ドラゴンの女王
国の近くに来ると同時に兵士達が動揺する。
理由はまぁ、分かるには分かった。
俺達の背後に結構居るドラゴンだろう。
「……あ、あの-、ま、マグナ様……?」
「なんだ?」
「う、後ろの……ど、ドラゴンは?」
俺達の背後には国に戻ってる間に出て来た
ドラゴンが10匹程度座ってる。
飛んでるわけでも無く、歩いてきてた。
道中で俺達の姿を見て突撃して来たが
ドリーズがまぁ待てというと大人しく従った。
それ以降は一緒に歩いてきてた。
本当にドリーズが女王だったってのが分かる。
「ドラゴンはドラゴンだなぁ」
「うむ、ドラゴンじゃ、儂の部下の。
名はピンキー、ラージ、レイズ、ランド
シャロン、キリー、ジジ、
シャシ、シャシャ、マモーじゃ」
「俺はサッパリ違いは分からないがな」
「私も」
「……」
ドリーズが言うには違いがあるらしいのだが
俺からしてみれば同じ顔にしか見えない。
まぁ、ドラゴンの顔を見分ける必要は無いか。
「しかしドリー、部下が来たなら
一緒に帰れば良かったろうに」
「儂は主の家で世話になるのじゃ」
「何度も言ってるが、子供に欲情しねぇぞ?」
「何度も言っておるが、儂は100は越えておる!」
例え実年齢がどうであれ、見た目は子供だからな。
見た目、妹と同じ程度の身長しか無い相手に
欲情するなんて絶対にあり得ない。
「え!? この子を国へ!」
「帰れっていっても帰らなかったんだ。
俺の家で世話になるって言って強情なんだ。
まぁ、怪我をしてるからまだ俺が背負ってるが。
一応言っておくが、攫ったわけじゃねぇぞ?」
「そ、それは会話を聞いていれば……
って! そうじゃ無くて後ろのドラゴンです!
なんでドラゴンがこんなに!? なんですかこれ!」
「じゃから、儂の部下じゃ、一部じゃがのぅ」
「その、このドリーズって言う子なんだけど
ほら、聞いたことあるでしょ? 竜人種。
おとぎ話でしか聞いたことは無いけど
その竜人種らしくて……なんかマグナ気に入って」
「うむ、儂はこやつの子を生むのじゃ!」
「馬鹿言うな! 何度でも言うが!
俺は小さな子供に欲情はしねぇ!
てか! それ以上変な事言うんじゃねぇ!
シルフに変な知識が付いたらどうするんだよ!
それ以上言うなら、無理矢理にでも追い出すぞ!」
「うぐぐ……強情な……
儂のようなメスに子を宿せるなど
オス冥利に尽きるじゃろうが!」
このままだとシルフの教育に悪影響が…
しかし、最悪の場合こいつ国に襲撃してきそうだしなぁ。
「まぁ、そう言う事だから……」
「冗談じゃ……しかし、何も言えませんし。
と、とにかくお通ししますね。
で、出来れば姫様にもこの事をお伝え下さい」
「おう、分かったぜ。それで、このドラゴンは?」
「さ、流石にドラゴンを国の中に入れるわけには……」
「うむ、それは仕方ないじゃろうな、人の巣じゃし。
では主ら、この国か? この人の国を防衛するのじゃ。
厄介そうなのがでれば対処しておけ
そうじゃなぁ、この国に近付く相手のみじゃ。
儂の指示が無い場合は人を襲うのは駄目じゃぞ?
