激闘の後
マモーの背中に乗って、再び国に戻る。
兵士達に話をして、俺達は自分の家へ戻った。
結構ダメージを受けた様子のドリーズだったが
マモーの背に乗って移動してる間に
いつも通りの元気な状態に戻っていた。
「うむ、今日は良い経験が出来たのじゃ。
やはり儂の予想通り、シルフは強いのぅ」
「もう元気になったな」
「言ったであろう? 儂はすぐに治ると」
こうなってくると、やはり俺の異常性が際立つ。
こいつが全てを賭してはなった最大の一撃では
ドリーズが元気になるまで、結構時間が掛ってた。
だが、シルフと戦った時に受けた重傷は
移動の僅かな時間で回復するレベルだからな。
「おかえり、帰ったのね」
俺達を出迎えてくれたのはフェイトだった。
フェイトは庭にあった植物を整えてるな。
庭師みたいな事もしてくれるんだな、フェイト。
「ん? ねぇ、ドリーズ」
「む? なんじゃ?」
「服、焦げてない?」
即座に視界に入ったドリーズの服が焦げている。
それを最初に気になったようだな。
そう言えば、結構焦げてるような気がする。
「うむ、シルフの全力の攻撃は破壊力があったのじゃ」
「え? でも、破れてないわよ? 焦げてるって事は
その、シルフちゃんの炎属性魔法でも受けたんでしょうけど
それなら、服はもっと焦げてそうだけど」
「雷属性魔法を受けたのじゃ」
「え!? あのマグナ相手にバチバチやってた奴!?
でも、あの時はマグナの服は焦げてなかったわ。
いや、音的にさ、後ちょっと近付いたら死にそうとか
そんな風に思うくらいの爆音だったけど……」
「水属性魔法との合わせ技を受けてのぅ」
「ん、やり過ぎた…」
俺の背中に引っ付き、肩から顔を覗かせてるシルフが
少し申し訳なさそうに、小さく呟く。
ちょっとだけ辛そうな表情をしてるのが見えた。
「み、水属性魔法と雷属性魔法の合わせ技って……
私、そう言う魔法には詳しくないんだけど
そのー、属性魔法って確か適性とかがあって
水属性魔法と雷属性魔法は
同時に高水準の適性を持つ事は無いって聞いたけど…」
「……適性って何? 知らなかった」
「あ、そ、そう……」
ふーん、魔法って適性があったりするんだな。
シルフは全体的に滅茶苦茶な火力で攻撃してたが。
実際は適性とかよく分かってないって訳だし
最適性の魔法がもしあるとすれば、そこを伸ばせば
シルフの戦闘力は馬鹿高くなるって訳か。
「魔法については儂もよく知らぬ」
「そ、そりゃね、魔法は男の技術だし……
ドラゴンであるあんたが知る筈が無いわよね。
それに、魔法を扱える男がその魔法に興味を持ち
そう言う適性を研究することも無いから
意外と研究が進んでない分野だったりするし」
「でも、ある程度解析されてるのは何でだ?
やっぱりそう言うのに興味ある男が居るのか?」
「シルフちゃんと言う例があるでしょ?
魔法の才能は男性でほぼ確実に得るというだけで
男性のみの技術では無いわ。
一応、魔法の研究をしてる女の子だって居るのよ」
やっぱり魔法を扱える女性は少ないと言うだけで
一切位無いというわけでは無いんだな。
そりゃそうか、だってシルフは普通に扱ってるしな。
「よく知っておるな、やはり常識なのか?」
「いや、常識じゃ無いわ、むしろ私の知識は特殊よ。
普通、一般人はそう言う話を知らないわ。
私は冒険者だから、そう言うのを知ってると言うだけ。
もし自分に魔法の才能があれば良いなと思って
研究が盛んな国に赴いた事があるってだけよ」
やっぱりフェイトは色々な方向で努力してたんだろうな。
肉体的に鍛えながら、魔法を扱えれば
強くなれると考えて魔法について調べてたんだろう。
だが、結果としてフェイトには才能が無かったって訳か。
「と言う事は、シンプルに才能が無かったという訳じゃな」
「そ、そうよ、私はシンプルに魔法の才能が無かった。
そりゃそうよ、魔法の才能がある女性は非常にレアよ。
その国だって、魔法を使える女性は11人程度よ」
「どんな国か知らねぇが、それは多いのか?」
「少ないわ、魔法を扱える天才が魔法の仕組みを調べ
女性に眠る魔法の才能を開花させる方法を確立させて
国中の女性に試して、魔法を扱える様になったのは
その女の人の他に10人だけだったって訳だしね。
その人は賢者と呼ばれてるわ、年齢は90を越えてる」
「まだ若いでは無いか」
「あんたが異常に長寿ってだけよ!
