陰キャVSキノニアその3
「がはっ……」
「意外にもしぶといな……もう一発しておくか」
辛うじて爆発を耐えた影虎達にキノニアが止めとして爆弾を落とそうとした。
だが……
パァン!
「ぐっ! 貴様!」
「兄貴達を死なす訳にはいかない! オレが相手だ!」
鉛の銃弾が発射されキノニアの手を貫く。
リトテが貿易で拳銃(中世の)を呼び出し発砲したのだ。
銃口からは煙が出ている。
(そういえばリトテは俺等からちょっと離れた所に居たな……! 爆発から逃げられたのか! まさかあいつに戦う出番が来るとはな……にしてもどうやって戦うつもりだあいつ……?)
影虎は回復薬を飲みながらリトテの戦闘を見守る。
回復薬を飲んだとは言え影虎が動けるようになるにはもう少し時間が必要なようだ。
「この程度で私を倒せるとでも思っているのか! 下級魔族風情が!」
「“貿易”」
リトテは少しの小銭を右手に置いた。
すると、小瓶に入った胡椒が出現する。
リトテはそれを思いっきりキノニアに振りかけた。
「ぐああ! め、目が!」
「充填完了……発射!」
リトテが再び銃をキノニアに撃つ。
「ぐああ! 小癪な……」
「よし、時間は稼げたな……逃げよう……」
「待てこのクソ下級魔族! 爆破してくるわ! クッ、目が痛い……」
キノニアは先程の胡椒がまだ効いているようだ。
リトテはその隙に貿易を発動させ、あるものを購入する。
それは……黒い金属製の撒菱だった。
「撒菱……ミル王国の隠密部隊が愛用している罠だ……食らえ!」
リトテは撒菱を地面にばら撒いた。
「ハア……ハア……ようやく目の痛みが消えた……さっきはよくもやってくれたな……」
キノニアがリトテにゆっくりと近づいてくる。
しかし、地面に撒かれていた撒菱が行く手を阻む。
「ぎゃああああ! 痛い痛い痛い! こ、これは撒菱か! 下級魔族の癖して中々やりおるな貴様……そういう者こそ自然に帰るべきなのだ!」
キノニアが撒菱を蹴り飛ばしばがらリトテに詰め寄ってくる。
リトテはそれを止めようとするが……
「まずい……もう小銭が無い……」
もう既に小銭が尽きていた。
「はっはっはっ! 万策尽きたか下級魔族よ! 私をこれほどあしらった者は中級魔族でもそうは居らんぞ! 褒めてやろう! 自然に帰れぇー!」
爆弾を手から生み出しリトテを爆破させようとするキノニア。
リトテはどうする事も出来ずに蹲りながら助けを求める。
「ま、まだっすか兄貴ー!」
「大丈夫だ」
「おお! 兄貴!」
リトテが顔を上げると、影虎がリトテの前に立って刀を構えていた。
影虎はキノニアの間合いに一気に踏み込んで技を放つ。
「………霧双突き!」
キノニアはそれを緩やかなステップでかわす。
「同じ技……さてはお前あの男の弟子だな? 師匠と比べると随分見劣りするが……」
「うるせえ! こちとら一ヶ月ちょいしか修行してねーんだよ!」
「一ヶ月でそれか? 余程厳しい修行を積んだのであろう……だがそれは関係無い! どの道私の爆弾には勝てまい! 自然に帰れ!」
手から爆弾を生成し投げつけるキノニア。
影虎は既に火の付いたそれをキャッチして食べた。
導火線の火がパッと消える。
「この爆弾結構腹に溜まるな……噛んで飲み込まないと火が消えてくれないし……どういう仕組みだよこれ……」
「私にも分からん。ただ言えるのは自然に帰れという事だけだ……」
「あーはいはい」
影虎はキノニアの会話の通じなさに呆れてしまった。
そして隠行を発動させる為に逃げ出す影虎。
「おい……貴様一体何をしている?」
「見ての通り逃げてんだよ!」
「諦め早すぎないかお前……」
今度はキノニアが影虎の行動にあっけにとられる。
そんなキノニアをよそに影虎は倒れているエルドレットの背後に隠れて隠行を発動させた。
「発動しろ、隠行!」
[かしこまりました]
布に隠れてキノニアの目を欺く影虎。
「な……あいつ……何処に行った!」
エルドレットの背後から消えた影虎に困惑するキノニア。
影虎はそんなキノニアの背中を袈裟切りにした。
「ぐあっ!」
(今のは抜刀だったから抵抗解除がヤツに掛かった筈……次は蜃気楼だ!)
影虎は更にキノニアの体を斬りつける。
鮮血がキノニアの服を飛び跳ねる。
「くそっ……こんな厄介な技を持っていたとは……お前がそう来るなら私はこうだ!」
キノニアは影虎に斬られながらも爆弾をエルドレットの近くの地面に数個置く。
鞭を巧みに操って他のミコモや萌葱の所にも設置する。
「ふははは! これならどうだ! いくら透明人間でもこれなら爆弾を食べる他あるまい!」
「このクズがー! 人としてどうなんだお前!」
「私は人族ではなく魔族だ。そもそも人ではないぞ」
影虎が自分の位置がバレるのもお構いなしにキノニアを非難するが当の本人はそ知らぬ顔
だ。
あくどいキノニアのやり方に憤慨する影虎。
「クソッ、爆弾を食べるしかねー! というか何で今俺しか戦えないんだ!」
「カゲトラは後方で霊術唱えてて爆発はさっきのしか食らって無いじゃない。私達はそれなりに体力を削られてるのよ」
「そ、そうか……面目ねえぜ……」
影虎がぼやきながら爆弾を食べているとミコモが起き上がった。
ミコモも爆弾の処理に加わる。
「急いで食べないと……うっ、お腹が重い……」
「きついなこれ……唯一の救いは爆弾に火が付くのがさっきよりも大分遅い事だよな……どうやらあいつは大量に爆弾を出すとそれだけ爆発までのタイムリミットが長くなるらしいな……」
「そうね……頑張って食べないと……」
ひたすらに爆弾を食べ続ける二人。
キノニアは爆弾を大量に生み出した反動なのか二人の妨害を行わず突っ立っている。
そうして爆弾を食べる二人を尻目に、リトテが萌葱に駆け寄りせっせと回復薬を飲ませる。
「オレは倒れている姉貴達に回復薬を飲ませなければ……」
因みにミコモを回復させたのもリトテである。
予想外にも戦いに活躍しているリトテ。
「んっ……」
「くうっ……」
「萌葱の姉貴とエルドレットの姉貴が起きた! 良かった~」
むくりと復活する二人。
「……リトテちゃん、今の戦況は?」
「カゲトラの兄貴とミコモの姉御がここに仕掛けられた爆弾を処理してるっす!」
「じゃあ私達も処理を……」
「もう終わったわよ~。早くこっちに来て!」
しましょう、と萌葱がエルドレットに言おうとする前にミコモが処理を終えた事を告げる。
エルドレットはそれを聞いて皆にこう提案した。
「それならあの上級魔族と連携を上手く取って戦いましょう! でもあいつは本当に手強いわ……そこで相談なんだけど……私が最強の技を使うから、それまで皆はあいつの足止めをお願いできるかしら?」
次回は木曜日に更新予定です。




