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陰キャが異世界で無双してみた  作者: するめ狂い
陰キャ育児編
91/117

戦争を止める方法

アニムスはそんな影虎を見てふっと笑う。

「へえ……いいね君……僕の作品を壊した事も今だけ許してあげよう。さあ早く感想を言ってくれないか?」

「そうだな……」

アニムスが感想を催促すると、影虎はゆっくりと語り出した。

影虎が小説の中で男と会い、慌ててそのを追いかけた後。

しばらくそうして歩いていると、やがて木造の広い家が現れた。

男はその中に入っていった。

影虎もそれに続き、家に入った。


「ここに座りなよ」

「ど、どうも……」

影虎は男に勧められるまま木の椅子に座った。

部屋の中は窓が開けられており潮風が直接入ってくる。

家具などは最低限の物しかなく、人が生活しているようには見えなかった。

影虎がそう辺りを見ていると、男が影虎に声を掛けた。


「そろそろ話をしてもいいかな?」

「ああ……」

影虎はこの男が示す戦争を止める方法というのがどんな物なのかひどく気になっていた。

男は静かに語り出した。

「ねえ……君は人の敵意を消失させる類の依代を持っていないか?」

「……持ってるけど……それが何か?」

影虎は“純粋冠毒”の依代を取り出して男に見せた。


「そう……そいつが戦争を止める為の鍵となるのさ……」

「何!? でも俺は一回それを使ったら何故か使えなくなっちまったんだぞ……」

「ああ、それなら心配無い。今説明しておくがそいつは慈悲の心が無いと使えない。

君は多分最初的か仲間に使って次に敵に使ったんじゃないか?」

「あ……確かに……」


影虎は純粋冠毒が使えなかった理由を完全に理解した。

晴人の時は手加減をするという意味があった上、キノニアの時は戦闘不能にして止めを刺そうという意思があった。

影虎は中々出来過ぎな依代だと苦笑した。

そして男は更にこう続けた。


「つまりそういう事さ。こいつを使えば強引にでも戦争を止められる……その為に君が修行をして純粋冠毒を完全に使いこなせるようになれば……って訳だよ。じゃあ行くよ」

「え……ちょ……急過ぎないか!? 自己紹介もしてないのに!」

「影虎君だろ、確か」

「何で知ってんの!?」

影虎は男に腕を引っ張られて強引に外へと連れて行かれた。

何故男が自分の名前を知っているのか疑問に思いつつ。

影虎はその後、様々な修行を男にさせられた。

技を織り交ぜての素振り五千本、霊術で精巧で緻密な芸術作品(象牙多層球並みの)を創り出す等のとてつもない修行を。

因みにどちらもトランプタワーを250階立てる程度の集中力を要する。

もはや人間を辞める為の修行と言っても過言ではない。

当然、最初の内は影虎に出来る筈もなく……


「こんなの出来るかボケーーー!」

「はあ、投げ出すのかい?」

「いやそういう事じゃねえよ! いきなりこんな無茶な修行じゃなくてもうちょっと難易度を落としてくれ!」

「意外と根性あるね君……」


だが影虎は難易度を落とす事は要求しても修行は辞めなかった。

そうして小説の中で修行し続ける事、五年。

五年経って、ようやく修行が板に付いてきた。

技は即座に、しかも混ぜる事も容易に出来るようになり、霊術も範囲、精密性共に神と呼べる領域にまで達した。

そんな時、男はふとこう言った。


「影虎君……君はもうそろそろ大丈夫だ。後は純粋冠毒を使いこなす練習だね。でもこれも直ぐに出来るようになるだろうけどね」

「おお……やっと……」

影虎はここまで長かったなあと少し感動を覚えた。

そして、男が剣を構えて言った。

「剣に、純粋冠毒を付与してくれ」

「ああ」


影虎は言われた通りに刀に純粋冠毒を付与する。

「それで適当に自分が撃てそうな……慈悲の心で使えそうな技で地面を突き刺す。それだけだ。後は霊力の籠める量とイメージさ。これで戦争を止められる」

「分かった……やってみるか……」

影虎はそうして目の前にいる男の戦意を無くすイメージで何度も様々な技を行使して試した。


しかし、どの技でも上手く行かなかった。

「な、何でだよ……」

「う~ん、これはもう君次第だから私はどうしようもないな……」

「どうすれば良いんだ……!」

影虎は頭を抱えた。

何故ならどの技でも出来なかったのだから。

影虎はそうして何日も悩み抜いた。

どうすれば技が放てるのかと。

時には己にこの技は使えないのではないかと思い詰めた事もあった。


そうして悩み続けていると、影虎は一つの発想に辿り着いた。

「そうだこれなら……! おい師匠! 今なら出来る気がする! 頼む!」

「分かった」

影虎は男を呼んで近くに立って貰う

そして影虎は、何の工夫も無しに、何も技を使わずにただ純粋冠毒を付与した刀で地面を突き刺した。

純粋冠毒が男に伝わっていく。


「!? うっ……これは……純粋冠毒! 」

「成功した!? やった……俺は遂にやったんだ……!」

影虎はようやく出来たという達成感に満ち溢れた。

「何で成功したんだろう……」

「成功したのは……単純さかな」

「単純さ……?」

「ただ単純に技も何も無しに突く……それが一番慈悲の心が出やすいと思ってやったら出来たんだ……」

「成程……シンプルイズベストって奴か……」

「そうかもしれないな……これで俺もやっと……!」


影虎は喜びのあまり号泣した。

男はそんな影虎の肩を優しく叩いて言った。

「よく、頑張ったな……これで修行は終わり。これで君は救世主になれる」

「ああ……ありがとうな」

影虎はここまで鍛え上げてくれた男に感謝する。

続けて男は影虎にこう告げる。


「あともう俺の役目は終わりだ……最後に一つ言っておく事がある。この技で戦争を止めるにはどうやっても世界の中心でやらないといけない。その中心を今教えておくよ」

「分かった。何処なんだ?」

影虎は男からその場所を聞いた。

それを聞いた影虎は驚愕する他無かった。

「嘘だろ!? マジかよ……」

「ふふ、驚いただろう? だから最後に言ったんだ」

男はそう言って悪戯っぽく笑った。

「もう時間切れだ……それじゃあ、絶対に戦争を止めてこいよ!」

「ああ!」

影虎は男に力強く答えた。

戦争を必ず止めると。

そして次の瞬間、影虎は目を覚ましたのであった。






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