残された者達VSアニムスその1
影虎が目を覚ますと、そこは何と砂浜であった。
ザザーッと波の音が鳴っており、影虎のすぐ近くに海があった。
潮風が心地よく吹いている。
「今度はどんな奴になったんだ……?」
影虎は海で今の自分の顔を見る。
そこに写っていたのはなんと影虎のいつもの顔であった。
着ている服も黒装束のままだ。
「か、変わってない!? どういう事だ!?」
影虎がこの事態に困惑していると、黒いフードを被って剣を携えている怪しげな男らしき人物が遠くから走って来た。
「な、何だアイツ……!」
影虎はいつで刀を抜けるように柄に手を添える。
親切な事に刀や依代もあった。
「だ、誰だ!」
影虎がそう声を上げると、男はこう言った。
「君が翳の勇者かな? 私は君に戦争を止める方法を教えに来た者だ」
「……何だって?」
影虎は思わずそう聞き返した。
そして影虎はそれと同時にこの男の声をどこかで聞いたような気がしたが、どうにも思い出す事が出来なかった。
「まあ、とりあえず来るといい。時間が無いんだよ……」
「おい、ちょっと待てよ!」
影虎はさっさと歩き出す男の後を慌てて追いかけたのであった。
*
*
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「ううっ………」
「目を覚ましそうに無いわねカゲトラさん……どうすればいいのかしら……今ので結構魔力削られたし、これ相当不味いんじゃ……」
「ハルトも居ないし……私達だけで凌げるかしら……」
「あ、兄貴~! 目を覚まして下さいよ……!」
カミルレとアルメリア達は焦った。
なにしろ一番の戦力である勇者三人とミコモが戦闘不能なのだ。
残っているのはカミルレとアルメリア、そしてリトテとシラユキのみだ。
これでは魔術の準備の間に次のアニムスの攻撃で負けてしまう。
「ははは……これでもうお手上げかい?」
「いいや、まだだ! 貿易!」
アニムスが勝ち誇るようにそう言った。
しかしリトテは負けじとアニムスに立ち向かう。
「見た所君は下級魔族のようだね? 上級魔族であるこの僕に立ち向かうとは君は自殺志願者なのかな?」
「あんまり舐めてると痛い目を見やすぜ……」
「ほう……やってみなよ……」
リトテは手を見下すアニムスに突き出し―――
「水を購入する……そりゃあ!」
手から水を噴出させた。
アニムスの服と本に大量の水が染み込んだ。
彼は水がしたたる自らの小説を見て静かにこう言った。
「確かに君の言う通り舐めるんじゃあ無かったね……お望み通り本気で殺……」
「貿易! 水乾石!」
「な!?」
アニムスの言葉を遮ってリトテは吸水性の凄まじい石を大量にアニムスに投げ付ける。
「それで乾かすといいですぜ……へへ」
「クッソお前……僕の作品愛を利用するとは……後で八つ裂きにしてやるからな!」
「その前に兄貴が倒しやすぜ、あんたの事を」
アニムスは怒り狂いながらも本に水乾石を当てて水を吸い取っている。
リトテの奮闘ぶりと気概を見て二人は心を打たれた。
「や、やるじゃない……見直したわ」
「へへ……どうもっす」
「私達もやるわよ! ほらアルメリア!」
「分かってるわよ!」
二人が希望を抱いたその時。
「やっと霊力が回復したわ……一緒に撃ちましょう」
「おお! 助かるわ!」
ミコモが二人にそう声を掛けた。
霊力を身に纏って青く発光しており、霊術の準備が整っているようだった。
そして更に。
「ふう……これでやっと直ったよ……私も加勢させてね」
「モエギさん! やっと直ったのね!」
「ご迷惑をお掛けしました……」
「いいわよ別に! それじゃあ行くわよ!」
「「「ええ!」」」
「了解っす!」
アルメリアの声掛けが新たな戦いの火蓋を切った。
「ーーー冴月連山!」
まず先手を打ったのはミコモだ。
無数の氷の刃が地面から生え、ずぶ濡れの本を必死に乾かすアニムスの体を貫く。
「ぐあああああああ!」
「からの……魔喰!」
ミコモは更に魔喰で氷付けのアニムスから霊力を出来るだけ奪い取る。
アニムスの霊力自体は大した量では無く、魔喰によりアニムスの残りの霊力は四分の一を切った。
「あれ?……何でこんなに早く霊力が無くなるのかしら……霊力が中級魔族程度しか無いわ」
「五月蝿い! 僕は中級魔族から成り上がった身なんだよ! そんな僕の霊力をこんなにも吸い取りやがって……殺す!」
アニムスが怒りのままに複数の霊術で乾いた本をミコモに当てようとする。
だが……
「ーーーケラヴノス・クレモス!」
「ーーートレイス・コンヘラル!」
「反霊小町!」
それは二人の魔術と萌葱の武器によって無駄な攻撃と化した。
しかし、アニムスは上級魔族。
その名は霊力が少なかろうと成り上がった身であろうと伊達ではない。
「はは……僕の方が上手だったね」
「「「なっ!?」」」
「う、うわあーーー!」
リトテの目の前に、もう一つ本があった。
「も、もう間に合わない!」
「だ、誰かーーー!」
リトテは思わずそう叫んだ。
それが通じたのであろうか。
「………」
シュッ!
まるで雪のように透き通った糸が、本の行く手を阻んだ。
そう、シラユキの糸である。
「し、シラユキ~!」
リトテはまさかの救いの手に、平に感謝したのであった。




