洞窟の罠
「ところで……あんたらは一体何者なんだ?」
リトテが影虎達にそう聞いてくる。
「ああ……名前を言い忘れてたな。俺の名前は影虎。よろしくな」
「私の名前はエルドレットよ。よろしくねリトテちゃん」
「私はミコモよ。よろしく~」
「私の名前は萌葱。これからよろしくね」
それぞれが自己紹介をする。
さらに影虎はこう付け加えた。
「どうせ後々ばれるから今言っておくか……俺らは勇者なんだ。あの伝説のね」
「なに!? 嘘だろ……」
「証拠を見せてやるよ」
影虎はエルドレットの背後に隠れ、隠行を発動させる。
「発動しろ、隠行!」
[かしこまりました]
「な!? き、消えた……」
隠行を発動させた瞬間、影虎の姿がエルドレットの背後から消えた。
リトテは狼狽せざるを得なかった。
「ここだよ」
「うわっ!」
影虎はリトテの背後で隠行を解除した。
「これで信じた?」
「あ、ああ……信じやす、改めてよろしくお願いしますぜカゲトラのアニキ!」
「途端に態度が変わったわね。さっきまでの対応は何だったのかしら」
「そんな事を言わないで下さいよミコモのアネキ~」
影虎達の正体を知って一気に対応を変えて媚を売ろうとするリトテ。
リトテのそのたくましさに影虎達は感嘆させられる他なかった。
「それじゃあ、自己紹介も終わった事だし、行くわよ~」
「あ、アニキ達は今から何処に行くんすか?」
エルドレットの言葉に、リトテはふとその事を思い出した。
影虎が行く先をリトテに教える。
「今から洞窟に行って上級魔族をボコりに行くんだ」
「じょ、上級魔族!?」
リトテは驚いて声を上げた。
「この国にそんな強大な存在が居たんすか!?」
「多分な。まあ今の俺達なら前の時みたいに危なくはならない……筈」
影虎はそこにはあまり確信が持てないでいた。
いくら強くなったとは言え相手の霊基によっては苦戦を強いられるからだ。
「お、オレは弱いんで戦闘ではお役立て出来ないかと……」
「いや流石にお前に前線で戦ってもらおうなんて言わないさ。その‟貿易”でサポートしてくれればそれで十分だよ」
「ほっ……ありがとうございますぜアニキ!」
リトテは影虎にぺこぺこと頭を下げる。
そんな風にリトテと話していると、洞窟への扉が現れた。
ロゴスが居た洞窟と同じように扉に細長い穴が空いている。
「どうやって開けるんだろう……」
「ああ、そういえば萌葱さんは知らないんでしたね。こうやるんですよ」
影虎は扉の穴に刀を差し込んだ。
すると、扉が歓迎するように勢いよく開いた。
唖然とする萌葱に、影虎が説明をする。
「この洞窟は先代翳の勇者の刀の一部が封じ込められているんです。翳の勇者しか入ることが出来ないんですよ」
「なるほど……」
萌葱は影虎の説明に納得しつつもまるでRPGみたいだなと思った。
「それじゃあ、入るか……」
「気を緩めないでねカゲトラちゃん」
「当たり前ですよエルさん。これから上級魔族と戦うんですから……」
そうして影虎達は洞窟の中に入った。
しばらく洞窟を慎重に進んでいると……
「ん? 何か美味しそうな匂いが……」
ミコモが鼻をくんくんさせて辺りの匂いを嗅ぐ。
「本当だ……ご馳走の匂いがするな……」
「確かに……でも何でこんな所でするのかしら……」
「不思議だ……ていうかお腹減ってきたな……」
香りは他三人の下にもやって来た。
匂いを辿って奥へ進むと。
そこには大量の美味しそうな料理の数々があった。
「わあ、美味しそう! いただきま……」
「ミコモ馬鹿なのお前!? こんなの罠に決まってんだろ!」
料理に手を伸ばすミコモを慌てて止める影虎。
ミコモは軽く頬を膨らませて影虎にこう言った。
「冗談に決まってるじゃない。いくら私でもこれは食べないわ」
「お前が言うと冗談に聞こえないだろうが……!」
影虎は額に青筋を浮かべながらミコモに詰め寄った。
「でも見てたらどんどんお腹が空いてくるんだけどどうしよう……」
「へっへっへ、モエギのアネキ、いいもんがありやすぜ」
お腹を抱える萌葱にリトテがある物を差し出す。
「こ、これはおにぎりじゃん! そう言えばさっき出してたね“貿易”で! 貰っていいの?」
「どうぞどうぞ~」
「あ、じゃあ俺も」
「私もいいかしらリトテちゃん?」
「私も貰うわよ」
「是非食べて下さいよ~へへへ」
影虎達はおにぎりをリトテから貰い、頬張った。
「これなら何とか耐えられそうだぜ……」
「カゲトラ、あんたも結構危なかったんじゃない」
「うるせえよ! お前に一番言われたくないわ!」
「仲が良い事で……ねえエルさん」
「ふふっ、そうね」
「そうっすね」
皮肉を言い合う二人を微笑ましく見守る三人。
そうして料理の罠から逃れる事に成功した影虎達。
だが、これが後に窮地を招く事になるのであった……
次回は土曜日に更新予定です。




