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陰キャが異世界で無双してみた  作者: するめ狂い
陰キャ始動編
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ネコミミ

「あの~エルさん、もう一人のパーティーメンバーってどんな人なんですか?」


影虎はエルドレットのパーティーの拠点に向かう途中、先程から気になっていた事を聞いてみた。

するとエルドレットは少し考えてからこう言った。


「それは会ってからのお楽しみね」

「はあ……」


その返答を聞いた影虎は道中かなり不安になった事は言うまでもない。


影虎は顔面凶器の大男や第二のエルドレットを想像し、勝手に青ざめた。

「ここが私達の拠点よ」

「おお~何か良いですね~」


影虎は語彙力が消失するほど良い雰囲気の家だと思った。

拠点は赤いレンガで造られており、他の民家と同じく赤い屋根瓦が使われていて、更に煙突もある事から暖炉もある事が窺える。


模範的な中世の家と言えるだろう。

そして拠点に入る二人。


「ただいま~」

「お邪魔しまーす」

「あ、エル姉おかえり~……誰その人?」


もう一人のパーティーメンバーは、何と少女だった。

年は影虎と同じくらいか。

顔立ちは整っているが少しあどけなさが残っており非常に可愛らしく。


瞳は円らで美しい翠色をしていた。

頭にはネコミミが生えており、髪は肩にかかるくらいの長さで白髪の中にメッシュのように灰色の毛が所々生えていた。


気だるそうな様子で椅子に座って白と灰色のふわふわな尻尾を振っている。

影虎に対し少し訝しげな視線を向ける少女。


「ああこの子はさっき知り合ったオノカゲトラちゃんよ。何故かオノの部分が名字らしいからカゲトラちゃんって呼んでね」


因みにこの国は英語のような名字の読み方だ。

さらに言うなれば名字を持っている人は珍しい。


「それでいきなりだけど今日から私達のパーティーに入れようと思うのだけれどいいかしら?」


「別にいいわ。その分人数増えて楽な訳だし。えーとカゲトラチャンだっけ。私の名前はミコモ。よろしくカゲトラチャン」


ミコモが影虎に気だるそうに手を差し出した。

手をだらんと出しているだけなので分かりにくいが恐らく握手のつもりなのだろう。

影虎はあまりにも適当な態度に青筋を立てつつ一応握手するが。


「こちらこそよろしくお願いします……ってお前までちゃん付けはやめてくれ! むず痒いわ!」

「え……? だってエル姉が『カゲトラチャン』って言ったからそれが名前じゃないの……?」


「いや違う違う違う! どうしてそうなるんだ! 俺の名前は影虎だよ! ちゃんはいらん!」

「そうなの……? じゃあよろしくカゲトラ」


「何となく俺の中でお前への評価が大分下がったけどよろしくなミコモ」

影虎がそう言うとミコモは尻尾を先程よりも激しく振り。


「何よ評価下がったって。あと呼び捨てはやめて何か気持ち悪いから。いきなり馴れ馴れしいのよあんた。ミコモさんと呼びなさい。さんを付けなさいさんを。それが先輩への礼儀ってものよ」


「無理です。俺のプライドが許しません。あと普通後輩は先輩に向けてさんとか言いません~普通先輩って付けるだろ。年上の人とか会社の同僚とかなら別だけど」


「そんな事はどうでもいいけど、カゲトラあんたあんまり舐めた口利いてると私の霊術があんたに炸裂する事になるわよ……」


ミコモがただならぬ雰囲気を出し影虎を脅す。

だが影虎はそれを意に介せずミコモをさらに煽る。


「やれるもんならやってくださいよセンパイ~ホラホラ~」

「ちょっとあなた達、仲がいいのはいいことだけど霊術使うのは駄目よミコモちゃん。家が崩壊するじゃない!」


「分かったわエル姉」

「すみません俺も調子に乗りました」


一髪千鈞な状況になりかけていたのをエルドレットが一喝する。

すると落ち着いたミコモが影虎にこう言った。


「カゲトラあんたエル姉にはきっちり敬語使ってるのね……なら私の事を呼び捨てにしてもいいわ」

「はいはいありがとうございます」


影虎はそれに適当な返事を返す。

最初はミコモのあまりの美貌に気遅れしていた影虎だったが、本性がこれではまるで緊張する要素が無かった。


「あと気になったんですが……霊術って言うのは何なんですかエルさん」

「霊術も知らんのか戯け……! 私が教えてくれるわ!」

「何の真似だよ……あとお前には聞いてないし……」


勝手に説明し出したミコモの話ではこうだ。

霊術とは、まあ魔術に近い物であると。

そして魔術と同じように演唱により発動出来るが、過程が少し異なる。


霊術は魔術よりもそれ専用の道具を使う分、威力もコストパフォーマンスも良いが、その代わりに魔術は杖だけでほぼ全ての魔術を撃つ事が出来る。


故に霊術を使っている者は少数派である。

と、いう事だった。


「じゃあそのこの街でくっそ浮いてるその格好も霊術撃つ為の道具なんだな?」


「浮いてるとかお前のその格好に言われたくないわよ。まあ正解だけど」

「へえー。あとその耳触っていい? 触り心地良さそう」


「ふざけんな。触ったら殺す」

「そうか……」


影虎は飼っていたペットが逃げ出していなくなった人のような表情をした。


その悲壮感溢れる顔にミコモは。

「その凄く残念そうな顔やめろ! 何かこっちが酷い事してる気分になる!」


「ミコモちゃん…何か可哀想だから触らせてあげて?」

「いくらエル姉の頼みでも嫌!」


「そう…じゃあ仕方無いわね……カゲトラちゃん、すっかり忘れてたけど冒険者ギルドにパーティーメンバー登録して貰いに行くわよ~」


「はい……」

「いい加減その顔やめろ!」


そうして影虎はミコモとの絆を深めた。

しかし……


(カゲトラあいつ服にケチャップみたいなの付いてるけどあれ何だろ)

ミコモは密かに不思議に思っていた。





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