突然異世界に召喚されたが今すぐ帰りたい
「今週も最っっっ高に面白いなー!」
女子高生が、自室のベッドにあおむけになって少年向けの週刊漫画雑誌を読んでいる。
毎週月曜日、この時間が何よりの楽しみだ。
彼女の名前は綾崎紅葉。仲のいい友達からは”モミジ”と呼ばれている。
ぱっちりとした瞳は紅葉のような深い赤色。黒髪をショートウルフにしたその姿は、快活という言葉がよく似合う。
モミジは最後に、一番のお気に入り漫画を読む。
「……マジか、来週最終回!?」
モミジに衝撃が走った。
「5年間追いかけてきたけど、遂に完結か……! 嬉しいような淋しいような」
ベッドの上で手足をばたつかせる。
「ああ、来週が待ち遠しい! 最終回を読むまでは絶対に死ねない!」
その時、ベッドの上にぽっかりと穴が開く。
「へ?」
悲鳴を上げる間もなく、モミジは穴に落ちていった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「痛ってて……」
次の瞬間、モミジは見たこともない西洋風のやたら広い部屋で尻もちをついていた。近くにはモミジと同じように穴に吸い込まれたらしい2人の男も座っている。
彼らの足元には、文字のようなものと幾何学模様がびっしりと書き込まれた魔法陣が広がっていた。
「ようこそお越しくださいました」
豪華な着物を着た中年男性が現れる。
「ここは皆様が元いた世界とは異なる世界。私が、皆様をこの世界に召喚しましました、異世界人代理戦争大臣のガリエーと申します」
突然の事態に、モミジ達はポカンとしている。
「どうか皆様には、我が国のために戦って頂きたいのです。報酬はーー」
「ーー帰して」
「はい?」
モミジが、ガリエーの胸倉を掴んで締め上げる。
「元の世界に帰して! 5年間ずっと追い続けてきた漫画が来週で最終回なんだよ! なんでこんな時に異世界なんかに召喚するの!?」
「わ、分かりました! あなたは元の世界に送り返させていただきます! 大抵の方は異世界での生活を喜んで受け入れてくださるのですが……残念です」
モミジは手を離す。
「今すぐは不可能なので元の世界に送り返すのは明日になってしまいます。ところで皆様、実は異世界人である皆様には1人1つづつの特殊能力が与えられております。”ステータスオープン”と唱えていただければ、能力の説明画面が現れますこちらを確認させていただきたいです」
まずモミジと一緒に召喚された男が”ステータスオープン”と唱える。すると、手元にうっすらと光る半透明のウインドウが立ち上がる。
「それがステータスウインドウです。数値化されたステータスと、与えられた能力の説明が書かれております」
ステータス画面が銀色に輝き、デカデカと”B”の文字が現れる。
そして”B”が消えて、能力の名前と詳しい説明が表示される。
「なになに……? 俺様の能力はBランク【無限成長の盾】だってさ」
「おお、Bランクはかなり優秀な能力でございます」
「よし、まあまあ当たりってとこだな。悪くねぇ」
それを見ながらモミジは、
(ステータス画面ってゲームの世界かよ。最初銀色に光るのもソシャゲのガチャの演出みたいだなー)
などと考えていた。
次にもう一人の男がステータスウインドウを開く。今度は金色の光が発生し、”A”の文字が現れた。
「よっしゃ、俺の能力はAランク! 【生命創造(炎)】!」
「おお、これは素晴らしい! 優勝を狙いに行けるでしょう!」
「いえい! 俺はこの能力で勝ち組人生を謳歌してやるぜ!」
Aランク能力を引き当てた男が大きくガッツポーズする。
「さぁ、最後はあなた様です」
ガリエーがモミジの前に立って催促する。
(明日元の世界に帰る予定の私がやる意味ある? これ? まぁせっかくの機会だしやってみるか)
と考えながらモミジはステータスウインドウを開く。
