日常の刺激
この国に来て少し経ったな。
まだミントとフェイト以外の
ハーレム候補は出て来てないんだよな。
「マグナ、あんたあまり積極的じゃ無いわね」
外出から一緒に戻ってきたフェイトが
いつも通りの口調で口を開いた。
積極的じゃ無いってのは、まぁ、自分でも分かってる。
「まぁな」
「あんた滅茶苦茶告白するのかと思ったけど
全然声かけられても受入れてないしね」
「いまいちピンと来ねぇんだよなぁ」
外出する度に告白をされてる俺だが
あまりこの子がいい! と言う子が見付からない。
「まぁ、私は別に構わないんだけどね。
このまま行けば、ミントが正妻って形だし」
「だよなぁ、まだお前とミントしかいねぇし」
「何度も言わせないで! 私は参加しないっての!」
「あだ!」
うぐぐ、このままだとかなり不味いぜ。
あまりフェイトを惚れさせる事が出来てねぇ!
まぁ、そりゃ国からまだ出てねぇしな。
「まぁいいや、とりあえずそろそろ冒険だな」
「はぁ、もう出るつもりなの?」
「おう!」
「……シャナさんにお願いしてシルフちゃんやミントを
他の男から護衛して貰えるようお願いしてこようか?」
「いんや、一緒に行くから大丈夫だ」
「はぁ!? あの2人も連れてくつもりなの!?」
俺の言葉にフェイトが驚愕して居た。
だが、俺は冒険は全員で行くと決めてる。
「そりゃそうだろ! 俺は大事な奴は必ず守る。
当然、この俺の手でな。
俺の手が届かねぇ範囲に大事な奴を放置はしねぇ!」
「危険よ!? 外には大量の魔物がいるわ!
あんたは確かにドラゴンさえワンパンできる。
でも、必ず全員を守れるって保証も無い!
シルフちゃんは力も弱くて戦えないし
ミントだって一般人! 私はまだ戦えても
あの2人は絶対に戦えないわ!」
「纏めて守るって言っただろ?
俺は全員を必ず守り抜いてみせるっての」
「危険すぎるわ!」
「良いじゃ無いのフェイトちゃん」
「ミント!?」
俺達が会話をしてると奥からミントが出てくる。
一緒にシルフも出て来て、ハンカチで手を拭いていた。
多分、ミントに料理教えて貰ってたな。
「マグナ様が一緒に居るなら絶対安全よ!
それに私! 城壁から外に出たこと無いから
外の世界に滅茶苦茶興味があるの!
危険って聞くけど、マグナ様が守ってくれるなら
絶対に安全に違いないわ!
そもそも! マグナ様の近く以上に
安全な場所なんてあるわけが無いわ!」
「ん、にーには最強」
「い、いやでも! わ、私でもオーガ相手じゃ
1対1では勝てないのよ!? 魔物ってのは
それだけ危険な存在で!」
「にーには余裕で倒した」
「そりゃそうだけど!」
「そもそもよ、俺とシルフは本来城壁の外で
2人だけで放浪して生活してたんだぜ?
シルフを守りながら魔物だって何度も倒してたし
そもそも、シルフだってかなりつえーぞ?」
「え? そうなの? そんな風には」
「ん」
シルフが無言で指先に炎を展開した。
「魔法!?」
そう、シルフは魔法が使えるのだ。
「驚くこと?」
「そ、そりゃ驚くわよ! ま、魔法って!
お、女の子で魔法を扱えるなんて……」
「凄いのか?」
「す、凄いってもんじゃないわ! 超貴重よ!?
魔法は殆ど男性が扱える技術よ。
女の子が男に勝てない理由はそれが大きな要因!
他にも男は特殊な能力を持って
生まれたりもするけど、殆どが魔法を使うわ!」
「あ? そうなの? 俺使えねぇけど?」
「そ、そもそもあんたの場合、魔法使えたとしても
使うまでも無いから使ってないだけでしょうに。
てか、使えるかもって試してすら無いでしょ?」
「おぉ! よく分かるな! 全部ワンパンだし」
しかしそうか、男って魔法使えるんだ。
魔法使いって女の子のイメージが強かったが
なる程なぁ、むしろ貴重だったわけだ。
そりゃそうか、シャナだって魔法使ってなかったし
道中でフェイトが魔法を使った所も見てねぇしな。
「フェイトちゃん、しばらく外で一緒に居たんでしょ?
