隠行Ⅱ
影虎の体に黒い火花のようなものが迸る。
「!? 何だよこれ……」
「もしや貴様……霊基が成長したのではないかね? だが時既に遅し、と言った所かな?」
「……黙りやがれこのクソ野朗があっーーー!」
影虎は先の魔喰により霊力をほぼ使い果たしているにも関わらずキノニアに斬りかかった。
「そんな体でどう戦うのだ? いくら霊基が成長したとは言え――」
「死ね!」
「ぐああっ! な、何という速さだ……殆ど霊力を使い果たした人間の動きではない!」
怒りがふらつく影虎の体を支え、動かす。
影虎は今まででも最も早く刀を振るった。
キノニアの体に大きな刀傷を作る事になる。
「だが私の霊基は破れまい! 自然に帰れぇーーー!」
キノニアは手から爆弾を出し、影虎に投げ付けた。
「ああああああ!」
影虎は隠行Ⅱの効果であろう黒い火花を刀に纏わせながら爆弾を斬った。
爆弾に黒色の火花が纏わりつく。
「ん? 貴様私の爆弾に何かしたのか? 妙な事をしおって……」
「余裕ぶって居られるのは今だけだ……爆弾を見てみろ」
「んん?」
キノニアは影虎の手元を見る。
そこには……何も無かった。
「き、貴様私の爆弾を何処に隠した!?」
「何処だろうな……」
隠行Ⅱ。
その力は、影虎の隠行を他の物質にも付与する事が可能になるというものだ。
影虎はこの力を得た時に隠行から能力の説明をされていた。
黒い火花はこの隠行Ⅱによる隠行が掛かっている事を示すエフェクトである。
尚、隠行そのものの効果も上がっており、一度対象の視界から逃れればその後は身を隠し続けなくとも隠行が発動する。
すなわち、隠行を行使する為の布が必要無くなるのだ。
「お前でも爆発を食らったら危ないんだろ? それならこいつで爆弾の位置を分からなくしてやればお前は爆弾を出せない……リスクが大きすぎるからな」
「………だから如何した! 私にはまだ鞭があ――」
キノニアが言い終わる前に影虎は鞭を持つキノニアの手を切って鞭を奪い取り、隠行Ⅱを掛け、辺りに投げた。
「これで、武器を失ったな」
「き、貴様、よ、よくも……」
「お前はもう終わりだ………エルさんの仇!」
影虎はキノニアに間合いを詰め、技を放つ。
「これは俺がエルさんに習った全部の技だ……! ………霧双突き! 飛燕突き! 千鶴飛翔! 九枚笹! 抜刀技・月暈! 空毒斬! 空毒霧双突き! 霊剣草薙!………」
「がはああああああああ!」
影虎は霊力の低下など一切気にする事無くエルドレットから習った全ての技を撃っていく。
キノニアは次々と放たれる技のあまりの威力に瀕死にまで追い込まれた。
そして影虎はピタリと止まり、キノニアに向けて言う。
「これがエルさんの分……俺がエルさんに貰った、力だ……!」
「ぐああああああああ! クソ、この私が―――」
キノニアの体が崩れ落ちて消え去る。
血の一滴も残滓を残さずに。
「仇は取ったよ……エルさん……」
影虎はそう言って倒れた。
*
*
*
「―――起きて、起きてよカゲトラ」
「んん?」
「起きなさいよ!」
「あ……ああ悪い……技を使い過ぎた」
影虎が眠ってからどれ程の時間が経ったのだろうか。
ミコモが影虎を揺さぶって起こしていた。
萌葱も目を覚ましており影虎の顔を心配そうに見ている。
「一体何があったのよ……目を覚ましたらエル姉もあいつも居ないし……」
「それは………」
影虎はぽつりぽつりと泣きながらミコモに言った。
ミコモはそれを聞き大粒の涙を零しながら影虎を激しく叩く。
「そんな……そんな訳無いでしょう!? エル姉はきっと生きてるわよ! そんな事言わ
ないでよカゲトラ!」
「………」
影虎はミコモに何も言葉を掛けられずに押し黙り、泣いた。
萌葱も涙を流している。
そして涙も枯れ、ようやく多少落ち着いた頃。
「………帰ろうか」
影虎が、ぽつりと皆に言った。
ミコモと萌葱はコクリと頷いて立ち上がる。
その瞬間、ミコモがある物を発見した。
「ねえカゲトラ、モエギ、何かしらあれ……」
「「え?」」
二人がミコモの指差す方向を見ると、黄色い……球状の小さな卵? らしきものがあった。
近くには、白い糸のようなものが散らばっている。
「な、何だこれ……卵? 糸?」
「ここ……確かエルさんが立ってた場所だよね……」
三人は顔を見合わせる。
「これが何かは分からないけど……エルさんに関係してるものって事は確かだと思うぜ……」
「そうね。カゲトラの勇者の力は別にあったし、とりあえずこれを持ち帰るわよ」
「でも本当に何なんだろう……」
影虎は何かの卵をバッグにそっと仕舞った。
これが何であるかは皆目見当もつかない。
「あと勇者の力って……」
「ああ、これよ。はい」
影虎がミコモから刀の部品を受け取る。
それは刀の鍔だった。
「ありがとよミコモ……拾ってくれて」
「別にいいわよ」
ミコモはふっと笑って影虎に言った。
そうして、影虎達は洞窟を後にしたのであった。
壮絶な悲しみと、謎を背負って……
これにて第四章終了となります。
遂に……エルドレットさんが亡くなってしまいました。
影虎君はどうなってしまうのでしょうか。
そして、ここまで読んで頂き有難う御座います!
次章も読んで頂けると幸いです!




