シラユキ、成長する
そして次の日の朝。
「こんなに硬いとか聞いてないぞ影虎……!」
「ええ……無敵の聖剣アンサラーで何とかして下さいよ~」
「バカ言えこんな所でうかつに力出したら城が崩壊するわ!」
「マジかよ……」
晴人はぐっと力を籠めてようやく糸を切る事に成功した。
影虎達は今、シラユキが出した糸をせっせと片付けている。
「全く……出発の時までこんな掃除をする羽目になるとはね……とほほ」
「泣きたいのは皆同じですよ萌葱さん……」
「カゲトラ、そんな文句言わないの」
「「「「誰の所為だよ!!!」」」」
軽くそう言うミコモに全員が噛み付いた。
「お前が寝坊してシラユキをほったらかしにするからこうなるんだろ!? だから今度から俺がシラユキの管理をするぞ」
「あーん」
何処からか取り出したレムネの実を食べようとするミコモ。
「「おいそれだけは止めろ!!!」」
「「ん?」」
全力で止めようとする影虎と萌葱。
覚醒した所を実際に見た事が無い晴人とリトテは不思議そうな顔をしている。
「分かった! 分かったって、シラユキの面倒は今後もお前が見ていいから!」
「そうだよ! だからお願い早まらないで!」
「分かったわ。じゃあ大切に世話するから」
「「……………」」
晴人とリトテはそんな二人の様子を複雑な心境で見ていたのであった。
*
*
*
「シラユキ……あいつも連れていくのか影虎……」
「当たり前だろ。大切な仲間だぞ」
「そうだろうけど戦闘の時どうするんだよ……」
影虎達はミル王国に向かった時と同じ様に船に乗り込んだ。
「あいつ糸出せるし多分戦えると思うぞ。生存本能で。この前俺があいつを抱っこした時落としちゃったんだけど、その時も口から糸出して落下を防いでたし」
「何気に凄いんだなシラユキ……てか落とすなよ……」
シラユキのポテンシャルに感心する晴人。
「でもあいつ動いて糸出して食って寝る以外は何もしないんだよな。それ以外の行動してる所を見た事ない」
「何の生物なんだろうな……」
「さあな……でもこれで育児中の親の気持ちがよく分かったぜ……」
「そうか……あとあいつ何食うの?」
「もっぱら野菜だな。一応肉も食うけど」
「うんこはどんな形なんだ?」
「お前の口からその質問が出るのか……何か野菜の匂いのする星型のうんこだった」
「星型ってどんなのだよ……」
「星型は星型だよ。あと全く水気が無くて普通の松ぼっくり位の大きさだったな」
「ますます謎が深まっただけじゃねーか……」
因みに、影虎は文献でも一応調べてみたもののシラユキの正体は記されていなかった。
体の各部位も毛で覆われておりよく見る事が出来ない。
シラユキには謎があまりにも多かった。
「お~い影虎君! シラユキが……!」
二人が甲板でそんな風に話していると、萌葱が慌ててやって来た。
「今度は一体何が……」
「シラユキが……金色になって固まった……」
「「どういう状況なんですか!?」」
「とりあえず来て!」
「わ、分かりました」
「俺も見に行こうっと」
そうして二人が萌葱に連れられて船室で見た物は―――
金のような輝きを持った謎の塊。
それが床に落ちており、その周囲をミコモ達が囲っていた。
「「何だこれ………」」
二人はもはやそれ以外の言葉が出なかった。
「と、とりあえず迂闊に触らずにそっとしておこう……」
「そうですね……」
しばらくの間金色になり固まるシラユキを見守る。
すると………
パキッ!
パキパキッ!
パリパリパリ。
もぞもぞ……
なんと一回りサイズが大きくなったシラユキが金色の皮から出てきた。
「だ、脱皮だったのか……でかくなってやがる……」
影虎はシラユキを両手で持ち上げてみた。
「うっ……前よりも重くなってる……」
「シラユキ成長したのね。えらいえらい」
「でもこいつ大きくなったら今よりももっと糸出すようになるんじゃ……」
「「「「「………」」」」」
影虎達は押し黙ってしまった。
だがシラユキはそんな事を気にせずにのそのそと活動を再開する。
「ねえハルト、あれ何なの……」
「何の生き物なのよ……怖いわ……」
「いや俺に聞かないで……」
晴人の取り巻きのアルメリアとカミルレに至ってはシラユキを恐怖の対象として見ている。
シラユキの動く様は中々可愛らしいのだが。
と、影虎達が硬直している間にシラユキが白銀の糸を出し巣を張ろうとする。
「止めろーーー!」
影虎達は張られた糸を切ろうとする。
「ーーー霊力剣、業物!」
影虎は刀を霊術で強化し糸を切ろうとする。
しかし、霊術を掛けたというのにも関わらず全く刃が通らない。
「嘘だろ……」
「俺がやってみる! アンサラー!」
晴人が聖剣アンサラーで糸を切ろうとするが……
「駄目だ切れない! これ以上力を出したら船が壊れる!」
「「「「「………」」」」」
一同は困惑する他無かった……




