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久々の安全な夜

よーし、今日はここまでかな。もう暗くなってるし。

それにそろそろシルフがしんどそうだしな。


「…今日はここで休みましょう」

「そうだな、ほれ食材」

「しれっと道中で狩りをしたわね」

「料理頼むよ、俺は料理壊滅的だからな」

「ふん、男なんて力あるだけなんだから。

 女が居ないと何も出来ないんでしょ? 知ってるよ」

「そうだな、俺は強いだけだからな、頼むよ。

 食事だって、今まで妹に頼んでたしな。あはは」

「命令しないのね」

「お願いしてる立場だしな、命令はしないよ」

「……まぁ、案内するって言ったから、一応は作るわ。

 食材を取ったのもあなただしね…」

「お、サンキュー」


彼女は手慣れた手つきで火をおこし、俺が取ってきた肉を捌く。

上手だな、かなり手慣れてるって感じがする。

刃物も食材を捌くための刃物があるらしく、それを使ってくれた。


「……はい、どうぞ。あまり美味い味付けは出来ないけどね。

 サバイバルで美味い料理だなんて贅沢だし、我慢してよ」

「大丈夫だって!」

「……」


シルフが無言のままお肉を凝視した。

ついでにフェイトが持ってた調味料にも興味を抱いたようで

フェイトの手元を少し見てる。


「よし、じゃあ食うか! いやぁ、こんがり肉だな!

 シルフも随分と食い付いてるな、美味そうだし当然か!」

「…ん」

「じゃ、いただきます!」


おぉ! 丁度良いくらいにこんがりと焼けてる!

肉汁が良い感じに滴り落ちて、何とも食欲をそそる。

よっしゃ! このままかぶりついて…おぉ! 美味い!


「こりゃ美味いな! 良い感じの塩味じゃねぇか!

 フェイト、お前料理スゲー美味いな! 最高だ!」

「ん…」

「……そ、そう、まぁこれでも冒険者だし…」

「んぁ? ちょっと顔赤いな、褒められたことねぇの?」

「そ、そうよ! ずっと1人だったし!」

「おぉ! それは大変だな! 意思疎通は大事だしよ。

 まぁ、会話は無いけど話ししながら飯食うのも良いな!」

「……ま、まぁ、そうだね」

「……に、にーに」

「おぉ!? 喋った! おぉ!」

「……やっぱり良い」

「えー、折角可愛い声聞けたのに残念だなぁ」


いやぁ、流石は俺の妹、可愛らしい声だ。

少ししか喋ってなかったが、それでも分かる位に可愛い声。

普通に喋れば良いのに…まぁ、母さんの事がショックだったからな。

俺もなんとか明るく振る舞ってるが、シルフは結構応えたんだろう。

生まれてすぐだから、いまいち自覚は無かっただろうが。


「ふーん…喋ることは出来るのね」

「あぁ、たまに声は聞けるんだが、割とレアなんだよな。

 あ、そうだ、食わないのか? 美味いぞ?」

「……う、美味いのは知ってるわよ、私が作ったんだから」


そう言いながら、彼女は自分のお肉を掴んでかぶりついた。

少しだけ美味しそうに笑ってるのが見えた。

ちょっとだけ頬も赤らめてるし、中々楽しそうだな。


「あはは! 可愛いな!」

「う、うるさいわね! 何も言わないでよ! ご飯が不味くなるわ!」

「おぉ、酷いなぁ、飯はだべりながら食った方が美味いだろ?」

「それはあなたがそうと言うだけで、私がそうとは限らないわ…」

「そりゃな、とは言えちょっと嬉しそうじゃねぇか」

「か、勘違いよ! 良いから食べなさい!」

「うーい」


よし、夕食終り。急いでテントを張ろう。


「うし、テント張ろうか」

「……テント、1つしか無いわ」

「ん? そうなのか?」

「本来、私1人だけだったし…」

「じゃあ、一緒に寝るか?」

「ふざけないで! 外で寝てよ外で!」

「あはは、ですよねー、ま、それで良いよ。

 だが、シルフは一緒に寝かせてやってくれ」

「それはまぁ、当然よ」

「サンキュー、じゃあ、テント張るの手伝うぞ」

「…テントは張れるの?」

「一応はな、ちょっと任せてくれよ」

「……」


彼女は少し疑いながらだが、俺にテントを張るのを手伝わせてくれた。

問題無くテントを張る事が出来て、ちょっと一安心だ。


「っと、これでお終いね、テントは張れるのね、あなた」

「あぁ、それじゃあシルフと休んでろよ、俺は見張りするから」

「はぁ!? あなたみたいな奴に見張りだとか!