なのに、どうして知らないの?」
「だって、ま、マグナが居たから」
「おう! 全部ワンパンだからな!」
「でも、ならどうしてシルフちゃんは魔法を?」
「試したら出来た」
今度はシルフが腕に電気を纏わせた。
あの電気は触れたら結構ビリっとする。
「え? こ、今度は電気? って、いだだ!」
「ん? どうしたの?」
電気を纏わせたシルフの腕をフェイトが触ると
表情を歪めて距離を取った。
「か、かなり痺れたわ……」
「そうかぁ? あのビリビリ結構気持ち良いぜ?
マッサージをたまにして貰うんだが
かなり疲れが取れるからな」
「マッサージさせてるの!?」
「たまにしてる。暇な時に…」
「一応言っておくが、強要はしてないからな?
シルフがマッサージするって言ってくれた時に
マッサージして貰ってるだけだからな」
「ん」
「お? 久々にしてくれるのか?」
シルフがふと思い出したのか
俺にマッサージをしてくれるようだな!
「ソファーに寝転がせたわね」
「えい、えい」
「おぉ! 良い感じの刺激だぜ!」
シルフの久々のビリビリマッサージ!
いやぁ、最近はしっかり眠れてるから
あまり疲れがたまってないとは言え
やっぱりシルフのマッサージは良いなぁ!
「あ、あの、滅茶苦茶バチバチ聞えるんだけど…」
「そうかぁ?」
「なんか、お、音がやばそうな…」
「丁度気持ち良いぞ?」
「これ位」
「いだだだ!」
フェイトの腕を軽く触りシルフが
どれ位の力でやってるかを教えた。
フェイトがかなり痛がりながら距離を取る。
「ちょ、超痛いんだけど!?
何であんた、そんなに笑顔なのよ!」
「え? 痛いのか? これ」
「さぁ?」
「やっぱりマグナ様をマッサージとなると
中途半端な力じゃ駄目なのね!
だから、普通の人だと痛いレベルじゃ無いと
全く影響がないのよ!」
「ミントも試せば分かるわよ、異常よあれ!」
「確かに気になるわ! お願い!」
「え!? じ、自分で言ってなんだけど
あれかなり痛いわよ!?」
「大丈夫よ! さぁ、シルフちゃん!」
「ん」
「あだだだだ、きゅぅ」
「ちょ! ミント!?」
シルフがミントの腕を触ると同時に
ミントがかなり居たがると同時に意識を失った。
「……大丈夫かな?」
「大丈夫そうに見えるが……」
「た、確かに意識を失ってるだけだけど…
てか! 普通の人間が気絶するレベルって!」
「手加減してる……」
「そうなのか? じゃあ、全力でやってみてくれ」
「分かった」
おぉ! す、スゲー刺激を感じるな!
だが、ちょーっと刺激が強すぎて
マッサージって感じじゃ無いかなぁ。
「ちょ! 音! 音やばい! 離れてる私も
なんか凄くビリビリ感じるんだけど!?」
「うーん、かなり良い刺激だが
ちょっと刺激が強すぎるからか
マッサージって感じじゃねぇな」
「…私も少し疲れる」
「じゃあ、いつも通りだな」
「分かった」
そして、いつも通りの刺激に戻った。
いやぁ、久々にシルフのマッサージで嬉しいぜ!
「いやぁ、やっぱりシルフのマッサージは良いな!」
「ん」
シルフが少し嬉しそうに微笑みながら
俺にVサインを見せてくれた。
ちょっとだけ得意気な表情が可愛いと感じるぜ!
