ攻撃を仕掛け
最初の5人はシャナの背後へと回る。
包囲されてる状態だな、本来であれば
こんな状態にゃならねぇんだろうが
訓練だからなのか、あえて作戦に乗ってる感じだな。
「包囲は強敵相手に正しい判断だ」
「な!」
ワザと乗ったとは言え、この程度の作戦では無意味と
そう伝えるためなのだろう、10人の攻撃を
至極当然の様に避け、一瞬で10人を攻撃した。
「だが、あまりにも格上相手ではあまり得策とは言えぬ。
攻撃を避けられた際の同士討ちも可能性にあり
1点突破をされてしまう可能性もある。
更にほぼ確実に弓兵の邪魔になるだろう。
邪魔な的が増え、弾幕が薄くなり行動阻害が無意味になる。
それでは格上相手にはあまりにも愚手!」
「うぅ!」
「格上相手に立ち回る際は奇襲を主軸にせよ!
奇襲部隊も場合によっては仲間を見捨てる覚悟で
相手の大きな隙に合わせ、攻撃をしなくてはならない!」
圧倒的格上には奇襲を主軸に立ち回れってのは
実にシャナらしい指導の仕方と言えるな。
俺と戦った時も、シャナは奇襲を主軸にしてたな。
接近は不味いと判断し、即座に距離を取り
素早く動き回ってナイフを投げて俺を翻弄して
隙を見せた瞬間に投げナイフで投げナイフを隠しての攻撃。
その攻撃が俺の防御力の前じゃ無意味だと判断した後は
再び素早く動き回り、全方位からの攻撃から
一瞬隙があると判断して間合いを詰めての接近攻撃だ。
俺以外なら、あの攻撃でやられてただろうな。
シャナ程の実力であれば、陽動と奇襲の両方を
自分1人で行なう事が出来るだろうが
普通の兵士にゃ無理な話だ。
だから、連携をして、擬似的にその立ち回りを
再現できるように教え込んでる感じだな。
「良いか! 我々は国を守る為の盾であり矛だ!
仲間を失ったとしても、必ず国を守らねばならぬ!
仲間を見捨てたくないと思うのであれば
ひたすらに努力し! 自らを磨き上げろ!
だが、今のお前達にはそれ程の力は無い!
ならば、例え非情と罵られようとも
必ず勝てる方法を模索し、鍛えよ!」
「は、はい……諦めません、私は……
つ、強くなります! か、必ず!」
「あぁ、それで良い、強くなるんだ。
だが、時間というのはお前達が強くなるまで
待ってくれるような物ではない。
非常事態は必ず起こるだろう。
その時に、仲間を見捨ててでも勝利を掴める様
覚悟をすることを忘れるな!」
「……はい」
兵士達は少し暗い表情をしてるな。
だが、実際その通りとしか言えねぇってな。
何かがあったときに強くなかった場合
どうしても負けられねぇときは仲間を見捨ててでも
勝つ事を選ばねぇと駄目だからな。
それが兵士って奴なんだろう。
「では、このままもう一度……と、言いたいところだが
どうやら、お客様が来ているようでな。
このまま君達は連携の練習をしておいてくれ」
「え? お、お客様……ですか?」
「あぁ」
シャナがこちらに視線を向けた。
やっぱり気付いてた感じだな。
流石はシャナって感じがする。
「ま、マグナ様にフェイトさんが、い、いつの間に」
「やっぱ気付いてたんだな、流石シャナだ」
「えぇ、お待たせしてしまい申し訳ありません。
して、如何でしたか? 部下達の戦いは」
「まぁ、そりゃお前と比べりゃ全然だったな。
お前はその立ち回りを1人で余裕で出来るのに
部下達は30人でも出来ないんだしな。
お前の強さってのがよく分かるよ」
「私も鍛えている身の上ですからね。
しかし、その立ち回りでもあなたには
傷1つ付けることが出来ませんでしたが」
シャナが兜を外しながら俺を称賛してくれた。
とは言え、立ち振る舞いから隙は無いように見える。
やっぱり鍛えてるだけはあるよなぁ。
「そりゃな、俺は最強だからよ。
ま、兵士の連中に言っておくが
何、マジに困ったときは逃げろよな。
何も死ぬ事はねぇ、持ちこたえてくれれば
俺が行って全部何とかしてやるからよ。
死んじまったら努力もクソもねぇからな。
ヤベぇ時はヤベぇ奴に頼るのが1番だ。
どうしても逃げられねぇとき以外は
命を投げ出さねぇようにしときな。
まぁ、シャナの教えとは違うが」
シャナの場合は敵わない相手が出て来たときは
例え仲間を犠牲にしてでも勝てという考えだ。
兵士としてはそれが1番正しい判断だ。
だが、ヤベぇ奴が居るならヤベぇ奴に頼る。
俺はそれが1番だと思ってるからな。
「いえ、我々は兵士です。
例え敵わない相手が来ようとも
この命を賭して戦います。
私達にはその覚悟があります」
「そりゃスゲーが、お前らが死んじまったら
兵力補充が大変だぜ? 国にも迷惑だ。
お前らはスゲーのさ、死んだら損失だろ?
お前らくらいの覚悟がある兵士なんて
そう簡単に用意できるわけがねぇ。
だからよ、ヤベーのが来たら俺を呼べ。
全部解決してやるよ、俺にゃそれが出来る力がある。
ま、そんな事態にゃ早々ならねぇだろうが
ヤバいときは即座に切り札を使うのが大事だぜ?
そっちの方が被害は押さえられるからな」
「……す、すみません」
「ふふ、ではもし、その時が来た場合
あなたも共に戦ってくれると」
「あぁ、任せな、その時に俺が居れば全力で戦ってやる。
まぁ、ドラゴンが守護してるこの国に来る危機ってのは
ドラゴン以上の化け物魔物か人間程度だろうが」
普通の国なら即消し炭レベルだろうな、魔物の場合。
人間の場合は即座に全滅はねぇだろうが。
「では、その時が来たら頼らせて貰います、マグナ殿」
「あぁ、それで良い。被害を押さえるのが大事だからな。
まぁ、こんな話をしてなんだが
今日はちょっと出かけるって話しに来たんだが」
「はは、それは確かに話すタイミングが悪いですね」
実際、あんな風に言ったのに出かけるわーってのはな。
とは言え、決めたら即座に行動するのが1番だ。
思い立ったが吉日ってね。
「して、何処へ向われるのですか?」
「あぁ、魔法の国、確かシャンデルナだったかな」
俺の言葉を聞いて、シャナの表情が少し変わった。