 ね、眠ってる間に襲うんでしょ!?」

「だから、大丈夫だって。そろそろ信じてくれよ。

 お前が男を嫌ってるのは分かるが、俺は信じてくれって」

「……」


やっぱりフェイトは俺の事を疑ってる。

しかしながら、小さくため息をした後、テントの中に入る。


「襲ったりしたら、案内しないから…」

「大丈夫だって、信じてくれよな」

「……」

「……ん、一緒…に」

「お、少し喋ってくれるようになったな。

 お兄ちゃんは嬉しいぜ? だが、一緒は駄目だぞ?

 さぁ、見張りはお兄ちゃんに任せて、お前は休んでろよ」

「……うぅ」


ちょっとがっくりした後、シルフがテントの中に入った。


「…て、手は出さないでよね」

「出さないって、隣で妹が寝てるんだしな」

「…そ、そう」


少し疑いの表情を残したままだが、テントの中で休み始めた。

じゃあ、俺も見張りをしようかな。のんびりと。


「……ふふん、意外と楽しいかもな、こう言うの」


周囲から聞えてくる虫の鳴き声を聞きながらの野宿。

まぁ、今まではずっと野宿だったが、今回はちょっとだけ状況が違う。

誰かの寝息が聞えるってのは良いね、しかも女の子の。

うへへ、襲いてぇ! だが、俺は紳士だからな、グッと堪えるんだ。

シルフに変な知識を与えたくも無いし、堪えるのだ!


それからしばらくの間、特に何も無く時間が過ぎた。

周りを見渡していると、不意に肩を誰かに叩かれる。


「どうした?」

「交代するから、見張り。マグナは休んで」

「寝てて良いんだぞ? 俺は平気だからな」

「2人居るなら、交替した方が良いから。ほら、テントで寝なさい」

「んぁ? 俺がテント使っても良いのか?」

「布団はシルフちゃんが使ってるから…でも、入らないでよ?

 あの布団は私のなんだから…」

「あはは、そうだな。ま、雨風凌げるならそれで嬉しいよ。サンキュー」

「……良いから寝なさいよ」

「へーい」


彼女の言葉に甘え、俺はテントの中に入る。

テントの中では指を咥えて眠ってるシルフの姿があった。

ふふ、可愛らしい寝顔だな。うし、隣で寝よう。


「……にーに」

「お?」


俺が隣で寝転がると、シルフが抱き付いてきた。

可愛らしい奴め、甘えん坊さんだなぁ。


「お休み、今日は久々にしっかり休めるな、シルフ」

「……」


シルフは返事をすることは無いが、

少しだけ嬉しそうに笑ってる。

良い夢でも見てるのかな。まぁ、当然か。

婆さんが死んでからと言う物、布団では眠れなかったからな。


とりあえず、俺も今日はそのまま休む事にした。

少しだけ安心して、普段以上にグッスリと眠れた気がする。

今までは見張りもしてたから、夜が明けてからじゃ無いと眠れなかった。

眠ったとしても、1時間程度。ふふ、今日はグッスリ休めるぞ。




「ふぁぅ…おはようさん、フェイト」

「おはよう、料理はもうちょっと待ってて」

「お、サンキュー」

「…ねぇ、あなた達って2人でずっと過ごしてたの?」

「そうだぞ? それがどうした?」

「…あなた、妹に手を出してないの?」

「はぁ? 何当然な事言ってるんだよ、手なんて出してないぞ?」

「…そう、珍しいわね…男って妹だろうと姉だろうと娘だろうと手を出すのに」

「はぁ? マジでそんな事あるのか?」

「そう、ある…そう言うのと比べれば、あなたはマシだけど」

「お、信じてくれるか? 俺の事」

「…ちょ、ちょっとだけは信頼するわ…ちょっとだけは」

「そうか、ちょっとでも信じて貰えれば、それで良いさ」


その会話から少しして、シルフが目を覚ました。

俺達はすぐに席に座り、シルフはフェイトの手伝いを始めた。


「え? て、手伝ってくれるの?」

「……ん、これ」

「あ、ありがとう…食材とか斬れる?」

「……任せて」

「じゃあ、お願いね」

「よ、よし、なら俺も手伝って」

「にーには…駄目」

「うえぇ!?」

「まぁ、男はそう言うの全然出来ないしね。

 ほら、役立たずは据わって待ってなさい」

「くぅ、情けねぇぜ…ま、まぁ守るって事はするから…」

「ま、まぁ…もしもの時は頼むわ」

「おう!」


うし、シルフとフェイトが作ってくれた料理、最高だな!

こりゃ、やる気前全開だ! 最高だな! やっぱりこの世界!

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