ミル王国
「何あの技……格好良すぎんだろ! 俺も使いたいな……」
先程の技が影虎の厨二心を掻き立てる。
「試しにやってみるか!」
影虎はそう決心し、刀に霊力を籠めその霊力で五芒星を描く。
「ここから……八双の構えだな……」
さらに刀を顔の横のあたりに構える。
そして影虎は勢いよく突きを放った。
「………霊剣草薙!!!」
鋭い斬撃が飛んでいき、蟹の体を刺し貫いた。
蟹の動きが次第に鈍くなっていく。
それを見たエルドレットが影虎を褒めた。
「出来たじゃないカゲトラちゃん! その調子よ!」
「ありがとうございますエルさん! これで俺にも毒以外の遠距離攻撃が……」
影虎は咄嗟に技を模倣するという高度な技が出来た事に驚くと同時に自分の成長を噛み締めた。
そんな影虎を尻目にサブロウが皆にこう呼びかける。
「ここまで弱らせればもう捕獲できるでござる。では船乗りの方々は捕獲の準備を」
「え? これを捕獲?」
影虎は思わずサブロウに聞いた。
「左様で。縄で船に括りつけて運ぶのでござる」
「ええ……そうなんですか……」
影虎は捕獲方法に仰天した。
やがて船乗り達が本当に蟹をロープで船に括りつけた時には、影虎はマジかよ……と心の中で感想を述べざるを得なかった。
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このような事がありながらも船旅は緩やかに続いた。
影虎達はデッキでたそがれたり、船乗りやサブロウを加えて人狼ゲームをしたりと船旅を存分に楽しんだ。
因みに人狼ゲームは影虎がルールを説明し、萌葱が役職のイラストを描いた。
勿論、この世界の住民に大受けした事は言うまでもない。
「クソ! 何で俺が人狼の時に限ってミコモも人狼側なんだ! いっつもそれで負けてるじゃねーか!」
「ミコモちゃん言ったら悪いけど人狼弱いもんね……すぐに顔に出るし」
「あんたら霊力吸い尽くすわよ」
影虎と萌葱がミコモの人狼の弱さに呆れるばかりであった。
「私は全勝ね。ふふふふふふ……」
「エルさんは逆に初心者の割には強すぎるんですよ……」
中々人狼はキャラが出るようである。
一同の強さの順は、エルドレット>萌葱>影虎>船乗り達>サブロウ>ミコモといった所だ。
一同が人狼の話で盛り上がっていると、サブロウが立ち上がり皆に声を掛けた。
「さて……そろそろ夕餉と致しましょう」
「分かりました~では行きましょう!」
そうして、食事が振舞われ、風呂も貸し出されるなど船の上でも非常にもてなされた。
部屋も一人一人にそれぞれ個室が与えられた。
何と畳の和室で、布団が敷かれており壁には掛け軸が掛けられていた。
「あ~やっぱ和室落ち着くわ~。布団もふかふかだぜ……」
影虎はもてなしに深く満足し、布団に潜ってぐっすりと眠った。
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次の日。
影虎が朝食を食べ終え、甲板で修行に励んでいた時だった。
見張り台に居たサブロウが影虎に興奮気味に言う。
「おお! とうとう我がミル王国が見えてきたでござるよ!」
「マジで!? どこですか!?」
「あそこに見える大陸が……ミル王国でござる」
サブロウが遠くを指差した方角には、確かに大陸が見えて来ていた。
建物や船などがうっすらと見える。
「あれが……ミル王国か……」
「皆に伝えなければ……」
サブロウは皆にこの事を伝えに行った。
ミル王国の大陸がだんだんと近づいてくる。
影虎はその様子をぼーっと眺めていた。
次第に建物や船がはっきりと見えてきた。
しかし影虎はそこで違和感を覚える。
「あれ……家とか大分小さいな……やっぱり小人族だからか?」
「本当だわ……家小さいわねえ……噂には聞いていたけれど変わった建物ね」
「………私が間違って暴れちゃったら大変な事になるわね……気を付けないと」
「ミコモちゃん……普段から気を付けてよ? ね?」
「そうだぞお前……別にミル王国じゃなくても大惨事だっつの」
「本当にやめてね? 私それで一回死に掛けてるからね?」
ミコモの発言に突っ込む三人。
彼女は仲間全員にそう言われて少しむくれた。
そんな他愛もない会話をしていると、ついにミル王国に到着した。
「到着でござる。お忘れ物の無い様お願い致しますぞ」
「大丈夫ですよ。 確認はしておきました」
エルドレットが皆を代表してそう言うと、サブロウは頷き。
「では早速代表の元へ案内致しましょう」
「だ、代表?」
影虎が何故王ではないのか不思議に思いサブロウに聞くと。
「はい、我が国は王制ではなく民主制で、選挙により国の代表が決まるのでござる」
「な、なるほど……」
影虎はこの世界にはもう民主制という物が存在しているのかと舌を巻いた。
そして一同は船を降りた。
「すげえ……色々と小さいな……」
影虎は辺りを見渡して地味に失礼な感想を抱いた。
そこは中世らしいメコル王国とは対象的に黒い瓦でふかれた屋根に木造の建物が密集しており、どれも普通の建物よりも一回り小さかった。
街は小学生ほどの背丈の人々で賑わっており、まるで小学校の文化祭のようだ。
人々は皆和服を着ており、皆明るい顔をしていた。
影虎達がひとしきり辺りを見たのを見計らってサブロウがこう言った。
「さて……そろそろ宜しいでござるか? いざ、代表の元へ参りましょう」
作者の多忙につき、当面の間平日の投稿を三日に一話とさせて頂きます。
ご容赦願います。
次回は七月四日土曜日に更新予定です。




