新たな洞窟
このような事がありながらも一週間の日々が過ぎた……。
影虎の霊術も剣術も相当上手くなってきた。
霊術は威力、正確さ含めて大幅に上達し、剣術に至っては技の呼吸が速くなるのみに留まらず技を混ぜる事も可能になっている。
まだ完全にノーリスクという訳ではないが。
「強くなったな……俺……」
影虎は修行で己の成長を深く感じ取っていた。
そんな時だった。
メコル王国に晴人達が帰って来たのは。
「王様! ライ王国で洞窟を発見しました! おそらくミル王国の洞窟と同じ物だと思われます!」
晴人は玉座の間で王に報告する。
「またも見つかったというのか……だとすればカゲトラ殿にモエギ殿が調査して下さった洞窟のように上級魔族が潜んでいる可能性が高い……皆の者! 他の勇者殿を呼ぶのじゃ!」
「「「「「はっ!」」」」」
そうして影虎達は玉座の間に呼び出された。
晴人はエルドレットが居ない事に首を傾げるが、何かの依頼に取り掛かっているのだろうと自分を納得させた。
「今日皆に集まって貰ったのは他でもない。ハルト殿が洞窟を発見した事じゃ」
「「「「!?」」」」
(何でだ……? 刀のパーツはもう揃った筈……)
影虎達は新たに洞窟が発見された事に驚きつつ、そう言えば前にパーツを手に入れた時に先代勇者が出てこなかった事を思い出した。
(あいつ出て来なかったな……あのクズ野朗……)
先代勇者に怨みを募らせる影虎をよそに説明が続けられる。
「そこで再び勇者の方々にお頼みしたい。どなたか引き受けては下さらぬか……」
「あっ、王様、俺はもう既にライ王国に洞窟の依頼を受けるように言われています」
「そうか……かたじけない!」
既に洞窟には晴人が行く事が決定している。
「では他には……」
「カゲトラ、どうする?」
「行くに決まってんだろ。王様! 俺も行きます」
「カゲトラ殿もですな? 有難い!」
影虎達が晴人に同行する事が決定した。
その様子を見ていた萌葱も手を上げる。
「王様……私も行きます……」
「モエギ殿もか! ……これなら万全ですな」
「そうですね」
晴人が王の言葉に同意する。
そうして、勇者全員でライ王国へと向かう事が決まったのであった。
*
*
*
「―――それでは、出発は明日の朝じゃ。それまでゆっくりと休んで下され」
「「「「「はっ」」」」」
影虎達はそれぞれ自分達の部屋へと戻った。
「はあっ、洞窟か……」
影虎は会議で疲れた体をベッドで休める。
「今度は晴人も居るし、大丈夫だよな……修行もしたし」
影虎は上級魔族と戦う事が不安だった。
あれほど修行をして、それでも尚苦戦させられたのだ。
エルドレットという計り知れない犠牲もあって、ようやく倒せたのだ。
不安になるのも無理もなかった。
影虎がナイーブな思考に囚われていると、誰かが影虎の部屋の扉を叩いた。
「お~い、影虎。今入っていいか?」
「いいぜ」
ノックの主は晴人だった。
「何の用だ晴人?」
「いや……単に暇だから来ただけだよ」
「あっそ……あの二人とイチャコラしてればいいものを……」
「いい加減殴り飛ばすよお前……」
晴人は影虎を睨むが、影虎はそ知らぬ顔だ。
「まあいいや……そういえば影虎、今エルさんって何処に居んの?」
「っ!?」
晴人の何気ない問い掛けに、影虎は言葉を詰まらせる。
影虎はこういう時、どう説明したらいいのか分からなかった。
(うう……何て言えば良いんだよ……)
影虎は顔を青ざめて頭を抱える。
晴人はそんな影虎のただならぬ様子を見て、何かを察した様子で言った。
「影虎……大丈夫か!? まさか……エルさんに何か……」
「ああ……」
「そうか……ごめんな、悪い事を聞いて」
「いや、仕方が無いよ。こればっかりはな……」
「………」
晴人は何か影虎に慰めの言葉を掛けようと思ったが、それが逆効果になってしまっては意味が無いとも考え、押し黙ってしまった。
二人の間に、重い沈黙が流れる。
「………」
「……」
だが、その沈黙を破ったのは、意外にも影虎だった。
「――エルさんが死んだ後にな、謎の……両手で包み込めるくらいの卵が残されてたんだよ」
「え? どういう事?」
影虎は晴人にシラユキの話をした。
突然生まれた事。
毛玉のような姿をしている事。
シラユキと命名してやった事。
糸でひどく頑丈な巣を張った事。
「ええ……どんな生き物だよそれ……」
「いや俺にも分かんねえから言ってるんだよ……お前心当たり無い?」
「無えよ! あったらこんな反応してねーよ」
「確かにな」
そう言って二人は笑い合った。
重く苦しい空気は取り払われた。
「という訳で今度シラユキが巣を張ったら切るのお前も手伝ってくれ」
「ええ!? お前が飼い主だろ!?」
「糸切るの大変なんだよ……頼むぜ……」
「マジかよ……まあいいけどさ……」
かくして影虎は新たなシラユキの巣の掃除要員を手に入れた。
しかし、ライ王国の上級魔族が桁違いである事と、シラユキがとてつもない方向で成長する事は知る由も無かった。




