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陰キャが異世界で無双してみた  作者: するめ狂い
陰キャ他国編
59/117

和解

「こちらが書庫でございます」

「広いなあ……一体どこから見たらいいんだ……」


影虎は今、様々な情報を手に入れる為に城の書庫に来ていた。

そこはいかにも魔道書などが出てきそうな雰囲気の書庫だった。

中々の広さで、木造の本棚にぴったりと本が敷き詰められている。

元々宝物庫の探索の後に行く予定だったのだが、魔族の件で先延ばしになっていたのだ。


「先代勇者様の文献はこちらでございます」

「こんな近くに……ありがとうございます」

案内役の使用人が文献の所を示す。

影虎は灯台下暗しとはこの事だなと苦笑しつつも丁重に手入れがなされている文献を手に取る。


「これは読めないな……俺の翻訳機能にも限界があるのか? ……ってこれ日本語で書かれてるぞ! 先代勇者の奴じゃん!」

影虎は食い入るようにその文献を見た。


『―――私は先代勇―の―郷―—だ。これから勇―の―力や霊―の仕組み―ついて語ろ―と思う』

おそらくこのような内容だろう。


『―――私は先代勇者の―郷――だ。これから勇者の力や霊力の仕組みについて語ろうと思う』

「読み辛っ! 何で大事そうな所がよりによって虫に食われてたり消えてたりするんだよ……」


影虎はそう文句を付けつつも文献を読み進めていく。

大体はあの先代勇者が言った内容だ。

他にも世界の常識で驚いた事などが記されている。

そんな中でも特に際立つのが……


『私の武―につい―も紹介―よう。何――シ――――ハ―トである。意味が分か―ない。先―勇―様とやらは一体何―考―てこんな武―を……』

や、

『翳―勇―の野朗め、よ―も私の―器を馬―にしやが―て、許―んぞ』

という文である。


おおよそ、元はこんな文だったのではないだろうか。

『私の武器についても紹介しよう。何故かシ――――ハ―トである。意味が分からない。先代勇者様とやらは一体何を考えてこんな武器を……』

『翳の勇者の野朗め、よくも私の武器を馬鹿にしやがって、許さんぞ』

「何だこりゃ……」


影虎は思わずそう呟いた。

ようやく先代翳の勇者の情報が出てきたと思えばこれである。

「先代翳の勇者は余程ゲスい性格だったんだな……この文献に大体こういう書き方しかされてないし……」


かく言う影虎は果たして人の事を言えるのだろうか。

そして最も気になるのは、この先代勇者の武器である。

「シ――――ハ―トって何だろ。シ○ーハートアタック?」


影虎がそう首を捻っていると。

「影虎! こんな所に居たのかよ! 探したぜ」

「ん? ああお前か」

何やら真剣な様子の晴人が来た。

だが影虎の反応は薄かった。


「探し物の最中で忙しいとは思うけど聞いてくれないか……何なら手伝うからさ……」

「それなら後にしてくれよ……って言いたい所だけど聞いてやんよ」


影虎がそう返すと、晴人は改まった様子でこう言った。

「あの時……影虎を信じられなくて悪かった!」

「………」

頭を直角に下げて頭を下げる晴人を見て、影虎は押し黙った。

影虎としては、あの事はしょうがないんじゃないかと考えていた。


いきなりあそこで不意打ちをされたら頭に血が上っても仕方が無い。

それに、元凶は魔族である。

故に影虎は晴人に対してそんなに怒ってはいなかった。

もうちょっと話を聞いて欲しかった……という思いはあるが。

そこで影虎は……

おもむろに頭を下げる晴人の前に立ち……

股間を思い切り蹴り上げた。


「ぎゃああああ!」

前の方を押さえながら叫ぶ晴人に、影虎はさらに蹴りを入れていく。

「オラオラオラオラオラ!」

「ぐああああ! 痛い痛いやめろ! いくら俺が悪いからってそれは無いだろ!」


そう言う晴人に、影虎はピタリと蹴りを止めて聞いた。

「なあ晴人、お前は俺が魔族側に付いていると思うか?」

「いいや、そんな訳が無い。影虎は潔白どころか立派な勇者だよ」

「それさえ分かってもらえば良いんだよ。勇者は大げさだけどな」

「影虎……お前……」


影虎の言葉に、晴人の顔に明るさが戻った。

これで完全に和解……ではなかった。

「でもな……それと今蹴ってるのとは話が違うんだな!」

「じゃあ何の話だー!」

「主にハーレムを築いているお前への俺と萌葱さんの怒りだ」

「だからそんなんじゃ……ぎゃああああ!」

「聞こえねえなあ? 言ってみやがれ……」


影虎は再び晴人の股を執拗に蹴り出す。

とても生き生きとした表情で。

そして二人のやり取りを見守っていた使用人がその光景に衝撃を受けるのであった……

「さて……恐ろしい目に遭う覚悟はいいかしら?」

「ひいぃぃっ…………」

場所は城の裏庭。

芝生が整備されており、周りには色とりどりの綺麗な花が花壇に咲いている。

太陽の光が柔らかにさしており非常に和やかな印象を受ける。

目の前に恐怖の象徴がいなければだが。

萌葱はミコモの恐ろしい気配にガタガタと震えていた。


「……と言いたい所だけど、ちょっとあんたに聞きたい事があるのよね」

「聞きたい事? 何ミコモちゃん?」

ミコモは怯える萌葱に思い切って聞く。


「あんたの霊基って……何なのよ」

すると萌葱は先程の様子から一変し―――

「気になるか……そうかそうか……いくらでも言ってやるよお! 笑いたきゃ笑え!

私の霊基は“ひよこ鑑定士”だよ。あはははははは!」

と、ミコモに言い放った。





まさかの霊基。

どんな力を持っているのでしょうか?

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