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陰キャが異世界で無双してみた  作者: するめ狂い
陰キャ育児編
80/117

無理

シラユキが爆誕した次の日。

影虎はまた霊術の修行をして剣の修行に臨んだ。

主に剣の素振りや型などの練習である。

しかし……


「ハアッ、ハアッ……」

「か、カゲトラ殿大丈夫でござるか!?」

「だ、大丈夫です……」

「………」


影虎は地面に膝を付いて荒い呼吸をする。

額には脂汗が出ており、顔は真っ青になっている。

彼は誰の目から見ても無理をしていた。

霊力と体力の消耗が激しいのだ。


「……カゲトラ殿、無理してはいけませんぞ。今日はもうお休みくだされ」

「いえ……大丈夫ですよ……俺はまだ戦えます」

「この大馬鹿者がぁッ!」

「がっ!」


影虎の頭にロックが重たい拳骨を振り下ろした。

「な、何で……」

「そのような状態で訓練に来ても何も出来ないでは御座らんか! 焦るのは分かりますが無理だけはしないで下され!」

「でも俺は……」

「―――まだ言いなさるか! 失礼、当て身!」

「うっ……」

影虎はロックに気絶させられた。

「私にはこれくらいしか出来ませんぞ……申し訳ない、カゲトラ殿、国王様」

ロックは訓練場から運ばれていく影虎を見送った。

「―――カゲトラ、大丈夫?」

「影虎君……大丈夫かな……」

「早く目を覚まして下さいよ兄貴!」

「―――ん」


影虎は三人の声で意識を取り戻した。

どうやら今寝ている場所は影虎の部屋のベッドのようだ。

「またこんな感じの起き方かよ……」

「カゲトラ、かなり無理して修行してたって聞いたわ。駄目よカゲトラ、霊術の修行の後に剣術の修行なんてしたら……」

「うるせえよ!」


ミコモの言葉に思わず声を荒げてしまう影虎。

影虎の剣幕に気圧され目を見開く三人。

「おっと悪い……ごめんな強く当たって……じゃあ俺修行してくる」

「待ちなさいよ!」

出て行こうとする影虎をミコモが引き止める。

「そんな消耗してる体で何が修行よ! 馬鹿じゃないの!?」

「………でも俺は行かなきゃ……」

「いいから休んでなさい!」

「無理しないでよ影虎君、寝てなよ」

「兄貴、頑張りすぎないで下さいよ……!」

三人はそう言って影虎を強引にベッドに寝かせる。

「何で無理に行こうとするのよ……」

ミコモが影虎にそう聞くと、影虎はこうポツリと言った。

「……………戦争を早く止める為だよ。俺が強くなって、戦争を止めれば、もう俺みたいな大切な仲間に死なれた人が居なくなるだろ……」

「………」

「俺はそんな人をこれ以上増やしたく無いんだ! あの悲しみを他の人に味わせたくないんだ! だから一刻も早く俺は強くならないといけないんだ……」

影虎がそう声を震わせながら言うと、ミコモが影虎にこう言葉を掛けた。

「カゲトラ、私だってこの戦争を止めたいわよ! 私達と同じような人を増やしたくないのも分かるわ……でも、焦って無理したら強くなれないわ。人には限界ってものがあるのよ。そこは守らないと」

「確かにそうだな……悪かったよ、今は休んでおくぜ」

「それでいいのよ」

影虎は大人しくベッドに潜り込んだ。

(こいつが一番辛い筈なのに俺が慰められるとはな……俺は情けないな)

影虎は目蓋を閉じながらそう思った。

翌日、早朝。

影虎はロックの所に謝りに行った。

「申し訳ございませんでした!」

「気付いて下さったのならいいですぞ。今日は体調はよろしいですかな?」

「はい。しっかりと」


活力に満ちた影虎を見て、ロックはふっと笑う。

(カゲトラ殿……昨日までとは目付きが違う……これは成長したに違いないな……)

影虎は昨日までの必死な目ではなく決意に満ちた目をしていた。

ロックは自分にもこんな頃があったと懐かしくも思いつつ、影虎に言う。

「では、今日はカゲトラ殿の本気の力を私に見せて下され。手加減はしませんぞ!」

「はい! 本気でお願いします!」

「いい返事ですぞ! ほりゃああああああああ!」


ロックは影虎の返事に感心しながら体に力を籠める。

「ふあああああああああ! とあっ!」

ビキッ……

ビキビキッ!

ビキビキビキビキィッッッ!

「わあああああああ!」

影虎は思わず叫んでしまった。

何故なら、ロックの筋肉が膨れ上がり、二倍以上の太さになったからだ。

鎧の繋ぎ目や筋繊維がビキビキと千切れる音が鳴っている。

とてつもない筋肉の塊だった。

影虎はロックの思いがけない変貌にぽかんとしている。

「さて……本気で行かせて貰いましょうぞ! カゲトラ殿!」

ロックは剣を頭上に構えた。






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