私を追放した大臣を締め上げる
「やりましたねモミジ様! すごいです! すごいです!」
モミジのもとにコロンが駆け寄って飛びつく。数十年ぶりに自分の国の異世界人が勝ったという喜びで、手が震えている。
(抱き着かれた! テンション上がってるコロンちゃん可愛いなぁ)
などと考えながらモミジはコロンの頭をなでる。
「マジかよあの異世界人! 本当にBランク能力者に勝っちまった!」
「Bランク相手に一歩も引かない勇敢さ、尊敬するぜ」
「物理ゴリ押しってすごい!」
集まっていた観衆たちからも拍手が湧き上がる。
地面に転がっていた二階堂の鎧が盾の形に戻っていく。二階堂の胸のあたりから光の玉のようなものが飛び出し、モミジの体に吸収されていった。
「ん? 今のは何?」
「異世界人同士の戦いに決着がつくと、負けた方の能力が勝った方に吸収されるのですよ! 吸収した能力を使えるようにはなりませんが、”あらゆる願いを叶える魔法”を発動するために99個必要になるので、集めなければいけないのです!」
コロンは興奮が抑えきれずぴょんぴょんその場で跳ねながら説明する。
「なるほど。残り98個、頑張って集めなきゃ」
「しかし、二階堂のように装備品を具現化するタイプの能力者の場合、能力を失っても装備品は残るのです! 性能はある程度ダウンしてしまいますが。これを”アーティファクト”と呼んでいます。さっきモミジ様が折った剣も、アーティファクトの一種です」
「へー。じゃあ二階堂の盾、まだ能力が宿ってるんだ」
モミジがにやりと笑う。
「……ねぇ二階堂、その盾ちょーだい?」
「な、何をいってやがる。これは俺にとって一番大事なものだ! やるもんかよ!」
二階堂が盾を自分の背中に隠す。
「二階堂さん。あなた最初モミジ様のことを殺すつもりでしたよね? 盾どころか命も奪われても文句は言えないと思いますが。むしろ、命までは取らないというモミジ様の優しさに感謝するべきです」
「お、いいこというねーコロンちゃん! ついでに財布も置いて行って貰おうか。あとキャッシュカードの暗証番号教えて」
「ぐ、くううううううぅ!」
二階堂が歯ぎしりしながら言われたものをすべて差し出す。
「……さて、さっきからこっそり逃げ去ろうとしてるガリエーさん? アンタにも金目のもの置いて行ってもらおうかなぁ」
「ギクゥ!」
呼び止められたガリエーがぎこちなく振り返る。
「異世界人召喚リセマラのために私のことを1度ならず2度も殺そうとしてくれちゃって。まさかタダで帰れると思ってないよねー?」
「へ、へへ。まさかそんな滅相もない。誤解ですぞ誤解。わたくしは初めからモミジ様の強さを分かっておりましたとも。そしてその強さをより引き出すために修行として崖から突き落としたり二階堂をけしかけたりしたのです。いやこれまじで本当でございます……信じていただけますか?」
「そうかー。ガリエーさん実は良い人だったんだねー……って信じる訳ないでしょー!」
「ですよねぇー!」
モミジがガリエーの頭をはたく。それだけでガリエーは頭から地面に叩きつけられた。
「す、少ないですがどうかこれで気を静めていただければと……!」
ガリエーが両手で高級そうな財布を差し出す。
「これはどうも。ところでガリエーさん、ずいぶん高そうなローブ着てるじゃない。セ〇ンドストリートで売ればおやつ代の足しくらいにはなりそうだなぁ~?」
「ど、どうぞどうぞ。こちらもお持ちください」
ガリエーがローブを脱いで差し出す。
「そのシャツもなかなか高そうな生地で……」
「もちろん差し上げますとも。さぁどうぞ!」
――
結局、ガリエーは下着以外のすべての身に着けているものを巻き上げられることになった。
二階堂と下着一丁になったガリエーが乗ってきた馬車で帰っていく。
「覚えておれ、この頭パッパラパーFランク異世界人め! 異世界人の召喚のやり直しにはもう間に合わんが、次こそ貴様をとっちめてやる! 覚悟しておけ!!」
「安い捨て台詞ですねぇ、モミジ様。エメラルド王国の大臣も程度が知れるというものです」
「はっはっは! ほんとそれ。……いややっぱ段々むかついてきた。誰が頭パッパラパーだとこの野郎!!」
「ヒィ!? 走って追ってくるぞあのFランク異世界人! 御者よ、もっと早く走らせんか! 全速力だ! 追いつかれたら殺されちゃう!」
顔を真っ青にしたガリエーと二階堂を乗せた馬車は凄まじい速度で逃げ去っていくのだった。
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