Bランク能力者をタコ殴りにする
二階堂が再び剣を振り下ろす。今度は、二階堂にも何が起きたのかはっきりと理解できた。
「俺の剣を、素手で受け流しただと……?」
「そう。これが私の能力の一つ。格闘技術【極大】」
モミジは余裕の笑みを浮かべながら、剣の腹の部分に手を添えて受け流す。
回し受け。円の動きで攻撃を受け流す、空手の基本防御術の1つである。
「なんで、なんで当たらねぇんだよ!」
「そりゃ素人が振り回す、それも鉄製で重い剣なんか当たるわけないって。遅すぎるし軌道も分かりやすいし」
「当たれ! クソ! クソッ!!」
二階堂が闇雲に剣を振り回すが、モミジはそのすべてを完璧に受け流す。
そしてこれまでで一番大きく二階堂が剣を振り上げようとしたとき、
「――ハイ隙あり!」
一瞬の隙を見逃さず、モミジが剣の腹に裏拳を叩き込む。甲高い音を立ててポッキリと、剣が根元から折れた。
「は?」
「はい?」
二階堂とガリエーが、素っ頓狂な声を出す。
「鉄製の剣があっさりと壊された? 素手で? 嘘だろなぁおい??」
「あああああ! 我が国の! 我が国のアーティファクトが! よくも、よくもやってくれたな! Fランク能力者の分際で!!」
ガリエーが地面を踏みつけて喚く。
「まさかこれほどにFランク能力が強いとはな。正直驚いたぜ。だが、技だけじゃ鎧に包まれた俺には勝てな――」
「いや、パワーもあるよ?」
「へ」
次の瞬間、二階堂は吹っ飛んでいた。空中で3回転半、石畳の上に落ちてからさらに2回転し、石像の台座に当たってようやく止まった。
「は? こ、今度は何が起こった?」
二階堂の鎧の胸の部分は壊れて大きな穴が開いていた。
「もしかして、殴り飛ばされた……のか?」
「そうだよ。特別な事なんてない、ただ踏み込んで殴っただけ」
広場を囲む群衆も、二階堂も、ガリエーも、全員が唖然としていた。
「そんな、素手でこの鎧を破壊しただと……?」
「はい、ここでモミジちゃんクイズです。硬い鎧に包まれた敵を倒すにはどうすればいいでしょうか?」
モミジが歩いて二階堂のもとに距離を詰める。
「正解は鎧の強度以上の破壊力でぶん殴る! 物理でゴリ押せばたいていのことは大体何とかなる!」
「グッハアアアアアアァ!!」
今度はモミジの足が二階堂の兜を真上に蹴り上げる。全く反応できなかった二階堂の身体は、まるで嵐の中の枯れ葉のように吹き飛んでいく。
「お、おいうちの国の異世界人、Bランク異世界人を圧倒してねぇか……?」
「Fランクなのに、Bランクより強いってことか? そんなことあるのか!?」
遠巻きに見ていた群衆が騒ぎ出す。
二階建ての家の屋根より高く飛んだ二階堂が落ちてきて地面にたたきつけられる。
「て、てめぇ好き放題やってくれやがったな……。もう容赦しねぇ! 俺様の奥の手で確実にあの世に送ってやる! 覚悟しやがれ!」
”スキルポイント消費。スキル【自己再生】を獲得しました”
”スキルポイント消費。スキル【形態変化:シールドバッシュ】を獲得しました”
二階堂の鎧の壊れた箇所がみるみるふさがっていき、盾の形状に戻る。そして、攻撃用の棘が生えた。
「防御するだけが盾じゃねぇぞ! 盾には殴るって使い道もあるんだ! 喰ら――え?」
「これだけパワーの差があったら、そんな武器に何の意味もないよ。受け技を使うまでもない」
モミジが盾の縁の部分を掴んで止めていた。二階堂が渾身の力で押し込んでいる盾は、1ミリも前に進まない。
「ねぇ二階堂、突然だけどミジンコって知ってる?」
「はぁ? 水の中にいる、小さいバクテリアだかプランクトンだろ? それがどうかしたのかよ?」
「ミジンコって天敵に襲われそうになった時、頭を変形させて尖らせて、食べられにくくするんだって。……でも実はほとんど意味がなくて、結局普通に食べられちゃうらしい」
「そ、それがどうしたっていうんだ!」
「いやー、今の二階堂みたいだなって」
二階堂が怒りで顔を真っ赤にする。
「ほざきやがれ!」
二階堂が盾を鎧形態に戻して体当たりを仕掛けようとする。が、それより先にモミジが拳を放つ。
二階堂の身体が一直線に吹っ飛び、広場中央にあった噴水の象に叩きつけられる。
壊れた鎧がまた自己再生を始める。
「何度やっても無駄だ、こんな傷すぐに――」
「遅いよ!」
モミジがすぐに間合いを詰め、追撃を繰り出す。
ガギィン!!
直り始めていた鎧がまた壊れる。
「二階堂、サッカーやろうぜ! お前サンドバッグな」
「サッカーでサンドバッグは使わな――ぐはっ!」
ガガガガガ! ガガガ!
モミジが凄まじい速さで連撃を繰り出し、鎧を破壊していく。鎧の再生が追い付かず、段々生身がむき出しになっていく。
モミジが手刀で鎧の右腕の関節部分を破壊する。そして外れた右腕のパーツを放り捨てる。
「ねぇ二階堂、今どんな気持ち? 私はカニを食べるために脚を外してる時の気持ち!」
続けて左腕の関節を破壊する。これで二階堂の頭と胴の鎧はほぼ全壊、両腕は生身になった。
「さぁどうする二階堂? 負けを認める?」
「だ、誰がFランク能力者相手に降参なんかするか!」
「そうかー。じゃあ仕方ない、顔の真ん中に私の拳と同じサイズの穴を開けてあげよう。合コンで”俺、よくドーナッツに似てるって言われるんスよ~”ってネタやったら絶対ウケるよ。やってみて。じゃあいくよー!」
モミジが拳を振りかぶる。
「わかった俺の負け、俺の負けだ!」
二階堂が慌てて両手を上げて降参を宣言する。
一瞬広場がシン、と静まり返る。
「い、今二階堂が負けを認めました。……と! いうことは! モミジ様の勝利です!」
広場は、盛大な歓声に包まれた。
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