ミル王国の使者
「ミル王国の使者とは……噂をすれば何とやらね」
「死ねクソ国家」
「………」
あまりの反応の悪さに困惑する使用人。
困り顔の使用人を見たミコモは萌葱に言う。
「とりあえず話だけでも聞きに行くわよモエギ。この人困ってるじゃない」
「仕方ない……一応行きますか……」
「それでは、玉座の間に」
使用人はそう伝えて城へと戻った。
「よっと」
「ほいっ!」
二人は風のように駆け出した。
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一方、影虎と晴人は、その後二人仲良く書庫で情報を集めた後、自分達の部屋に戻ろうと廊下を歩いていた。
何故魔族の件が解決したにも関わらず未だに晴人がメコルに残っているのかと言うと、王が晴人にもう少し勇者同士の親睦を深める為に滞在してはどうか、と持ち掛け晴人がそれに頷いたからである。
「にしてもあんまり有力な情報は無かったな~影虎。ほぼほぼ知ってる情報だったなんてな……」
「結局先代勇者が教えてくれた情報で十分だったぜ……判明したのは先代勇者の性格の悪さだけか……」
「う~ん、誰かさんに似てるな」
「その誰かさんって何処の誰だ? 言ってみ晴人」
影虎は刀に手を添えて抜刀の姿勢を取った。
「こんなしょうもない事で刀を抜こうとするなよ影虎……あと何でいつも刀を持ち歩いてるんだよ……」
「いざって時に戦えなかったら不味いじゃん」
「確かにそうだけどさ……あ~俺やっぱ平和ボケしてるわ……俺も剣持ち歩こうかな」
晴人がそう決意したのを見て、影虎はある事を思い出した。
「そう言えば俺の刀って名前無くね?」
「確かに……付けてあげなよ影虎」
「でも俺ネーミングセンス無いしなあ……いいのが思いついたら付けよ」
「いいね~。あと俺の剣の名前はちょっとマイナーな伝説の剣から取ってるんだぜ。影虎もそういう感じにしなよ」
「なるほど、参考にするぜ」
そうして二人が話しながら歩いていると……
「ハルト様! カゲトラ様! ミル王国から使者が来ております! 直ちに玉座の間に来て頂きたい!」
「ミル王国……? 小人族の国だっけ……」
「一体何の用だろうな……とりあえず早く玉座の間に行こうぜ影虎」
「そうだな」
「では、玉座の間に」
二人もまた、玉座の間に呼ばれる事となった。
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「皆集まったか?」
「左様にございます」
「では、説明を始めよう」
王が厳粛な雰囲気を醸しつつそう言った。
玉座の間に集められたのは、勇者とその仲間を含む全員である。
影虎はまた何か起きたのかと思わず身構えた。
「今日集まって貰ったのは他でもない、ミル王国から使者が来たからじゃ。ではサブロウ殿、説明を」
「かしこまった」
王がそう促すと、人を掻き分けて一人の……青い和服を着た少年が現れた。
いや、厳密には少年ではない。
小人族である。
そのサブロウという小人族は短く切り揃えられた黒髪を手で整えると、皆に向かって高い声で言った。
「異国の勇者殿、お目にかかり光栄でござる」
(まさかのござる口調かよ……ミル王国って戦国時代の日本みたいな国なのか?)
影虎は見た目とのギャップに噴出しそうになりながらも話を聞いた。
「本日は勇者の方々に我等の国で発見された洞窟の調査に来て頂きたく参った次第でございます」
「カゲトラ、洞窟って……!」
「しーっ! ミコモ、静かにしろ! 話の途中だろ! 気持ちは分かるけど!」
「ごめん……」
ひそひそ声で話すミコモに、影虎が注意した。
そしてサブロウの話の続きを聞く二人。
「それでは、どなたか洞窟へ赴いてもよいぞという勇者殿はいらっしゃるか?」
サブロウのその言葉を聞いた影虎は、視線で二人に訴えかける。
二人は頷いて影虎の意思を汲み取った。
「じゃあ俺達が」
「おお! かたじけない!」
影虎達が手を上げた。
サブロウは感激し影虎達に礼を言った。
「他に赴いて下さる勇者殿はいらっしゃらぬか……」
「サブロウ殿、モエギ殿は如何かな? 元はミル王国の勇者であるし……」
「嫌です」
「ええ!? それでもあなたは勇者ですか萌葱さん!」
晴人が至極真っ当な事を萌葱に言う。
萌葱はその晴人の言葉に怒り、胸ぐらを掴んで反論する。
「そういうてめえは何で手を上げないんだよ!」
「俺はライ王国の依頼でそろそろ国に戻らないといけなくて……」
「うるせえ!」
「自分が聞いたんじゃないですか……理不尽な……」
晴人が萌葱の言葉に少し落ち込むのを見て、影虎が言った。
「それじゃあサブロウさん、俺達と萌葱さんという事で」
「勇者殿が二人も……助かりますぞ……本当にかたじけない」
「おい何勝手に決めてんだこのクソ野朗ー!」
「別にいいじゃないですか。自分が召喚された国ですよ。案内くらいして下さいよ。さもないとミコモに今ここであれを食べさせますからね」
影虎がしれっとそう脅すと、萌葱は態度を豹変させて言った。
「付いて行ってあげるからそれだけは止めて! 地球が滅びる!」
「あんた達……私を何だと思ってるのよ……」
「では、決まりじゃな。勇者殿が居ない間も何とか持ち堪えてみせよう」
王がそう話を締め括った。
かくして、四人はミル王国へと向かう事となった。
これが、新たなる戦いの幕開けとなる……