するとウインドウの真ん中に、他の二人と比べて明らかにしょぼい、くすんだ茶色の”F”の文字が現れる。
「ああ、もう結構です」
ガリエーがモミジのウインドウの右上の”×”マークを押してウインドウを閉じる。
地面に膝をついて、大きなため息をつく。
「はぁーーーー。Fランク、ですか……」
「大丈夫? ”バイト代全額突っ込んで回したソシャゲのガチャで爆死した”みたいな落ち込み方だけど」
「そのたとえはよくわかりませんが、とにかく落ち込んでおります。まさか以前に召喚したEランクの”タマネギと会話できる能力”以下の能力者を召喚してしまうとは……!」
「ええとなんていうか、ドンマイ?」
「誰のせいだと思っているのですか!」
ガリエーが声を荒げながら立ち上がる。
「……失礼、取り乱しました。詳しい説明は明日にしましょう。皆様には屋敷を用意しております。今日のところはお休み下さい」
ガリエーと3人の異世界人は城の外に出て、それぞれ馬車に乗せられる。だが、
「あのー、ガリエーさん? 私の馬車だけなんかボロくない?」
確かにモミジの乗る馬車だけ明らかに古く、傷んでいて、狭い。
「気のせいでございますよ。さぁまいりましょう」
ガリエーとモミジを乗せて馬車が走り出す。
――
「あの、街から出てどんどん人気のないところに向かってない? ほかの二人とも反対方向だし」
「ええ、のどかな自然の中に宿を用意しておりますので」
――
「さっきからずいぶん山を上るね」
「ええ、見晴らしの良い高台に屋敷を用意しておりますので」
――
「うわー、崖の底が見えない。こんなところから落ちたらひとたまりもないだろうねー」
「ええ、ひとたまりもないでしょうなぁ。しかもこの谷の底は非常に危険なモンスターの生息地でして。落ちた衝撃で死ななかったとしても間違いなくモンスターの餌食でしょう」
そして崖沿いの道で突然馬車が止まる。ガリエーに勧められるままモミジは馬車から降りる。
「ここから見下ろす森は国の中でも最高の景色の一つでして。是非ゆっくりご覧ください」
「本当、いい眺めだ。見渡す限りずっと森が広がってる」
「どうぞどうぞ、遠慮なくもっと近くでご覧ください。崖っぷちギリギリから見る眺めは特に最高ですよ」
ガリエーに言われるままモミジは崖のフチのギリギリのところに立って景色を楽しむ。
「おっと失礼、足が滑りました」
「うわっ!?」
ガリエーがモミジを蹴り飛ばす。間一髪モミジが崖のフチにしがみつく。
「痛っいなぁ……。はやく引き上げてよ」
「まぁまぁそう慌てないでくだされ。……ところで先ほど、私は強力な能力を持つ異世界人を召喚したいと言いましたね?」
「聞いたね」
崖のフチに捕まったままモミジが答える。
「実はですね、24時間以内であれば召喚された異世界人が何らかの理由で死んでしまった場合、一度だけ召喚のやり直しが効くのですよ。召喚に使用した魔力が戻ってきますので」
「へー、それは万が一事故があっても安心だ」
「なのでFランクの、しかも我が国に協力する気のないハズレ異世界人が召喚されてしまった場合、もしうっかり事故で――たとえば崖から足を踏み外して落ちてしまったなどして――その異世界人が死んでしまうと、実は我々としては召喚をやり直せるのでとてもありがたいのです」
「あー、なるほど。ソシャゲのリセマラみたいなやつね。分かるよ、私もやったことあるから」
「理解が早くて助かります。……という訳で死ねええええぇ!」
「ええええぇー!?」
ガリエーがモミジを崖から蹴り落とす。
「そんな、元の世界に送り返してくれるって言ったのに!?」
「あんなもの嘘です! 元の世界にそんなに簡単に送り返す方法なんてありまっっっせーん!!」
「よ、よくも騙したなあああああああぁぁ!!」
モミジは谷の底へ真っ逆さまに落ちていく。
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