中級魔法
今回、シルフが見せる中級魔法は
あまり規模が大きくない魔法らしい。
だが、初級魔法よりは遙かに高火力だろう。
「では、こちらを」
外に出てすぐにジュリアは生徒達に資料を渡す。
一応、俺にもその資料を渡してくれた。
その資料には、初級魔法や中級魔法のイメージ図が
ジュリアの丁寧な絵で描かれていた。
四コマ漫画みたいになってるな、絵柄も結構可愛らしい。
多少大雑把だが、イメージは十分出来る位だ。
「今、皆さんに渡したのは初級、中級魔法の名前と
どのような魔法かを軽く図にした資料となります。
これから、シルフちゃんにお願いして魔法を使って貰うので
その図と合わせてみて、イメージしてみてください」
「はい」
「それでは、シルフちゃん。準備は良い?」
「うん。大丈夫。どの魔法か教えて」
「なら、まずは火属性魔法で行こうか」
「ん。火属性魔法、分かった」
準備を完了させて、すぐに魔法を打つ準備に掛かる。
シルフが掌を下に向けて、そこに炎を集めた。
ファイヤーは掌を相手に向けたり
指先を相手に向けた後に撃ってるが
この魔法は少しだけ構えが違うらしい。
「火の中級魔法……フレイムウィップ」
その魔法名を叫びながら、シルフが手を振うと同時に
炎がターゲットを斬り裂き一瞬で真っ二つになった。
「え……」
「はい、これが派生が多いフレイムウィップです。
火属性魔法の中級魔法で1番シンプルな魔法ですね。
ただ炎の鞭を振うイメージだけで発動出来ます。
ただ、私が使った場合とは違いますけど」
そう言って、ジュリアも同じ様にフレイムウィップを使う。
だが、シルフとは違い、その動きはかなり遅い。
本当に鞭という感じに動いて目標を叩いていた。
「初級からもそうですが、
適性によってかなり見た目は変わります。
なので、他者と規模が違ってもそれは自然な事なので
あまり気にしなくても良いでしょう」
「こんなに違うのね……シルフちゃんのフレイムウィップは
一瞬だった……鞭と言うよりは剣だったわね」
「わ、私はどうして斬れたか分からなかったわ。
気付いたら斬れてたわ……」
「そうなの? まぁ、確かに結構速かったしね」
鍛えてるフェイトには見えるみたいだが
一般人のミントは目で追えてないみたいだな。
「次は水属性魔法をお願いね」
「ん。水属性魔法、分かった」
シルフはゆっくりと掌を上に向ける。
「水属性の中級魔法。ラピットレイン」
魔法名を伝えた後、一気に手を振り下ろす。
同時にターゲットの頭上から槍のような水滴が現われ
一瞬でターゲットを穴だらけにして見せた。
「これがラピットレインですね。相手の頭上から
大量の水滴を落とし、攻撃をする魔法です」
「何も無いところから水が出てくるなんて……」
「これが魔法の力です」
まぁうん。何も無いところから炎とか出したりするし
魔法ってのは、かなり利便性が高いんだよな。
しかしこう言う物質を召喚する感じの魔法って
サバイバルの時とかかなり便利だよなぁ。
「では、次は木属性魔法をお願いね」
「ん。木属性の中級魔法、分かった」
シルフが地面に右手の掌を付けて少し意識を集中した。
地面が砂だからなのか、シルフの掌の辺りから
かなりの砂埃が溢れ出してくる。
「木属性の中級魔法」
その言葉と同時にシルフは地面の砂を握るように掌を閉じるが
その動作をした瞬間、砂が持ち上がるような動きを見せる。
「プラントスイング」
拳を振り上げると、地面からかなり太い植物がせり上がり
ターゲットを引き裂くように地面から飛び出した。
この魔法を受けたターゲットは空中に打ち上がる。
「ん!」
そして、振り上げた拳を引くと、飛び出した植物の動きが変化。
打ち上がったターゲットを締め付けるような動きに変化し
一瞬でターゲットを捉えて、即座に粉砕した。
「プラントスイングは植物をかなり自在に動かせます。
呼び出す植物の太さは適性によって変わりますが
植物が太ければ太いほど、その力は増すと考えてください」
「……」
その光景を見た生徒達は、全員開いた口が閉じなくなってる。
この攻撃はマジで派手だからな。驚くのも無理ない。
「えー、次は氷属性魔法をお願いね」
「ん。氷属性魔法、分かった。氷は得意」
その言葉の後、シルフが地面をつま先で軽く突く。
その動作の直後だった。
「フローズン」
シルフが蹴った地面から細い氷の道が現われ