「……あー、なんかもうあれよね
これ、マジで護衛必要なのかしら……
てか、シルフちゃんにすら護衛不要じゃ…」
「なんの音ですか!?」
マッサージが終わった後に兵士達がやってきた。
「あぁ、兵士の。どうした?」
「マグナ様、いえ、住民からマグナ様のご自宅から
異音が聞えると通報があり急いで来たのですが…」
あぁ、シルフが全力で魔法を使ったときか。
てか、兵士の数多くねぇか?
「お前達! マグナ様に何かあったか!?」
「シャナさんまで来たの!?」
「フェイト、君は無傷のようだが……
しかし、何故ミント殿が倒れてるんだ?」
「特に何も問題は無いぞ?
強いて言えば、マッサージをして貰ってただけだ。
ミントが倒れてるのはちょっとマッサージが
俺以外にゃ刺激的すぎたみたいで
試したら少し意識を失っちまってな。
怪我も何処にも無いから安心してくれ」
「ま、マッサージ……? え?」
「じ、事情を説明するわ」
フェイトが俺達のマッサージの事を話した。
「……ま、魔法……だと」
「ん」
驚愕の表情を浮かべてるシャナに
シルフが軽く魔法を見せた。
今度は光属性の魔法を見せた様だ。
小さな光りの球を操り
シャナの周りをウロウロさせた。
「光属性の……な、何故、女性であるシルフ殿が!」
「知らない、普通じゃ無いの?
私は普通だと思ってた……」
「俺もずっと普通だと思ってたな。
女の子は皆魔法使えるって思ってたし。
まぁ、女の子の姿はここに来るまで
母さん、婆さん、そしてシルフしか知らなかったが」
「私も」
「なる程……」
俺達の返事を聞いたシャナが軽く頭を抱えた。
他の兵士達も同じ様に頭を抱えている。
あるいは勿体なさそうな表情を見せている。
シャナも少しして、勿体なさそうな表情になる。
「どうした? そんなに勿体なさそうな表情して」
「バルキュリー部隊に是非参加して貰いたいと
そう思ってしまって。
でも、シルフ殿はマグナ様の妹君だ。
恐らく、マグナ様から離れたりはしないだろう」
「ん、当然」
シルフが俺の背中に飛びついて這い上がり
耳元辺りで、小さく呟いた。
ふふん、妹に懐かれるなんて最高だな!
「本当に仲が良い様で」
「あぁ、俺とシルフは以心伝心だからな」
「ん」
シルフが笑顔で俺の頬に自分のほっぺを当て
スリスリとしてくれた。
はは! やっぱり可愛い奴だ!
その姿を見て何人かの兵士は
羨ましそうな表情を見せる。
「ふふ、可愛らしいですね、シルフちゃん」
「あぁ、可愛いだろ? ま、とにかくだ
騒ぎにしちまって悪かったな。
別になんの問題も無いから安心してくれ」
「えぇ、問題が無くて安心しました」
「あ、そうだ、それと冒険の件だが
そろそろ、ちょっと冒険に出ようと思うから」
「分かりました、約束もしたことですしね。
では、シルフ殿とミント殿は我々が保護しましょう」
「いや、一緒に連れてく」
「な! 城壁の外は危険で!」
「大丈夫、にーには最強」
兵士達がフェイトと同じ様に響めき、
必死に止めようとしたが
即座にシルフが呟き兵士達の動きが固まる。
「……分かりました、フェイトも居ますしね」
「へぇ、意外だな、あっさり了承してくれるのか?」
「えぇ、あなたの実力は重々承知してる。
なので、私はあなたを止めません」
「サンキュー!」
「では、お気を付けて。皆、下がろう。
今回の件をリスティア様に報告しよう」
「は、はい!」
シャナの言葉で兵士達も帰っていく。
やっぱり、シャナは慕われてるな。
て言うか、わざわざシャナが来たのは驚いた。
「では、また。
そうだ、冒険譚をお話ししていただければ
リスティア姫様も喜ぶでしょう。
機会があれば、お話ししてあげてください」
「おう! 分かったぜ!
リスティア姫によろしく言っといてくれ!」
「はい、では失礼します」
俺に深々と礼をした後、シャナは俺達に背を向け
隙の無い歩みで俺達の家を後にした。
うし、じゃ、準備して冒険に行くとするか!