陰キャVSキノニアその1
影虎達はその後も巨大なホールケーキなどに遭遇したが、リトテの“貿易”により事無きを得てついに試練の番人が居るのであろう扉を見つけた。
「ここだな……この気配、間違いねえ……」
「そうだね……それにしてもあのホールケーキは強敵だった……」
「あの萌葱さん、緊張が削がれるのでそんな発言しないで下さい」
影虎は軽くテンションが下がりつつも、戦闘準備を整えた。
「ーーー霊力剣、業物」
「ーーー空毒斬」
更にミコモが霊術を皆に掛け、萌葱も風霊術での身体強化を行った。
「それじゃあ、行こう!」
影虎は皆にそう言って、扉を開けた。
「ようこそ翳の勇者様方! 待ちくたびれたぞ!」
試練の番人と思しき男が両手を広げて影虎達を歓迎する。
その男は赤いカーディガンを身に纏い、白髪のカールした髪を持っていた。
影虎はその人物を見て、何かいけすかない顔の奴だと思った。
「おっと自己紹介が遅れたな。私の名前はキノニア=コントラト。この洞窟の番人だ。力が欲しければ私を倒してみせろ!」
「言われなくてもそうするぜ! 食らえ空毒斬!」
影虎はキノニアに先制攻撃を仕掛ける。
「不意打ちとは自然な行動だな……だが甘い!」
キノニアは腰に下げていた鞭を影虎の刀に絡めて刀を部屋の端に飛ばした。
「なっ! しまった!」
「ふふふ……もっと自然に帰れ……自然に自然に自然に! まだまだ足りないぞ!」
そう言ってキノニアは影虎に向けて赤い“何か”を落とす。
「こ、これは……爆弾!?」
それは赤く球状をしており、導火線が付いていた。
「自然に帰るがいい」
キノニアがそう言うと、爆弾の導火線に火が灯る。
「おわあああああ!」
影虎はあわてて爆弾から離れ、皆の居る位置にまで戻る。
すると爆弾がボンッ! と轟音を立てると同時に広範囲に爆発した。
「あ、危なかった……」
「爆弾を生み出すの霊基、といった所かしら……強いわね……ミコモちゃん、カゲトラちゃんと一緒に強力な霊術を唱える準備をしてくれないかしら? その間私とモエギちゃんであいつを足止めするわ」
「分かったわエル姉、私もちょうど試したい霊術があったのよ」
「分かりましたエルさん。くそ……刀が弾かれるとは……」
「また私が前衛か……別にいいんですけどね……」
「オレはミコモの姉貴の後に隠れておきやすぜ」
エルドレットが素早く戦闘隊形を編み出す。
影虎は今刀を失っているため今回は後衛である。
リトテは出番が無い為下がっている。
「それじゃあ行くわよ萌葱ちゃん!」
「ええ」
エルドレットはキノニアが振るう鞭を回避しつつ距離を詰め、技を放つ。
「……飛燕突き!」
素早い突きがキノニアの顔を串刺しにしようとするも、キノニアはそれを紙一重で避ける。
「鞭は近づかれると極端に弱い……だからこんな回避術もわざわざ身に付けているのさ」
「やるわね……これを避ける程とは……凄く強いわねあなた。でもまだまだよ! ……霧双突き!」
エルドレットは密かに行っていた修行により技を撃つ呼吸が速くなっている。
それが功をなしキノニアに顔に穴を空ける事に成功する。
「ぐっ! 少し食らってしまった……」
「キノニアさん、敵はエルさんだけじゃないよ」
「なっ!?」
背後からいきなり声を掛けられたキノニアが慌てて後を振り返ると、そこには拳を構えた萌葱が居た。
「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」
どこぞのス○ンドのようなラッシュをキノニアにお見舞いする萌葱。
キノニアはその不意打ちに対応できずもろに連撃を食らってしまう。
「ぐああああああ!」
「おお……このまま行けば勝てる! さっさと倒そう!」
「早まらないでモエギちゃん! そいつは……」
「爆弾の霊基を持っている、と言いたいのか?」
「「!?」」
キノニアがニヤリと笑って六つの爆弾を出した。
「まずはお前からだ! 巽の勇者!」
キノニアは萌葱に向けて爆弾を投げた。
既に導火線に火が灯っている爆弾を。
「まずい避けられない……でも今解析の霊術を唱えれば爆弾の仕組みが分かる!
ーーー物質解析!!!」
萌葱は咄嗟に解析の霊術を行使する。
何故防御系の霊術を唱えなかったのかと言うともう既に掛けてあるからである。
霊術が爆弾を解析し、成分など正確な情報を得る。
しかし、爆弾の情報の中に、驚くべき事実があった。
爆弾:
上級魔族キノニアの霊基によって生み出された爆弾。
彼自身の意思による能力の解除か食べる事でしか処理できない。
成分等不明。
「食べ……て処理……? それは一体どういう事……」
萌葱が思考をめぐらせようとするが、それを遮るように爆弾が爆発した。
「うわああああ!」
萌葱は爆発により吹き飛ばされた。
キノニアとエルドレットは既に爆発の範囲から逃れている為、爆発の被害を被らなかった。
「だ、大丈夫ですか萌葱さん!?」
「影虎君来るな! 危ない!」
萌葱が影虎にそう注意する。
そんな萌葱の近くには、まだ爆発していない爆弾。
(くっ……影虎君との距離が近い……このままじゃ巻き込んでしまう………試しに食べてみるか? 一応耐えられるし、賭ける価値はある……)
萌葱は爆弾を手にとって口に運ぶ。
「も、萌葱さん!? 一体何を……」
「影虎君、いけるわこれ」
「へ?」
爆弾を齧りながら言う萌葱に思わず唖然とする影虎。
萌葱はぽかんとしている影虎に言い放つ。
「この爆弾……食べられるよ……」
萌葱の手にある歯型の付いた爆弾は、爆発する気配を失っていた。
次回は明日に更新予定です。