即座にターゲットに向けて伸びていく。
その氷がターゲットに接触すると同時に
一瞬でターゲットが氷漬けになった。
「は、速い!?」
「フローズンは指定した箇所まで影響を伸ばして
狙った相手を凍らせる魔法ですね。
適性で変化するのは魔法発動の速度と
影響を与える為に伝わる氷の速度と
凍らせられる対象の規模になります。
……でも、やっぱり凄いなぁ、シルフちゃん。
この速度でフローズンの影響を伸ばせるなんて。
本当に氷属性魔法が得意なんだね」
「ん、結構使う事があるから」
シルフは結構氷の魔法が好きだからな。
クイーンゴブリンの場所を教えるときも氷だったし
やっぱり得意なんだろうな、氷属性が。
「やっぱり適性ランクZがどれ程の規模なのか
凄く興味があるけど……うん、今は無理だし仕方ないね。
じゃあ、次だね、次は雷属性をお願い」
「ん。雷属性の中級。分かった」
了承すると同時に、シルフが掌を完全に合わせた。
そうだなぁ、聖女様が祈りを捧げるみたいな構えだ。
その構えをして、少しして構えを解除と同時に何かを巻くような
そんな動作をした後、バチバチっと、大きな音がする。
「サンダーゾーン」
魔法名を唱えると同時に、バチバチと激しい音を鳴らす。
何人かが耳を押さえるくらいの音だ。
「はい」
音が消えるとターゲットは黒焦げになっていた。
「はい、今のがサンダーゾーンですね。
本来はそのエリアを維持する事が重要で
要は、罠として機能する魔法です。
適性があまり無ければそのエリアに入ると同時に
激しい痺れで動け無くなる程度ではありますが
適性が大きければ、そのまま相手を倒せる程になります」
「凄い音だったけど……」
「マグナ様にバチバチしてた時と同じ位ね!」
「え? いや、あの時の方が何倍もうるさかったような……
あ! そうか、そうよね、あなた気絶してたわね」
「え!? もっと大きい音が!?」
「えぇ……あいつは余裕そうだったけど」
あの時の方が電気凄かったって事だよな?
中級よりも爆音って事は、上級以上だったのか?
まぁ、そりゃ試す必要も無いか。うるさそうだし。
「じゃあ、次は光属性魔法をお願い」
「ん。光属性の中級魔法」
シルフが指先を2本合わせ、ターゲットに向ける。
そして、少しした後に指先が強く光る。
「ポイントショット」
その言葉と同時により光りが消え、ターゲットを貫いた。
ターゲットのダメージ規模事態は、1番少なそうに見えるが
この攻撃で特筆する部分は明らかに速度だった。
まぁあれだな、光りって滅茶苦茶速いらしいからな。
「な、え? 何が……え? い、いつの間に攻撃して」
「凄い光りが消えたら穴が開いてるわ!」
「凄いや、滅茶苦茶速いね」
「ポイントショットの特筆すべき部分は速度ですね。
適性がどれだけ低かろうとも、発動すると同時に
一瞬で狙った相手を攻撃出来ます。
例えどれだけ離れていたとしても狙いが合ってさえ居れば
一瞬で相手を貫ける魔法と言えます。適性による変動は
ただ貫通力だけです」
「かなり攻撃的な魔法なんだね」
光りって神聖なイメージあるけど、結構容赦ないんだなぁ。
レーザービームとか、こんな感じなのかもしれねぇな。
「はい、以上がそれぞれの魔法の中級魔法です。
他にもありますが、分かりやすいのはこれ位ですね」
「風属性はやらないの?」
「うん。今回は測定できる属性魔法だけで良いよ」
「分かった」
その言葉を聞き、シルフはすぐに俺に抱きつき
肩にまで登ってきた。可愛い奴だ。
「今回、シルフちゃんが見せてくれたように
中級魔法からは、かなり特色が出てくるようになります。
ですが、主には属性の延長線上と言えます」
「確かにそうね……」
「では、今回の授業はこれで終了としましょう。
それと、魔法の練習は家では行なわないでください。
魔法はイメージが大事なので、この場以外で
無理に練習をすると魔法が出しにくくなる可能性もあるので」
「はい」
「ただ、どのような魔法かをイメージするのは構いません。
先ほど渡した魔法のイメージ図とシルフちゃんが見せてくれた
中級魔法を思い出しながらイメージを固めていきましょう」
「はい」
「では、今日はお疲れ様でした。また明日会いましょう」
「お疲れ様でした!」
その挨拶の後、今日の授業は終了した。
予想以上にジュリアは先生の適性が高いな。