Fランク能力がSSランクに覚醒した
(ちょっとまてちょっと待て! コレは私、どう考えても死ぬな!?)
モミジが死を覚悟した、その瞬間。モミジの身体中にこれまで感じたことのない強大な力がみなぎる。そして体の動かし方を理解していく。
(なんだこれ!? どう動けば良いのか、何をすれば助かるのかが分かる!)
モミジが崖から出っ張った岩に叩きつけられる。普通の人間なら、自動車に轢かれた卵のように潰れるほどの勢いだ。
だが、モミジは受け身を取って勢いを殺す。
(全然痛くない! 体が全部鋼になったみたいだ。そして体をどう動かせば良いのかが完璧に分かる!)
モミジは別の岩や崖から横向きに生えた木を使って勢いを殺しながら落下していく。そして、最後には音もなく優雅に地面に着地した。
「なんだったんだ、今の……?」
モミジは再びステータスウインドウを開く。
先ほどと同じ”F”の文字がデカデカと表示されたウインドウ。だが、そこで異変が起こる。
”F”の文字が点滅し始める。そして文字が砕け、その奥から虹色の輝きと共に”SS”の文字が現れた。
「ガチャのランクアップ演出かよ!?」
驚きを通り越して呆れたモミジがステータス画面を確認する。
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|綾崎紅葉≪あやさきこうよう≫
能力:【怪力】
能力ランク:SS
――能力説明――
●筋力強化【極大】
●格闘技術【極大】
●(条件を満たすと解放)
●(条件を満たすと解放)
●(条件を満たすと解放)
●(条件を満たすと解放)
――基礎パラメータ――
体力:635/635
魔力:130/130
筋力:1283
知力:2
幸運:22
敏捷:238
※目安:成人男性の平均は各パラメータ20程度
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「【怪力】か……! 可愛くないけど強そうな名前だな」
モミジ試しに近くの木の幹を軽く殴ってみる。するとメキメキと音を立て、木があっさりへし折れる。
「……もしかして、この能力、ものすごい強いんじゃ? よし、この能力で人をリセマラ感覚で殺そうとしてくれちゃったあのおっさんを、泣くまでどつきまわしてやる」
そんな物騒なことを口にしながら、モミジは危険なモンスターが棲むという森を歩き出す。適当な方角に。
――――
「モンスターに発見された! 全員、応戦体制!」
モミジが落とされた場所から少し離れた森の中で、戦闘が始まっていた。
数十人ほどの甲冑を纏った騎士たちが槍を振るい、魔法使いが炎や水の矢を飛ばす。彼らは、1人の少女を護るように陣形を組んでいた。
襲っているのは、真っ赤な毛皮の狼。この森に多く生息するモンスター、”ブラッディウルフ”の群れだ。
単体での強さはさほどではないが、群れでの戦闘能力は非常に高く、騎士たちの戦列を徐々に押し込んでいく。
「しまった! 1頭逃した!」
1体のブラッディウルフが騎士たちの間を抜け、後ろで身を小さくしていた少女に襲い掛かる。
もうだめだ、と少女があきらめて目をつぶったそのとき、
「しつけがなってないなぁこの犬っころ!」
茂みからモミジが勢いよく飛び出し、ブラッディウルフの頭を真上に蹴り上げる。荒っぽい口調とは裏腹に、とても洗練された動作の見事な一撃だった。ブラッディウルフが木を飛び越えて吹き飛んでいく。
さらに騎士たちの間をすり抜けたブラッディウルフの後続3頭がモミジに襲い掛かる。
先頭のブラッディウルフがモミジに喰らいつかんとその顎を開く。モミジが踏み込みながら右拳による突きで迎え撃ち、一撃で沈める。
モミジの猛撃は止まらない。左の突きで、残り2頭をまとめて近くの木に叩きつける。狼が立ち上がることは二度となかった。
生き残った数頭の狼たちは尻尾を巻いて逃げていく。
モミジの技の凄まじい破壊力をみて、周りにいた騎士たちは、ただ呆然するほかなかった。
「大丈夫? 怪我はない?」
「は、はい。大丈夫です……」
モミジが尻もちをついていた少女を助け起こす。
「危ないところを助けて頂きありがとうございました。私は、コロン・マリエスと申します」
コロンがペコリと頭を下げる。丁寧に切りそろえられたサラサラの金髪が揺れる。
年はモミジより一回り下だろうか。
この世界の住人であればだれでも、少女の高貴な身なりを見て、高い身分であることがわかっただろう。
しかしモミジはこの少女を見て、
(この子ちっちゃくて上品な雰囲気でめっちゃ可愛い! こんな妹もしくは後輩が欲しかったなー!)
などと考えていた。
モミジは年下の女子に甘かった。
「コロンちゃんね。私は異世界から来た女子高生、|綾崎紅葉≪あやさきこうよう≫。モミジって呼んでほしいな。よろしくね」
「異世界から!? もしかして、エメラルド王国の代表として召喚された異世界人でしょうか? なるほど、異世界人ならその強さも納得できます。素晴らしい技のキレとパワーでした! とても格好良かったです!」
周りの騎士たちもなんども頷く。
「……そうだ、そんなことより、早くここから逃げましょう! 戦闘で大きな音を立ててしまいましたから、ここにいると危険です。あのモンスターに気付かれ――」
その時。木々をなぎ倒し、何かが重い足音を響かせながら近づいてくる。
コロンの顔が真っ青になる。騎士たちが再び槍を構えるが、手が震えている。
「どうやら、見つかってしまったようです。この森に棲む、最強のモンスター。出くわしてしまえば最後、命はないといわれているモンスターです」
コロンが震える声で説明する。重い足音はどんどん近づいてくる。
「そのモンスターの名前は、”アーマードグリズリー”。単純な強さでいえば、Cランク能力持ち異世界人に相当するといわれています」
木々の間から、巨大な熊が現れた。立ち上がれば4メートルはあるだろう。太い手足と鋭い爪。そして全身を覆う黒い甲殻。兜の奥の目は、縄張りを荒らされた怒りで燃えていた。
「ああ、終わりですモミジ様。どうやってもこの人数ではあんな化け物を倒すことはできません……」
コロンは涙目になっていた。
「甲羅を身に着けたクマってやばいね。なにか弱点とかないの?」
「弱点は魔法による攻撃です。20人以上かかってで討伐に成功したと聞きましたが、その時は罠に掛けた上で盾使い達が囲んで動きを封じ、魔法使い達が集中砲火することでなんとか倒せたそうです。モミジ様、魔法は使えますか!?」
「いや全然。この世界に攻撃の魔法があるって今聞いたくらいだし」
「も、もう駄目です、打つ手がありません。……モミジ様、私と護衛の騎士たちが食い止めます、その隙に逃げてください!」
コロンが覚悟を決めて、腰から短剣を引き抜く。
「さっき狼の群れから助けていただいた時、とてもうれしかったです。こうして最後に異世界人のモミジ様に会うこともできましたし。私はこれで満足です。どうかモミジ様だけでも、ここから生き延びて……」
「えー、やだ」
モミジは腰を落として構えを取る。
「大丈夫、今の私はクマさん如きに負けたりしないよ」
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