人間は獣人種を含めて、長く生きても130が限界!」
「いや、130も相当だと思うが……」
「因みに男は50で死ぬ場合が多いわ」
「あ、そうなんだ」
そりゃまぁ、冷静に考えてみてもそうだよな。
ここの世界じゃ、男は毎日子作り励んでるわけだ。
自然界で考えても、子供を作るって命懸けだしな。
虫や魚には、1回子供を作るだけで
全てを捧げるオスだって居る訳だし。
「人間というのは難儀じゃな、しかしそれは困るのじゃ。
マグナが僅か50で死んでしまうのは不味い。
何とかして、マグナを500年は生かさねばならぬ!」
「それ、人間止めてね?」
「止めてるわね、まぁ、あんたは元々人間止めてるけど。
しかし、マグナが500歳まで生きたら…
なんか、今の何十倍も強くなってそうでヤバくない?」
「何を馬鹿な事を言っておる、今もヤバいのじゃ
何十倍に強くなった程度、どうと言う事はあるまい」
「ヤバいけど普通に!?」
まぁ、500年程度ではそこまで強くなれねぇだろうな。
俺の肉体は何億年も掛けて磨き上げてる肉体だし。
……いやまぁ、俺自身本当にそうかイマイチ分かってねぇが。
「全く……しかし、そうね、うーん」
「どうしたんだ?」
「いや、シルフちゃんがその国に行ったら…
魔法とかを鍛える事が出来そうだけど」
「確かにそれは良い案じゃな、今の状態でも
儂に大打撃を与える才能を持っておるが
その才を更に伸ばすのも良かろう、
どうじゃ? シルフよ」
「……でも、にーにが居るし
これ以上火力を上げたら、色々巻き込む」
「その国は魔法に精通しておる国家じゃ。
魔法の制御を今以上に出来るようになれば
手加減もかなり出来るようになるとは思わぬか?」
「……確かに」
ちょっとだけシルフの表情が変わったな。
どうやら、興味は結構あるようだな。
「じゃ、今度はその国に行ってみるかな!
魔法国家って事はあれだろ?
魔女っ娘とか居るんだろ!?
黒い服にデカい魔女帽子、興味があるぜ!」
「……魔女っ娘って言うけどね、マグナ
10人しかいないわよ、若い女の子の魔法使い。
その人達も国の兵士、シャナさん見たいな
女王を守る為の魔法騎士団って感じだし。
確かにデカい魔女用の帽子を被ってたけど」
「10人も居るならその子達を狙うまでだぜ!」
「さっきも言ったけど、それはシャナさんを
あんたのハーレムに入れる様な物なのよ!?
国としての損害甚大すぎるわ!」
そ、そりゃまぁ、国の最高戦力を引き抜くわけだしな。
俺としてはこのバスロミナの国民だしなぁ。
「前にも行ったけど、あんたはこのバスロミア王国の所属。
他国へ行って、その他国の最高戦力を引き抜いて
このバスロミアに連れてくるってなったら
最悪の場合、この国が目の敵にされるわ!
戦争とかになったらどうすんのよ!」
「うむ、儂の部下達が全て殲滅してやろう」
「出来るでしょうけど殲滅するなぁ!
「ま、まぁそうだよな、そう言う話を聞いちまうと
確かに魔女っ娘をハーレムにってのは不味いか」
「そうよ! 不味い! でも、シルフちゃんの事を考えると
私としても、行った方が良いような気はするけどね。
魔法の才能があるなら、制御出来る方が良いでしょうし」
まぁ、その場所じゃハーレムの補充は出来そうにねぇが
シルフの為に行ってみるのはありかもしれねぇな。
「じゃ、今度はそこに行ってみるか。
前回はドリーズの乱入で冒険は中断だったが
今回なら大丈夫だろう。目的地があれば楽だしな」
「そうね、ここからその国、あ、そうそう、名前だけど
特殊魔法武装国家、シャンデルナって言う名前よ」
「特殊魔法武装国家ってなんだよ」
「他国からの通称よ、その通称を取っ払えば
シャンデルナ共和国よ」
「王国とは違うのか?」
「えぇ、分かりやすく言うと、
正当な王様ってのが居ない国よ。
バスロミアには国王様が居るけど
シャンデルナ共和国には国王様が居なくて
貴族とかそう言う、力ある家がそれぞれ争って
最終的に国民に選ばれた貴族の党首が
しばらくの間統治をしてる様な形よ。
中々珍しいんだけど、結構歴史が深いの」
「歴史?」
何となく民主主義とか、そう言う感じに思えるな。
「そ、歴史、まぁそこは現地で調べれば良いわ。
因みにシャンデルナは魔法を広めた賢者である
ラズナーク・シャンデルナさんの名字からよ」
「魔法を開花させる方法を見つけたって言う
90のお婆さんか」
「そうよ、シャンデルナ共和国では賢者と呼ばれて
国中から崇められてるわ」
ふーん、じゃあ行くとなれば、その人を探せば良いのか。
まぁ、崇められてる賢者様に会えるかどうかは微妙だが。
だがまぁ、何事も行動あるのみってな、行ってみるか!