それと、他愛ない相手であれば放置で構わぬ
あくまで厄介だと感じた相手のみでよい」
「ぐぅ!」
ドリーズの言葉を聞いてドラゴンはお辞儀をして
ゆっくりと飛び立っていった。
おぉ、まさしく女王って感じだな。
「主らに世話になる詫びとして、
厄介な魔物は奴らに始末して貰うのじゃ。
じゃが、弱い魔物をわざわざ駆除はせぬ。
そうじゃなぁ、オーガが最低ラインじゃ。
オーガ以上は対処するが、それ以下は放置じゃ」
「……あ、はい」
門番は驚きを通り過ぎたのか反応が出来てない。
まぁ、ドラゴンだからな、俺は脅威にゃ感じ無いが
シャナがタイマンで
死力を尽くして勝てるレベルだとすれば
結構強いって感じなんだろうな。
「じゃ、一旦家に帰るか」
「ひ、姫様には言わないの?」
「こいつが動けるようになったら会いに行けば良いだろ。
こいつも背負われてる状態で姿は見せたくないだろうし」
「うむ、そうじゃな」
とりあえずはこいつを家に連れ帰った。
「うむ、ここがお主の巣か、小さいのぅ」
「そりゃな、俺も背はドラゴンレベルじゃねぇし」
「まぁ、儂には丁度良いと言う感じじゃな」
ひとまず家に帰って椅子に座らせた。
「で、何処の部屋にするよ」
「高いところが良いのじゃ!」
「最上階だな、まぁ部屋多いし良いけど」
「屋上で良いのじゃ屋上で、風が気持ちよさそうじゃし」
「そこ、部屋じゃねぇからな。
まぁ最上階で良いだろ。
屋上に上がれるように階段の近くの部屋。
寝るときは部屋で寝ろよ」
とりあえずは最上階の部屋で寝かせることにした。
「おぉ! な、なんじゃこのふわふわは!」
「ベットだ」
「き、気持ちが良いのじゃ、な、何と心地よい…」
「まぁ、ドラゴンの寝床と比べりゃ過ごしやすいだろ」
「うぅ、あ、暖かい……」
小さく呟いた後、彼女は眠ったようだ。
「あっさり寝たな」
「そ、そうね、眠かったのかしら。
それともよっぽどベットが気に入ったのか。
ま、まぁこれでこいつがずっと眠るようになれば
私としても一安心で」
「ん!」
「お?」
ドリーズが眠った後、シルフが俺の背中に飛びつく。
そして、ふて腐れた表情で俺の首にしがみついた。
「嫉妬したのか?」
「にーには私のにーに……
にーにの背中は私の場所……
今日はずっとこうする」
「はは、心配すんなよ。
どんな状況でも俺はお前が1番だ」
「……」
ま、何を言ってもシルフはしがみつくだろうな。
結構嫉妬深いところがあるからな、シルフ。
ずっと俺がドリーズを背負ってたしな。
まぁ、シルフは優しい子だからな。
あいつが動けないから仕方ないとは理解してたから
今までは俺に抱きついたり、ドリーズに恨み言とかを
言う事は無かったが、
家に着いたから抱き付いてきたんだろう。
そんな妹のやきもちに対処するのも兄の仕事。
今日はシルフが満足するまで背負ってやろう。
「可愛いわね、シルフちゃん!
フェイトちゃんもそう思うわよね!」
「ま、まぁ可愛いのは認めるけど……」
「きゃー! 私にも抱き付いてくれないかしら!
もしくはマグナ様が私を背負ってくれないかしら!
でも駄目よね、マグナ様の背中は
シルフちゃんの特等席! ここはハグね!
正面からハグ……きゃー!
想像しただけで恥ずかしー!」
「本当あんたは騒がしいわね……
まぁ、ハグなりしたければすれば?
どうせマグナも拒絶しないでしょうし」
「無理よムリムり! 恥ずかしさで死んじゃうわ!」
俺としてはいつでもウェルカムなんだがな。
前後から女の子に抱き付かれるのは男冥利に尽きる。
背中に居るのは妹だが、可愛い妹だからな。
どちらにせよ幸せな気分だぜ
「はぁ、とりあえずご飯にしましょうか。
予定よりも早く帰ってきたから
食材も結構余ってるしね」
「そうね! 私の出番よ! 頑張るわ!」
じゃ、今日は飯食って寝るか。