無理
シラユキが爆誕した次の日。
影虎はまた霊術の修行をして剣の修行に臨んだ。
主に剣の素振りや型などの練習である。
しかし……
「ハアッ、ハアッ……」
「か、カゲトラ殿大丈夫でござるか!?」
「だ、大丈夫です……」
「………」
影虎は地面に膝を付いて荒い呼吸をする。
額には脂汗が出ており、顔は真っ青になっている。
彼は誰の目から見ても無理をしていた。
霊力と体力の消耗が激しいのだ。
「……カゲトラ殿、無理してはいけませんぞ。今日はもうお休みくだされ」
「いえ……大丈夫ですよ……俺はまだ戦えます」
「この大馬鹿者がぁッ!」
「がっ!」
影虎の頭にロックが重たい拳骨を振り下ろした。
「な、何で……」
「そのような状態で訓練に来ても何も出来ないでは御座らんか! 焦るのは分かりますが無理だけはしないで下され!」
「でも俺は……」
「―――まだ言いなさるか! 失礼、当て身!」
「うっ……」
影虎はロックに気絶させられた。
「私にはこれくらいしか出来ませんぞ……申し訳ない、カゲトラ殿、国王様」
ロックは訓練場から運ばれていく影虎を見送った。
*
*
*
「―――カゲトラ、大丈夫?」
「影虎君……大丈夫かな……」
「早く目を覚まして下さいよ兄貴!」
「―――ん」
影虎は三人の声で意識を取り戻した。
どうやら今寝ている場所は影虎の部屋のベッドのようだ。
「またこんな感じの起き方かよ……」
「カゲトラ、かなり無理して修行してたって聞いたわ。駄目よカゲトラ、霊術の修行の後に剣術の修行なんてしたら……」
「うるせえよ!」
ミコモの言葉に思わず声を荒げてしまう影虎。
影虎の剣幕に気圧され目を見開く三人。
「おっと悪い……ごめんな強く当たって……じゃあ俺修行してくる」
「待ちなさいよ!」
出て行こうとする影虎をミコモが引き止める。
「そんな消耗してる体で何が修行よ! 馬鹿じゃないの!?」
「………でも俺は行かなきゃ……」
「いいから休んでなさい!」
「無理しないでよ影虎君、寝てなよ」
「兄貴、頑張りすぎないで下さいよ……!」
三人はそう言って影虎を強引にベッドに寝かせる。
「何で無理に行こうとするのよ……」
ミコモが影虎にそう聞くと、影虎はこうポツリと言った。
「……………戦争を早く止める為だよ。俺が強くなって、戦争を止めれば、もう俺みたいな大切な仲間に死なれた人が居なくなるだろ……」
「………」
「俺はそんな人をこれ以上増やしたく無いんだ! あの悲しみを他の人に味わせたくないんだ! だから一刻も早く俺は強くならないといけないんだ……」
影虎がそう声を震わせながら言うと、ミコモが影虎にこう言葉を掛けた。
「カゲトラ、私だってこの戦争を止めたいわよ! 私達と同じような人を増やしたくないのも分かるわ……でも、焦って無理したら強くなれないわ。人には限界ってものがあるのよ。そこは守らないと」
「確かにそうだな……悪かったよ、今は休んでおくぜ」
「それでいいのよ」
影虎は大人しくベッドに潜り込んだ。
(こいつが一番辛い筈なのに俺が慰められるとはな……俺は情けないな)
影虎は目蓋を閉じながらそう思った。
*
*
*
翌日、早朝。
影虎はロックの所に謝りに行った。
「申し訳ございませんでした!」
「気付いて下さったのならいいですぞ。今日は体調はよろしいですかな?」
「はい。しっかりと」
活力に満ちた影虎を見て、ロックはふっと笑う。
(カゲトラ殿……昨日までとは目付きが違う……これは成長したに違いないな……)
影虎は昨日までの必死な目ではなく決意に満ちた目をしていた。
ロックは自分にもこんな頃があったと懐かしくも思いつつ、影虎に言う。
「では、今日はカゲトラ殿の本気の力を私に見せて下され。手加減はしませんぞ!」
「はい! 本気でお願いします!」
「いい返事ですぞ! ほりゃああああああああ!」
ロックは影虎の返事に感心しながら体に力を籠める。
「ふあああああああああ! とあっ!」
ビキッ……
ビキビキッ!
ビキビキビキビキィッッッ!
「わあああああああ!」
影虎は思わず叫んでしまった。
何故なら、ロックの筋肉が膨れ上がり、二倍以上の太さになったからだ。
鎧の繋ぎ目や筋繊維がビキビキと千切れる音が鳴っている。
とてつもない筋肉の塊だった。
影虎はロックの思いがけない変貌にぽかんとしている。
「さて……本気で行かせて貰いましょうぞ! カゲトラ殿!」
ロックは剣を頭上に構えた。




